トップ > 北陸中日新聞から > popress > Special > 記事

ここから本文

popress【Special】−特別編−
 

3・11が僕らを変えた 北陸の若者 この1年

 地震に津波、原発事故−。甚大な被害をもたらした東日本大震災から、明日で1年を迎える。復興に向けて少しずつ歩き始めた1年間。被災地から離れた北陸でも、ボランティアで支援を続け、あるいは原発の在り方に思いを巡らせてきた若者がいる。そんな彼らを訪ね、胸に抱く思いを聞いた。(担当・奥野斐、佐藤航)

金大3年 山田慎太郎さん(21)

写真

ボランティア 「興味本位」が「まとめ役」に

 見渡す限り、何もない。まるで砂漠のようだった。津波で多くの建物が流された岩手県陸前高田市。目前に広がった光景は想像を超えていた。「被害の大きさを心で実感した」

 震災から半年たったころ、大学の学内サイトでボランティアの募集を見つけた。応募したのは「現地に行ってみたい」という興味本位から。被災地支援に興味があるわけではなかった。

 初めて現地を訪れた昨年11月。陸前高田市で広場と花壇の整備に励み、気持ちが変わった。土に細かいガラス片やがれきが交ざり、子どもは遊ぶことができない。花は一輪も残っていなかった。「自分にもできることがある」。半日、しゃがみ込んでがれきを拾い集めた。

 それから毎月、被災地に足を運ぶようになった。がれき撤去や足湯ボランティア。ある仮設住宅で、車ごと津波にのまれながら九死に一生を得たおばあさんに出会った。「運良くドアが開かなかったら死んでいた」という話に、掛ける言葉が見つからなかった。

 無力な自分に、もどかしさを感じることは少なくない。でも、若い学生にしかできない仕事もあると思う。学内のボランティアをまとめる事務局に携わり、友人らに「一度は現地を見てほしい」と訴えている。

金沢美大助手 井上大輔さん(31)

写真

アーティスト 目に見えない危険表現

 暗闇に浮かび上がる幾筋もの赤い光。フロアに置かれた光源が絶え間なく回転し、サーチライトのようにレーザーを発している。光線は周りを囲むように並んだ鏡で反射を繰り返し、真っ暗な空間に複雑な模様を描く。

 非常時の不穏な空気を感じさせるこの作品は、福島第1原発事故で大量に放出された放射能を表現しているという。

(左)震災後に手掛けた作品。たくさんの人の顔をパズルで並べ、人と人とのつながりを表している (右)原発事故に想を得た展示。暗闇の中、赤いライトが乱れ飛ぶ

写真

 作者の井上大輔さん(31)=金沢美術工芸大共通造形センター助手=は「放射能は前からあったのに、多くの人は意識していなかった。事故があって初めて、目に見えないものの存在に気付かされた」と振り返る。

 絵画や立体造形、写真など、幅広い手法で作品を作り続けてきた井上さん。長引く不況の中、「非日常の刺激を求める美術の在り方に疑問を抱いていた」。震災と原発事故は、そんな思いに拍車を掛けた。

 「生活にかけ離れたものではなく、生きるために必要な美術を」。思い当たったのは、命にかかわる切羽詰まった状況。触れることのできない光を使い、目に見えない危険の表現を試みた。

 作品は昨年末から1月下旬まで、金沢市のギャラリーで展示した。「これほどメッセージ性のある作品を作ったことはなかった」。あの原発事故が、物事を見る角度を変えた。

若者にも活躍の場多い/飛び込む前に連絡取って

田中金大研究員に聞く現状

 被災地に行きたくても、情報不足から二の足を踏む若者は少なくない。現状や注意点を、震災直後から支援を続ける金沢大研究員の田中純一さん(45)に聞いた。

Q:被災地の状況は?

A:地域によって復興に格差が出始めている。家族を亡くした人たちはより絶望感が深い。いまだ家族の行方が分からず、「震災から一度も泣いていない」と打ち明ける人も。うつや引きこもりになるケースも目立つ。

(左)遺留品をパソコンに登録する金沢大の学生 (右)被災者に足湯のサービスをする金沢大の学生=いずれも田中さん提供

写真

Q:今、現地でできることは何か。

A:被災者の心のケアのニーズが高まっている。専門知識を持ち、信頼関係を築いた上でサポートするのが大切だ。ただ、若者にもできることは多い。土の中に残る小さな木片やガラスの除去、仮設住宅の子どもたちの遊び相手などが求められている。

Q:ボランティアに行きたいと思ったら?

A:北陸にも継続的に支援を続けている団体がある。現地では、被災者らが復興のために設立したNPOや、全国的な支援団体の拠点がある。飛び込みで被災地に行ってもうまくいかないことがあるが、これらの団体と連絡を取れば、必要な支援が見つかるはずだ。

「地元でできることを」 金大など団体相次ぎ発足

 震災後、石川や富山でも、できることを考え、息の長い支援を目指す団体が相次いで発足した。

 金沢美術工芸大では昨年5月、被災地でボランティアを体験した同大修士課程2年の石川雄太さん(25)らが「VICS(ヴィックス)」を結成。学内に掲示板を設け、現地の様子を写真などで紹介したほか、ボランティアの求人情報も張り出した。

 金沢大生が中心の「Volunteer Japan 金沢」は、ボランティア経験者の体験記をブログで発信。3カ月に1度は報告会を開き、後続の学生らに情報を提供している。設立メンバーで4年の中島文乃さん(22)は「無理のない範囲で続けていきたい」と話す。

 「とやま311ネット」は、富山県に避難している人たちを支えるために旗揚げした団体。被災者に生活物資や情報を提供し、定期的に交流イベントも催している。久保大憲代表(33)は「復興はまだこれから。若者にも携わってほしい」と力を込める。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索