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popress【Spot & Place】北陸を中心に面白いスポットを発掘
 

とりあえず 地ビール

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 もうすぐ夏。この季節になると恋しくなるのがビールだが、近ごろは全国各地で造られている地ビールがじわじわと人気を集めているという。豊かな味わいと香り、少量生産による希少性。北陸にも点在する地ビールを飲み歩き、大手メーカーの製品にはない奥深い魅力を堪能した。(担当・佐藤航)

苦み抑えて飲みやすく

 地ビールといえば小さいメーカーがほとんど。でも、たった1人で切り盛りする醸造元は多くない。富山市の「オオヤブラッスリー」は、ビール職人の大谷崇さん(36)が仕込みから出荷までこなす気鋭のマイクロ・ブルワリー(小規模ビール工場)だ。

 大谷さんは2008年、7年間勤めたビール工場が閉鎖されたのを機に独立し、ビール造りを続けている。定番は香り豊かなペールエール「越中風雅」と、県産大麦を使ったスタウト「仁右衛門の黒」。いずれも苦味を抑えた飲みやすい風味で、女性の人気も高い。

 地元の蜂蜜やリンゴ、ナシを使った季節限定ビールも醸す大谷さん。「いろいろな材料でビールを造るのは楽しいですよ」という話しぶりに、いつも新しい味を追いかける探求心をのぞかせた。

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六条大麦使いスッキリ

 次に訪れたのは石川県川北町で地ビールを造っている「わくわく手づくりファーム川北」。4月下旬にJR金沢駅で先行発売されたばかりの新商品「金沢百万石ビール」を試してみた。

 地元で多く作られている六条大麦を使った一品で、見た目は濃い黄金色。醸造スタイルは豊かな香りが特徴のペールエールだが、さわやかな飲み口と適度な苦みも併せ持っている。

 ビール原料として一般的なのは二条大麦。六条大麦は粘り気のある「βグルカン」という成分が多く、ろ過で目詰まりを起こすなど、ビール造りが難しいという。醸造部主任の入口峰人さん(28)は「仕込み段階の工夫で課題はクリアできた。二条よりスッキリしていて夏向け」と話している。

 日本海を望む石川県能登町の高台に、本格的なビールを醸す工房がある。レストランや牧場なども備えた「日本海倶楽部」は、チェコから醸造士を迎えて質の高いビールを造っている。

 定番はチェコ発祥の「ピルスナー」、焙煎(ばいせん)したモルトで香ばしさを出した「ダークラガー」、バナナのようなフルーティーな香りが特徴の「ヴァイツェン」、海洋深層水を使った「奥能登伝説」の4種。ビアテイスターの浜高匡さん(46)は「奥能登は切れとまろやかさ、コクを兼ね備た一品」と太鼓判を押す。

 実はこのビール工房は、社会福祉法人が営む障害者支援施設の一つ。知的障害などのある利用者が瓶詰めや箱詰めなどに携わり、「世界で通用する商品」(浜高さん)を送り出している。

飲み手の声に耳傾け12年

 最後に足を運んだのは富山県南砺市の「城端麦酒(ビール)」。オレンジやグレープフルーツにも似た華やかな香りの「麦やエール」、焙煎麦芽で香ばしさとうま味を出した「はかまエール」が二枚看板で、近ごろは首都圏でもじわじわと評価を上げている。

 人気の裏側には、常に味を磨き続けてきた造り手の真摯(しんし)な姿勢がある。01年の開業から醸造を一手に担ってきた山本勝さん(34)は、もともとビール造りに携わったことのない門外漢。板金業を営む父親らとともに旗揚げしたが、「最初は何の知識も技術もなかった」という。

 原動力になったのは飲み手の声。辛口な評価や批判に真正面から向き合い、醸すごとに改善を重ねてきた。12年目の今も「まだ完成ではない」と話し、より良い味を追い求めている。

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香りと味わい魅力

 日本各地で競うように造られている地ビールだが、大手メーカーのビールとは何が違うのだろうか。日本地ビール協会(兵庫県芦屋市)の小田良司会長(65)は「クラフトビール(地ビール)は香りと味わいを楽しむもの」と説明する。

 大手のビールは、ほとんど「ヨーロピアン・ピルスナー」という種類。豊かな風味というより、すっきりした苦味と喉ごしが特徴だ。日本でビールといえばこれを思い浮かべる人も多いが、世界的にみると100種類以上あるともいわれる中の1種類にすぎない。

 一方で地ビールはピルスナーだけでなく、英国で発展した「エール」や、小麦麦芽を用いた「ヴァイツェン」など、発酵タイプや原料が異なる多様なスタイルが造られている。メーカーごとの違いを楽しむのも魅力の一つになっている。

 地ビールが生まれたのは1994年の酒税法改正がきっかけ。ビール事業認可を受けるには年間2000キロリットル以上の生産能力が必要だったが、60キロリットル(発泡酒は6キロリットル)に引き下げられ、小規模メーカーの参入が相次いだ。

 同協会によると、現在の全国の地ビール醸造元は約260社。300社を超えていたピーク時の98年ごろから減ったが、消費量は増加傾向にあるという。小田さんは「世界的にみても地ビールの生産は伸びている。ブームがきているともいえる」と話している。

造り手の情熱感じる

ばくのつぶやき

 少量生産で手間のかかる地ビールは、大手の商品と比べると値段が高い。毎日飲むには少しぜいたくな気もするが、週末の楽しみにゆっくりと味わうにはうってつけだ。複雑で豊かな風味に、造り手の情熱が伝わってくるような気もする。

 

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