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popress【Spot & Place】北陸を中心に面白いスポットを発掘
 

南三陸 巡って応援

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 東日本大震災による津波で大きな被害を受けた宮城県南三陸町。がれきが積まれ、建物が根こそぎ流された跡が広がる。その目と鼻の先、海は陽光にきらめき、水田の広がる高台では農作業の人々が行き交う。「これからは観光も支援」と、金沢市の震災ボランティアを通じて聞き、5月中旬、一緒に町を巡った。(担当・押川恵理子)

防災庁舎保存か解体か

 町訪問が10回目の金沢市の公務員、黒川敦さん(35)に案内され、中心部の志津川地区へ。赤い骨組みだけの建物が目に留まった。見学のバスや乗用車の往来が絶えない中、1人の男性が花を手向けている。

 42人が犠牲となった防災対策庁舎。惨状を伝えるため保存か、悲しむ遺族の思いをくんで解体か。町民の意見は割れ、「方針をどう決めるかを検討する段階にも入っていない」(町環境対策課)。

 大半の建物が流され、がらんとした一帯に、看板のような白い紙細工が立ち並ぶ。正月に神棚に飾る町伝統の「きりこ」だ。「ここに生きてきた幸せ ここで生きていく喜び」。町民の希望がそれぞれに刻まれている。

仮設商店街大にぎわい

 続いて訪れた仮設の「南三陸さんさん商店街」は海産物や土産の店、海の幸を味わえる食堂など約30店が入る。2012年2月にオープン。「最近は観光客が増えて、問い合わせの電話も1日鳴りっぱなしです」と、町観光協会職員の小坂翔子さん(26)は喜ぶ。

 海水浴場近くで育ち、関東の大学に進学。11年1月に就職のためUターンした2カ月後、震災に遭った。「昔から海を見ると、ほっとした。晴れた日の海は今も悔しいぐらいきれい」。家族は無事だったが、小中学校の同級生が波にのまれた。

 夏に友だちと肝試しを楽しんだ荒島(あれしま)が思い出の地と聞いて足を運んだ。海へ向かう道路脇には破損した漁船やがれき。青空を白い海鳥の群れがのんびり横切る。砂浜から海上の島に続くコンクリートの道を渡った。島を守る神社の鳥居は折れ、入り口の階段は崩落。「小さな町だから観光客が来ないと商売は成り立たない。でも、爪痕を見てとは正直言えない。訪れて落ち込む人もいるから」。小坂さんの言葉を思い出した。

「復興の経過見て学んで」

 「復興の途中経過を遠慮無く見て勉強して」と言い切るのは仮設に暮らす鈴木豊和さん(47)。避難所のつながりから生まれた「志津川復興支援団」の代表として震災で断たれた住民の交流などに汗を流してきた。

 「ここを見て」と教えられた一つの戸倉中学校。海抜30メートルに立つ校舎を囲むフェンスは大きく曲がり、校庭の階段手すりや校門なども破損していた。

 「実際に見たら事実以上のことを感じる。日本はいつ、どこで自然災害に遭うか分からない。学んでおけば有事に動ける。そんなキーマンが全国に増えてほしい」と鈴木さん。見学する場合は生活者に配慮し、マナーを守ってと付け加える。

 案内役の黒川さんとは被災者、支援者の関係を超えた友人。仲が深まったきっかけは共通の趣味である釣り。三陸沖は寒流と暖流がぶつかるため魚種が豊富で、養殖も盛ん。夏は銀ザケやホヤ、秋はカキやホタテがおいしく、ワカメも名産だ。

 翌朝、釣りに出掛ける黒川さんらと仮設の釣具店へ。店内に響く笑い声の主はスタッフの佐藤友子さん(66)。30年以上、釣り人を元気に送り出してきた。震災後は県外客が増えたという。「数百円でも使ってもらえると、うれしい。地元に戻ったら南三陸の良さを広めてね」

 町は高台に土地が少なく、住宅の再建・移転が難航。余震も多く、取材中も揺れに見舞われた。それでも「この町が好き」。出会った人々の強いまなざしを胸に帰路に就いた。

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笑顔に会いたい人増えた

 震災後に東北を訪れるのは6回目。今回は初めて「観光」を意識して巡った。不謹慎に受け止められないかと思ったけど、「足を運ぶことで町を応援する気持ちを強くして帰ってくださる人が多い」と、観光協会の小坂さんが言ってたことを実感した。釣具店の佐藤さんからは「夢を持って暮らさないと、ただ生きてるだけじゃね。よく笑うのは健康にいいから」と、元気に見送られた。また笑顔に会いたい人たちが東北に増えたなあ。

 南三陸町メモ 神割崎(かみわりざき)は2、10月中旬の約1週間は二つに割れた岩の間から太陽が昇る珍しい光景に出合える。弁天崎や袖浜も日の出スポット。

 グルメは期間限定の「南三陸キラキラ丼」など海の幸を。避難所の仲間が運営する「さんさカフェ」のランチはボリューム満点。

 疲れを癒やすなら海を一望できる南三陸ホテル観洋の温泉へ。日帰り客の利用は午前11〜午後9時(露天は正午〜)、大人820円、小学生以下400円。

 車なら北陸道の新潟中央ICから磐越道、東北道などを経由して約5時間半。JR仙台駅からは高速バスが出ている。

        ◇    ◇

 被災状況 震度6弱の地震による被害は小規模だったが、最大20メートルを超える津波で沿岸部の低地は家屋や漁船がほぼ流失した。

 南三陸署の発表では13年2月末現在、死者566人、行方不明者は223人。人口は震災前の1万7666人(11年2月末)から1万5004人(13年4月末)に。

 ※次回は15日付Work&Life。若者の働きやすい企業を認定する取り組みを特集します。

 

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