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popress【Spot & Place】北陸を中心に面白いスポットを発掘
 

霊峰の大滝 尊く清く 白山・百四丈滝へ

姿を拝めたのもつかの間、もやに隠れゆく百四丈滝

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 古くから人々にあがめられてきた霊峰・白山に、4時間歩かないと見られない大きな滝があるという。ポプレス編集部きっての滝好きとして、一度はあいさつせねば−。登山経験の乏しさも構わず、ガイドを頼み、厚い雪に閉ざされる前に行ってみた。

紅葉登山 刹那の出合い

 午前5時20分、辺りはまだ真っ暗。石川県白山市の白山一里野温泉スキー場の麓から車で林道を上がること10分。標高1100メートルほどの地点から歩き始めた。

 案内をお願いしたのは、登山道の整備を手掛ける乾靖さん(51)=福井県永平寺町。今回行く道を含め、白山の北側の登山道は、ほとんど乾さんが整備しているという。

透明な水をたたえる天池=いずれも石川県白山市で

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 目指す「百四丈滝(ひゃくよじょうのたき)」は、平安時代に開かれたとされる加賀禅定(ぜんじょう)道沿いにある。現在の白山登山は南側からが一般的で、北側は静けさに包まれている。

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 ヘッドライトをつけて、暗い森を進む。突然、横でガサガサという音。「サルですね」と乾さん。姿は見えないが、ほんの数メートル先にいる感じ。襲ってきたりは? 「秋は食べ物も多いし、大丈夫です」。ひと安心しつつ、人間の威張れる領域の外に踏み込んだことをあらためて実感する。

 上り下りを繰り返すうちに、遠くの山に日が差し、明るくなってきた。1時間半ほどで尾根に出て、そこからは紅葉の道。黄色やだいだい色の葉がきらめき、はるかな山並みにも心躍る。

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 避難小屋のある奥長倉山の先が、最大の難所。「美女坂」の魅力的な名前なのに、急な登りのきついこと。うっとりなんてとてもできない。

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 坂を越え、湿地帯をしばらく行くと、待ってました、「百四丈滝展望台」の道しるべ。左に折れて下るにつれ、瀬音が大きくなる。

 視界が開け、ササ原の先、谷の向こうに一条の滝が姿を現した。弧を描く岩壁から、中空を真っすぐに。最上部だけ日が当たり、「ドーッ」のこだまに「メリメリ」という音まで響いてくる。

 優美にして剛毅(ごうき)。鋭敏にして清らか。白山を王とすれば、さながら王女、王子にふさわしい気高い滝。「丈」は長さ3メートルだから、昔の人は300メートル以上あると思って名付けたのだろう。実際の落差は90メートルくらいらしいが、まとう気品のために大きく見えたに違いない。

 思わず「素晴らしい」を連発していたら、乾さんに「滝フェチですか」と見抜かれてしまった。滝の上部には「清浄ケ原」と呼ばれる湿原が広がり、豊富な水を供給していると教えてくれた。

 冬から5月ごろまで、滝つぼに積もった雪に大きな穴を開ける光景も見られる。「滝の形や標高など、多くの条件がそろわないとできない景色。世界的にも珍しいのでは」と乾さん。

道端のゴゼンタチバナ

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 なおも感動に浸っていると、やおら左手の谷からもやが上がってくる。事前に乾さんが「午前11時までに着かないと撮れない」と言っていた通り、ちょうど11時、滝はもやに覆い隠された。着いたのが10時20分ごろだから、40分の短い謁見(えっけん)だった。あな、尊き滝にぞおわしける−。

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 さらに先には、加賀藩時代の宿泊施設「加賀室(むろ)」跡が残り、澄んだ水をたたえる天池(あまいけ)も。登山道は乾さんが熱心にササを刈って年々美しさを増しており、この日は赤い実のゴゼンタチバナがいくつも見られた。夏にはニッコウキスゲやコバイケイソウが咲き誇るとか。滝以外にも魅力満載のコースだ。

案内・乾靖さん

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初心者 独りで行かないで

 登り口から滝の展望台までは6キロ。標高差は900メートル。さらに1キロ先に天池がある。アップダウンが続き、滑りやすい上、美女坂をはじめ危険な場所も少なくない。「初心者は必ずガイドや経験者と一緒に行ってほしい」と乾さん。これからの季節は雪が積もる可能性もあり、さらに危険度が高まる。来夏まで待った方が無難。どうしても行く人は十分な備えを。

 いぬい・やすし 20年ほど前から白山国立公園内の登山道整備に携わり、2003年、「オフィス・イヌイ」を設立。整備を担当する白山の登山道は50キロに及ぶ。講演や新聞、雑誌への寄稿など、白山を拠点として、自然環境の魅力を伝える活動にも取り組む。

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まだ見ぬ谷に思いはせ

ばくのつぶやき

 すがすがしい朝日の照らす尾根から、もやに包まれた幽玄の森まで。足元にはシラタマノキやチングルマ、見上げれば白山の主峰の一つ、大汝峰まで望めた。乾さんも「全部見ましたね」。

 ただ、滝に関しては、別の谷にも面白い滝があると乾さん。ぜひ見ないと。来年は沢登りに挑もう。

 担当・日下部弘太 ※次回は11月2日、ポプレス3周年特集の前編です。「これからのメディア」を考えます。

 

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