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popress【Spot & Place】北陸を中心に面白いスポットを発掘
 

茶屋街の裏 妖しき境内 謎の美女が案内 金沢寺巡り<後編>

どこから見てもこちらを見つめてくる釈迦出山図

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 さわやかな陽光にも、木々を優しくぬらす雨にも秋を感じる今日この頃。金沢の寺巡り、後編は東山を訪ねる。観光名所の茶屋街から足を延ばして、静けさと妖しさに包まれた異世界へ。今回も謎のキツネ面美女、小鳥遊(たかなし)お伝さんと案内する。

(1)全性寺

 最初は、茶屋街から北に500メートルほど行った寺の集まるエリア。今回歩く東山は坂道が多い。気合を入れるのに、赤く塗られた山門に仁王像が構える全性(ぜんしょう)寺がオススメだ。

 山門の周りには、大小のわらじがいくつも下がっている。大きいのは1メートル超。頑丈な仁王にあやかって、昔から旅に出る人や足の悪い人がわらじを奉納した。全国にある風習だそうで、全性寺には何十年もたったわらじも。拝むなり触ってみるなりしたら、元気に歩き通せそう。

たくさんのわらじが掛かった山門

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(2)西養寺

 早速、次の西養(さいよう)寺までに少々、脚力を費やす。路地を抜け、やや長い石段を上った先、草木にコケの静かな庭が迎える。

 庭をめでたら本堂の中へ。奥に進むと、床の間に幸薄そうなおじさんの絵が掛かる。「釈迦出山図(しゃかしゅつざんず)」。この人が、お釈迦様…。間違いなく悟ったんだよね? あまりに人が良さげで心配になる。

緑豊かな庭

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 「これは釈迦が何年も山ごもりして修行した後、下りてきた時の姿です」。川崎全寛住職(71)が解説してくれた。道理で粗末な布をまとい、目がギョロッとして体も骨ばっている。足の爪も伸びて鳥のよう。

 この絵、何がすごいかといえば、立ってもしゃがんでも、右に行っても左に動いても、視線が外れない。まるで生きているみたいに、こちらを追い掛けてじっと見つめてくる。

 「今日は笑ってるわね。怒ってる日もあるのよ」とお伝さんが不気味な一言を放つ。

 他に、すでに亡くなっていた老婆が届けに来たという「ゆうれい釜」、白山の水脈を引いたとされる井戸も。川崎住職のとつとつとした語りも見どころの一つだ。

眺めの良い宝泉寺。右手にあるのが五本松

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(3)宝泉寺

 石段を下りて再び路地を通り、茶屋街近くの宇多須(うたす)神社の脇から急な坂をわらじパワーで上がる。息を切らして宝泉(ほうせん)寺に着けば、境内にも石段が。再びわらじパワーを振り絞って上りきると視界が開け、眼下に浅野川沿いの町並みが広がる。

 家々の瓦屋根が黒く連なり、右手に茶屋街も望める。川の向こうには金沢城の白い城壁。「特に夕方が最高なの」とお伝さん。

 振り返ると、幹が五つに分かれた「五本松」がそそり立つ。天狗(てんぐ)がすむというご神木。お伝さんが「登りなよ。もっといい眺めだと思うよ」。ほんとこのキツネ、たちが悪い。

経典を納めた輪蔵。右上の像が普成、左が普建。

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(4)円長寺

 急坂を下り、茶屋街を抜けて円長寺へ。入って左手の「御輪堂(ごりんどう)」が面白い。中には、屋根付きの塔のような大きな物体がある。仏教の経典を置く「輪蔵(りんぞう)」。回せる仕組みで、時計回りに1回転させると積まれた経典すべてを読んだことになるというオトクな道具だ。

 突き出た部分をつかんで力を込めた。けっこう重いが、「ギー」とかん高い音を立てて回る。ま、ありがたい経典全部だし、多少の音は我慢しよう。

 正面には像が3体。中央の大きな像は、輪蔵の創始者とされる昔の中国の人、傅大士(ふだいし)。もともと、経典を閲覧しやすいように考え出したとか。左右は息子たちで、向かって右が普成(ふせい)、左が普建(ふけん)。回すことに気を取られていたが、お伝さんに言われて見直すと、この2人、何とも滑稽なしぐさをしている。普成は両手の平を前に出し、なだめているよう。「私は『まあまあさん』って呼んでる」。うーん、ナイスネーミング!

 一方の普建は両手で左を指さすポーズ。「そっちは『あの人さん』ね。『僕やってないよ、あの人、あの人』って」。確かに。何だか弁解っぽい。それにしても聖人たちを笑いの種にするなんて、せっかくの輪蔵も空回りだよね…。

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まだ1割 奥深い世界

ばくのつぶやき

 けっこうたくさん巡ったつもりだったけど、前編を含めて紹介できたお寺は9カ所。国が歴史的に特に重要な地区として選んだ範囲内だけでも、寺町と東山のかいわいで合わせて89の寺がある。つまり今回カバーしたのは1割だけ。お伝さんは「まだまだ面白い寺があるし、私が行ってない所も」。細い目をもっと細くして、さらにディープな寺道に誘うのでした。

 担当・日下部弘太 ※次回は16日付Human Recipe。石川県中能登町出身の映画監督、真田康平さんが登場します。

 

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