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popress【Spot & Place】北陸を中心に面白いスポットを発掘
 

巡りまっし西洋建築 城下町金沢

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 兼六園や武家屋敷、茶屋街など、日本情緒あふれる街並みが印象的な金沢。歩いてみると、実は明治から大正、昭和初期にかけて建てられた西洋建築も数多く残されているのが分かる。博物館や聖堂など今も“現役”で使われ、歴史にじかに触れられるのも魅力。心地よい秋風を感じながら、巡ってみるのはいかが?(担当・奥野斐)

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重厚 れんが造り

 金沢の名勝、兼六園の近くにありながら、まったく趣を異にする空間。まずは石川県立歴史博物館へ足を運んだ。かつて旧陸軍の兵器庫だった建物は2階建ての3棟が平行に並び、れんが造りの重厚な外観が圧倒的な存在感を放つ。

 「3棟とも外観は明治、大正期に建てられた当時のままに修復。(兼六園側から)一番奥の棟は最も古く、内装も改装してないんですよ」と、保存や調査に携わった金沢工業大の竺覚暁(ちくかくぎょう)教授(70)=建築史=が説明してくれた。3棟を比較してみるのも面白い。

 同じれんが造りでも、より繊細でデザイン性が高いのは石川四高記念文化交流館だ。旧制第四高等中学校として1891(明治24)年に完成。当時の官製学校を数多く手掛けた建築家山口半六氏らが設計した建物で、竺教授によると「明治期の日本人建築家による西洋建築では現存する最古」という。近代建築史においても価値が高いのだそうだ。

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 次は内装がきらびやかで趣向を凝らした聖霊病院聖堂へ。中に入ると、群青色のラインが際立ったアーチが目に飛び込んできた。スイス人建築家が手掛けた1931(昭和6)年の建物で、中世ヨーロッパの教会に多いロマネスク様式を忠実に再現している。

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伝統工芸を意識

 「この聖堂は金沢の工芸も意識して造られているんですよ」とシスターの湯沢昌子さん(75)。柱などには金箔(きんぱく)や漆が使われているといい、加賀藩で重用された伝統的な色彩の群青色も、影響を受けたことをうかがわせる。

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 最後は、個人商店や邸宅などとして使われた建物が多く残る尾張町や大手町を回った。

 武蔵ケ辻から橋場町へ延びる大通り沿いにある画廊「ギャラリー三田」は1930(昭和5)年に完成した鉄筋コンクリート造りの建物。外壁には当時流行したスクラッチ・タイルが張られ、入り口上のバルコニーが異国情緒を漂わせている。「たいまつを持った入り口のステンドグラスも当時からあるんですよ」と店主の三田裕一さん(78)が笑顔を見せた。

 すぐ近くには金沢文芸館となっている旧銀行の建物も。グレーのシンプルな外観が美しい。

開発が遅れ現存

 ところで、なぜこの地域に西洋建築が多いのか。竺教授によると、尾張町かいわいはもともと裕福な商人が暮らし、経済や文化の中心地である武蔵ケ辻から香林坊の目抜き通りの次に洋館などが多かった。中心部の建物は老朽化や開発の波に押され取り壊されたが、対照的に「開発が遅れたからこそ、残った」景観なのだという。

 市内に点在する様式もデザインもさまざまな西洋建築の数々。一度回ってみると発見が多いに違いない。

「純和風と対比がいい」

若い女性ファンも

 「金沢に洋館や西洋建築を見に来たんです」。取材で尾張町を回っていると、東京から来たという美容師の女性(27)に会った。

 今、彼女のような洋館巡りを楽しむ若い女性が増えているという。全国各地に残る西洋建築などを紹介した書籍も人気。実際に今回のスポットでも「最近、建物を目当てに来る若者も結構いますよ」との声を聞いた。

 横浜や神戸の異人館にも行ったという美容師の女性いわく、「金沢は純和風の景色も近くにあり、対比できるのがいい」という。

 金沢の洋館を巡るイベントも数年前から開催されている。町家の保存、活用を目的に始まった催し「金澤町家巡遊」では今年も9月22日〜10月8日の期間中に、聖霊病院聖堂をはじめ、尾張町の洋館や普段は公開されていない個人宅を専門家の解説付きで回るツアーを企画。

 すでに定員は埋まっているが、企画した金沢市の建築士奥村久美子さんは「タイルや建具など、もう手に入らない型やデザインに目を向けてみるのも楽しいですよ」と語る。

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金沢工大に残る丸窓

ばくのつぶやき

 東京駅や日本銀行本店などの設計で知られる建築家、辰野金吾が手掛けた建物がかつて金沢市中心部にあったという。その日本生命金沢支店の写真を竺教授に見せてもらった。

 木骨・れんが張りの建物は豪華で威厳があり、細部まで装飾が施された芸術的な造り。残念ながら1979(昭和54)年に取り壊されてしまったが、丸窓だけは金沢工業大のライブラリーセンターにあると教えてもらった=写真。当時の金沢は、日本は、どうだったのだろう。窓から見える風景を想像し、しばし妄想にふけった。

 

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