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popress【Spot & Place】北陸を中心に面白いスポットを発掘
 

小説と歩く金沢 宵の城下 怪談探訪

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 昼から夜に変わるころは、不思議な現象に出合いやすい「逢魔時(おうまがとき)」と呼ばれる。場所の境目もそう。霊気が集まりやすい山や谷、沼と同じく「魔所(ましょ)」。何げなく通り過ぎている所が、恐ろしい怪談の舞台なんてことも。そういえば、金沢市内は城下町を囲んでいた堀…つまり境目もあちらこちらに。夏の夕、怪談の地巡りへ。(担当・押川恵理子)

 「未知の旅」には水先案内人が必要。金沢市広坂の石川近代文学館を訪ねた。

 「怪談にまつわる場所はたくさんあります」と話すのは学芸員の奥田知穂さん。ご当地の怪談なら江戸時代の文筆家が著し、文学性の高い「三州奇談(さんしゅうきだん)」、武士が史実を基に淡々と書いた「咄(はなし)随筆」などがある。

 石川県七尾市出身の作家、戸部新十郎さん(1926〜2003年)が金沢城下に伝わる怪談から描いた小説が「加賀だいそうどう」。なんと文学館から歩いて行ける場所も出てくる。

 「面白がって訪れるのは良くない。場所への礼儀を忘れずに」との忠告を胸に刻み、いざ出発。

九人橋が架かっていた付近=金沢市大手町で

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「1人足りない…」

 まず訪れたのは城下町を二重に囲っていた堀の一つ、「東内惣構(そうがまえ)」に架かっていた「九人橋」跡。伝わる話は…

 10人の若い侍が卯辰山へ夜桜見物に。酔った帰り道、橋に並んで立ち小便。愉快な気分で薄明かりに照らされた影を見れば9人しかいない。何度数え直しても…。

 かつて橋があった場所は金沢地方裁判所(丸の内)に近く、法曹関係の事務所も多い。侍を震え上がらせた怪事件。名裁きは数百年後の今も出ていない。

侍が「怖い風」に吹かれた堂形前=金沢市広坂で

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女の生首の“吐息”

 地裁から金沢城公園を過ぎ、次に向かった先は旧石川県庁前の「堂形前」。京都の三十三間堂に模して堂形の的場を前田利家が建てたことに由来する。ここでは…

 九人橋でおびえた若衆を「臆病者」とバカにしていた侍が、雨の夜に堂形前を歩いていると、頬に風を感じた。辺りを見れば6尺(1・8メートル)程もある女の生首がピューッと息を吹きかけていた。頬は溶けだし、穴があいて歯や歯茎がむきだしに。

 旧県庁前に並ぶ立派な樹木の枝がなまめかしく見え、想像力をかきたてる。夏場の風は心地よいものだが、これは勘弁したい。

西外惣構のカワウソには注意を=金沢市広坂で

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着物の女の正体は

 斜め向かいの金沢市役所を抜け、柿木畠へ。地酒や海の幸が味わえる居酒屋やバーなどが並ぶ。裏通りのせせらぎが涼を誘い、やさしい花を咲かせるアジサイに癒やされる。

 せせらぎは、城下町を囲んでいた外側の「西外惣構」。そう、何かが起こる境目…

 美しい着物を着た女が1人。暗がりで顔は見えにくい。気になった男が近づいて声を掛けると、女は恐ろしい形相に。

 化けていたのはカワウソ。酔いもウソのようにさめたかしらん。

   ◇         ◇   

 加賀だいそうどうの舞台を巡るうち、城下町の暮らしにも興味がわいた。「歴史的な背景や当時生きていた人々の思いが透けて見えるからこそ、怪談は語り継がれ、時代を経ても心に残る」。奥田さんの言葉が染みた。

石川近代文学館の入る石川四高記念文化交流館=金沢市広坂で

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四高生が震えた“落ち”

石川近代文学館

 実は石川近代文学館にも怪談が伝わる。旧制第四高校の建物を活用する同館が立つのは、前田家の家老、大槻伝蔵の屋敷跡。

 色好みの伝蔵は美しい女性を連れ込んでは情事の果てに首をはね、屋敷内の井戸に投げた。ついには殿が気に入るお浪の方に近づき、深い仲に。怒った殿は2人の首をはねて井戸に放り投げた。

 井戸の跡に建てられたのが四高の学生寮。夏の夜、寝付けぬ寮生が天井を見ていると、男女のうめき声が床下から響いてきた。ふわりと青白い人魂が浮かび、女性たちの生首と、血に染まった伝蔵の首がにらみ合っていた。

 寮生に語り継がれた怪談は複数あるが、どれも「…に遭遇したものは必ずドッペル(落第する)」の一文で締めくくられていたとか。幽霊よりも怖い“落ち”。

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地域学ぶいい機会

ばくのつぶやき

 怖がりだし、霊感もないから、怪談って意識してこなかったけど、日本全国に数多く伝わるらしい。地域の歴史や風土を学び、先人を尊ぶきっかけになるかもしれないな。金沢市内のある大学では光る子どもが出現し、一緒にエレベーターに乗ると、その道の大家になれるうわさ話も聞いたよ。ぜひ、お会いしたい。ばくの体はモノクロだけど、いつかキラリ輝く大物になるんだ。

 ※次回は17日付Human Recipe。「鉄の暴れ馬」に例えられるバイク競技のモトクロスで世界を目指す金沢市の富田俊樹選手を紹介します。

 

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