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popress【Special】−特別編−
 

伝える意義 問い続ける これからのメディア考【前編】

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 popなpress「ポプレス」は、新聞のお堅いイメージを打ち破って若者にも親しまれる紙面を目指し、2010年11月から若手の記者たちが作っています。今月で3周年を迎えました。ソーシャルメディアが普及し、情報発信の担い手が増える中、伝えることの本質とは何でしょうか。「これからのメディア」を専門家や市民と考え、前後編で紹介します。(聞き手・日下部弘太、押川恵理子)

言いっぱなしはだめ

 社会を広く取材する一般の新聞が部数を減らす中、島を取材対象にした「離島経済新聞」(リトケイ、東京都世田谷区)が、着実に発行を続けている。編集長の鯨本(いさもと)あつこさん(30)は、ニッチなメディアだからこそ、情報の目的をぶれずに保ちやすいと強調する。

    ◇        ◇    

 インターネット上の情報発信と、季刊でタブロイド紙を発行している。島の人がよく言うのは、島自体が日本の縮図だと。少子高齢化は都市部の20〜30年先。東日本大震災後、人と自然の関係や、人と人が暮らすには何が必要で何がなくていいか、みんなが考えるようになった。島は最先端というより、原点。本来的な暮らしに立ち戻ろうとした時に見るのが島。

 2010年4月から3カ月、世田谷区の社会人向け学校に通った。生徒は編集者やイベントプロデューサー、広告代理店の社員ら。同級生に、島に移住する女性がいて、有志で出掛けた。そこで島の面白さと、それが伝わっていないとわかり、メディアをつくろうという話になった。

 4人で始め、今は常勤が私を含め3人。クリエーター仲間50人が手伝っている。ほとんどは電話で取材し、現地には行かない。写真も送ってもらう。最初は難しい面もあったが、3年やっているとむしろ人づてで連絡する方がうまくいく。新聞自体はもうからない。収支がとんとんくらい。

 大きくなりすぎたメディアは、見る側が読み取りづらい。なぜそれを載せているか分からない記事がある。社会問題に対しても言いっぱなし。読んだ人がその次に行動に移る情報ならいいが、必ずしもそうではない。

 それと、目的があった方がいい。リトケイは、名前の通り、離島の経済に貢献することが目的の新聞。独自のマーケットで、他社と競う必要がないので、「これ何のためにやるんだろう」ということはない。大きなメディアも、情報をつくる目的が日本や世界の利益になるようにしてほしい。

 事件事故ばかり伝えていたら、おどろおどろしいことが毎日連続して起きているように感じてしまう。そっちの方が目を引くのだろうが、勇気づける情報も必要。島は事件事故はそんなに起きない。平和だけど、大事な情報もある。 聞き手・日下部弘太

 いさもと・あつこ 1982年、大分県日田市生まれ。20歳で出版社に入り、編集者、イラストレーターとして地域情報誌やビジネス誌を手がけた後、フリーの広告ディレクターに。2010年、離島経済新聞社を設立した。

 最初はウェブサイトで、昨年1月からタブロイド紙の発行を始めた。季刊。平均で3万部刷っている。これまで離島150カ所、書店は最大300店舗に置いた。都市部読者層の中心は、30〜40代の男性と20〜30代の女性。5号から、島ではフリーペーパーに。来年度から島以外でもフリーペーパーにする予定。

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閉じずに切磋琢磨を

 元新聞記者でジャーナリストの藤代裕之さん(40)は、「市民記者って言葉は好きじゃない。みんな記者だから」と説く。取材や表現の技術を学び合う「日本ジャーナリスト教育センター」(JCEJ)を運営し、データジャーナリズムなど新たな手法を探る。東日本大震災で大きな被害が出た岩手県大槌町で新聞も発行。メディアの役割を問い続けている。

    ◇        ◇    

 新聞の課題は、閉じていること。読者にも他のメディアにもオープンになって切磋琢磨(せっさたくま)する環境に身を置かないと。

 10年前、徳島新聞で中高生向け紙面を改革した時、高校生の声を聞いたら、「読んでいない」「ダサい」「新聞に取り上げられたくない」。いくら強い地方紙でも、細分化した読者の市場では負けている層があると気付かされ、まちに出て彼らの興味を調べた。マーケティング、読者の取材。

 市場の見過ぎも、新聞側の押しつけもいけない。業界は苦しくなってきているけど、もっと読者と向き合って「紙」でやることはある。そこを努力せず、ネットだ、電子版だというのは本末転倒。

 JCEJは「救命ボート」と思っている。タイタニック号でご飯を食べててもいいけど、ライフジャケットは着ようよと。メディア環境の変化に備え、表現の多様性を高める。

 ジャーナリズムの使命は未来の人たちのために「今」を記録すること。過去から学んで未来がより良くなるよう、判断材料を提供する。だから、より正確に、問題を深く捉える必要がある。ソーシャルメディアも未来のための記録という意識を持つと、使い方が変わってくる。ネットで気軽につぶやいたことが拡散される時代に、無責任な発信は問題。

 被災者と「大槌みらい新聞」を発行したのは、情報を発信することで元気になってもらおうと考えたから。取材のワークショップを81回開き、400人の町民が参加。家も流されている中、カメラを新たに買った人も結構いる。反応が返ってくると、素朴にうれしいよね。

 写真を撮りたい、誰かに見せたい。それって、生きること。また秋が来たら、きれいな花が咲くから撮りたいねって。明日を信じていないと、ジャーナリズムはやれない。 聞き手・押川恵理子

 ふじしろ・ひろゆき 1973年、徳島県生まれ。広島大文学部哲学科卒業、立教大21世紀社会デザイン研究科前期修了。徳島新聞社で司法・警察や地方自治などを取材し、中高生向け紙面を刷新した。報道やインターネット社会の問題などを考察するブログ「ガ島通信」を始め、注目を集める。新たなメディア環境に挑戦しようと2005年にNTTレゾナント(goo)に転職し、ニュースデスクやサービス開発などを担当。13年4月から法政大社会学部メディア社会学科准教授、関西大総合情報学部特任教授。著書に「発信力の鍛え方 ソーシャルメディア活用術」など。

平日閲読時間15・5分 信頼度は2位68・9点

データから読む新聞

 各メディアの利用状況や信頼度はどう変化しているのか。

 総務省の2013年版情報通信白書によると、平日の利用時間が最も長いのはテレビ視聴(録画、ネット放送を除く)の184.7分。ネット利用が71.6分で続き、10、20代ではテレビ視聴とほぼ並ぶ時間となったが、年代が上がるほど短くなった。新聞閲読は15.5分、ラジオ聴取は16.1分。ネット利用はメールやウェブサイト閲覧、オンラインゲームなどネット接続のサービス全般を含む。調査は12年秋に13〜69歳の男女1500人を対象に全国125地点で実施。

 公益財団法人の新聞通信調査会が12年度に調べたメディア情報の信頼度では、100点評価で最高点はNHKテレビの70.1点。次いで新聞68.9点、民放テレビ60.3点、ラジオ58.6点、ネット53.3点となった。各媒体とも前回より信頼度が約3〜5点下がり、08年度の調査開始以来、最低を更新。調査は18歳以上を対象に3404人から回答を得た。

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 ※次回は6日、「これからのメディア考」の後編です。

 

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