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popress【Work & Life】働き方や生き方を考える
 

あなたの会社 大丈夫? はびこるブラック企業

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 厳しい就職活動を乗り越え、晴れて正社員として入社しても、わずか数カ月で身も心もボロボロになってしまう…。そんな劣悪な環境、過酷な労働を強いる会社が「ブラック企業」と呼ばれるようになって久しい。若者、とりわけ就活まっただ中の学生にとっては、将来の勤め先が“黒”かどうかは気になるところ。一体どんな企業なのか。

理由なく笑いもの

 「うちの会社は、残業代は出さないから」。北陸地方に本社があるアパレル系の中小企業。今春就職した男性(23)は営業所に配属されて間もなく、上司にそう告げられた。あっけらかんと言い放たれたその言葉に一瞬、耳を疑った。

 事情はすぐにのみ込めた。会社の出勤簿は単にはんこをついて出勤の有無を記録するだけで、時間を書き込む欄はない。給料をもらえないのに2〜3時間の残業はざらだし、仕事が深夜に及ぶこともしばしば。入社して半年で、すでに周りは何人かが辞めていった。

 学生時代に所属したサークルで、グループで山登りなどを楽しんだ経験から「一体感のある職場で仕事をしたい」と今の会社を選んだ。ところが現実は、上司と相性が悪く、パワハラもあって関係はギスギスし、一体感どころか居場所さえない。別の上司にも「おまえの顔は公然わいせつ物や」と笑われたり、社内会議で「隣にいるだけでイライラする」と非難された。

 理由も分からず、笑いものにされたり、嫌がらせを受ける日々。7月中旬にはうつ病と診断され、約1カ月間休職した。回復し、久しぶりに出社すると「おまえに構ってる余裕なんてない。うちは営利企業なんだから」と罵声を浴びた。

 最近は、仕事も簡単な作業しか与えられず、上司や同僚と言葉を交わすのは最低限の連絡の時だけ。「辞めろ」という雰囲気をひしひしと感じている。「自分は何か悪いことをしたのか。怠け者のようで、むなしくて悔しい」。会社に長く居るつもりはないが、今は少しでも自分に不利益がない辞め方を考え、もがいている。

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公表データ要チェック

NPO法人「POSSE」川村さん

 2000年代後半から、ネット上のスラング(俗語)として広がった「ブラック企業」。その定義を、若者の労働相談にのる東京のNPO法人「POSSE(ポッセ)」事務局長で、「ブラック企業に負けない」などの著書がある川村遼平さん(25)は「単に違法な労働を強いるだけでなく、若者が望む安定した働き方を認めないのが特徴」と説明する。

 川村さんいわく、典型的なパターンは3通り。正社員として採用しておきながら、入社後にもう一度ふるいにかける選別型は、辞めさせたい社員を組織的なパワハラでうつ病、退職に追い込む。逆に、簡単に辞めないよう阻止するのは、社員に過剰なノルマを与えて使いつぶす使い捨て型。離職手続きをボイコットしたり、退職者に損害賠償請求までするという。

 そして、対策が難しいのが職場崩壊型。社内でパワハラやセクハラが横行し、会社の労務管理自体が崩壊しているケースで、会社側の意図や理由などがわかりづらく対処しにくいそうだ。

 どうしたら、悪質な企業を見極められるのか。川村さんは「まずは企業が公表している早期離職率や年齢構成、総従業員数とそれに対する採用人数などのデータを調べること」と話す。ただ、自社に不利益な情報を公にしない場合もあるため、チェックリスト=表=を参考にさまざまな観点から比べることも重要だ。

 もし、入社してしまった場合は、自分がどの程度まで我慢できるか決めた上で、専門機関に相談し退職後の生活のメドや転職先を考える。「退職する際に嫌がらせを受けることもある。残業時間など客観的な記録、証拠を残すことも必要ですね」と強調する。

“表彰”社HPで公開

現実を知ってほしい

 ブラック企業を“表彰”し、社会に認知してもらおうという動きも出てきた。「POSSE」の川村さんや労働問題に詳しい弁護士、労働組合の関係者らでつくる実行委員会が今年、「ブラック企業大賞」を創設。ホームページ(HP)などで表彰企業の紹介を始めた。

 賞は、環境や労働問題などに意識が低い企業を告発するドイツの「ブラックプラネット賞」がモデル。従業員の過労自殺問題が取り沙汰された居酒屋チェーンや、過労死が労災認定されたIT企業など10社がノミネートされ、実行委の選考による「大賞」やネット投票での「市民賞」など各賞が選出された。

 7月には東京都内で表彰式も開催。企業の担当者はいずれも欠席だったが、大賞には賞状やトロフィーに加え副賞で「労働六法」も贈られた。

 「このような取り組みで、日本企業の正社員のイスがボロボロになっている現実を伝えたい」と川村さん。一方で、ブラック企業に学生たちが入ってしまう背景には、今の就職活動が抱える問題もあると指摘する。「学生は何回も何回もエントリーシートを書き、面接を受けて、やっと内定をくれた会社をありがたいと思う。そこにブラック企業が生まれる余地があるんです」

 NPO法人「POSSE(ポッセ)」

 集中相談日 毎週水曜18〜21時

 (電)03(6699)9359

 担当・角雄記 ※次回は6日付Attention! 「編集部員の稲作奮闘記〜後編」です。

 

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