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popress【Spot & Place】北陸を中心に面白いスポットを発掘
 

巡って効く 薬都 富山

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 健康や美容への関心が高まる中、伝統的な和漢薬や薬膳料理が見直されてきている。「越中富山の薬売り」で知られる富山市では近年、名物の薬を観光に生かす動きが活発化しているという。ポプレスのキャラクター・ばくが富山に足を運び、「薬都(やくと)」の話題の観光スポットを巡った。(担当・奥野斐)

作る

 全国でも珍しい丸薬作りの疑似体験ができると聞き、まずは富山市中心部の薬製造・販売の老舗「池田屋安兵衛商店」を訪れた。

 この店は、江戸時代から伝わる胃腸薬「反魂丹(はんごんたん)」で知られている。店内には、20年ほど前まで薬を丸めるのに使っていた手動の機械が今も鎮座。これを使って丸薬作りを体験するという。

 まず、台の上に薬草の粉末を粘土状にしたものが点々と絞り出されるが、この時点ではまだ粗い粒々のまま。きれいな玉にするために、上から板で押さえ、両手で円を描くように丸めていく。一見簡単そうだが、力加減が難しい。「勢いよく板を押さえるとつぶれるし、怖がると団子や棒のようになる。性格が出ますよ」と職人の相山外次さん(62)。板を上げると、大きさもバラバラの団子状になっていた。

 相山さんの見本は一つ一つが同じ大きさに丸まり、つやも出ている。本物はこの状態から数日ほど自然乾燥させるとできあがり。昔は薬によって薬草の調合や量を変えたというが、今では機械化も進み、手動で作れる職人は数えるほどに。貴重な技を体感できるスポットだ。

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学ぶ

 次に訪れたのは、薬の歴史を学ぶことができる市売薬資料館。当時の薬売りが商品を持ち歩くのに使った柳行李(やなぎこうり)、配置薬を入れる各家庭の預け箱、製薬道具などが並ぶ。

 300年以上の伝統を持つ富山の薬売り。学芸員の田尻佐千子さん(50)によれば、起源は諸説あり、一般的に知られているのは江戸時代の「反魂丹伝説」だ。富山第2代藩主前田正甫(まさとし)が、江戸城中で腹痛を起こした他藩の大名を富山を代表する反魂丹で治したことから、諸大名が販売を望んで全国に広がったと伝えられている。

 もう一つ、富山売薬が栄えた背景には「先用後利(せんようこうり)」と呼ばれる独自の販売方法があるという。品物を客に先に預け、使った分だけ代金を後から回収する仕組みで、この顧客の利便性を考えた方法は庶民に広く受け入れられた。全盛期の昭和初期には、市内の3軒に1軒は売薬に関係がある仕事に就いていたといい、現在の富山経済の基盤になっている。

食べる

 最後は、薬の伝統から生まれた薬膳料理を提供するカフェへ。JR富山駅前にある製薬会社広貫堂直営の「癒楽甘(ゆらくかん) 春々(ちゅんちゅん)堂」で、薬膳カレー(セットで945円)を味わった。

 市が昨年から認定する、地元産食材を使った健康的なメニュー「富山やくぜん」の一品。ウコンやクコの実、マツの実など体にいいとされる薬膳食材入りのカレーは苦味やクセもなく、程よくスパイスが効いて食べやすい味付けだ。

 デザートは、カメの甲羅の粉末を薬草エキスと蒸して作る「亀ゼリー」。天然コラーゲンたっぷりの、プルプルの食感がたまらない。おなかもいっぱいになり、体の中から元気が湧いてきた。

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客思いの精神が支え

ばくのつぶやき

 大きな荷物を持って各家庭を回り、薬の減り具合を見て家族の健康に気を配る−。ドラッグストアで手軽に薬が購入できる現代、そんな「売薬さん」の姿を知る若者も多くはないのかもしれない。

 富山に根付く薬売りの文化、「先用後利」のシステムが、いかに客思いの精神に支えられたものか。客を大事にし、使った分だけ代金を回収する仕組みは信頼があって初めて成り立っている。

 売薬さんを知らない世代でも、どこか懐かしさを感じるスポットの数々。そこは、人と人とのつながりを思い起こさせる温かみに満ちていた。

店内で売られているレトロなパッケージの薬=富山市の池田屋安兵衛商店で

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レトロさで脚光 ■ 海外でも配置薬

 「ケロリン」に「ケロール」、「アスナオール」−。ユーモラスなネーミングに、だるまや布袋さんが描かれたレトロなパッケージの薬を、今回訪れた商店や資料館でいくつも見かけた。

 パッケージのイラストにはそれぞれ意味があり、だるまは「すぐ起き上がる」から風邪薬。おなかを出した布袋は胃腸薬、飛行機やロケットの絵は即効性が売りの薬だとか。年配の人には懐かしいデザインも、若者には「かわいい」とお土産に人気があるという。

 そんな昔ながらの薬や売薬の伝統に、地元企業や市などは観光資源として着目している。広貫堂は直営の春々堂でカレーのほか、薬膳食材を使ったランチやデザートメニューを提供。美容に関心の高い若い女性の来店も多い。

 市も、2010年度から薬膳を独自に認定する「富山やくぜん」事業を始めた。昨年9月の第1回では25点、今月1日には18点を新たに認定。提供店舗を紹介するマップの作製も目指している。

 各家庭に薬を常備する「配置薬」という手法そのものは、今や海を渡り、アジアで普及し始めているという。日本財団は04年にモンゴル、09年はタイに置き薬のシステムを導入。古き良き「富山の置き薬」の精神は世界に広がっている。

 

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