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popress【Special】−特別編−
 

戦争は今とつながっている 戦争体験者から聞き取り調査 金大生と8・15に考える

「若者の戦争観」をテーマに話し合う(左から)河野さん、晒谷さん、浜田さん、高田さん=金沢大で

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 今日は終戦の日。戦後67年がたち、戦時を生き抜いた人々の高齢化、記憶の風化が進んでいる。私たち若い世代は先の大戦とどう向き合い、後世につなげていけるのか。金沢大で戦争体験者の聞き取り調査に取り組む学生4人が、戦争について語った。

 金沢大日本史学研究室では、2007年から戦争体験者の聞き取り調査を続けている。同大歴史言語文化学系の能川泰治准教授が企画。これまでに戦地に赴いた元兵士や看護師のほか、少年兵、当時の女学生らに話を聞き、詳細を冊子にまとめた。今回は調査に参加した大学院1年の晒谷亮太朗さん(23)と同大3年の河野茜さん(21)、高田雅士さん(21)、浜田恭幸さん(21)に集まってもらった。

 ―戦争体験者の話を聞いて

 高田(高) 富山に住む女性の、戦時中は食糧難でカモメを食べたという話が衝撃的だった。

 晒谷(晒) 食糧難の話をする人は結構いた。最初は軍隊や出征した時の話を聞けると思っていたが。軍隊に入って、いざお国のために戦おうと思ったら、実は国は食糧さえ与えてくれなかった―。そういう組織だと思い知らされたという訴えもあった。

 浜田(浜) 90代の女性の「平凡の非凡化」という言葉が印象に残っている。平凡でいることが一番難しいと。

 河野(河) 皆さん、共通して「戦争は二度としてはいけない」との思いが強かった。伝えたいというエネルギーに圧倒され、どう受け止めたらいいんだろうと戸惑った。

 ―戦争への意識、考え方に変化は

 浜 最初は「先生がやるか」と言うからやったが、まだ身近に体験を聞ける人がいるんだ、という発見があった。祖母にも「昔、家族何人おったん? 戦時中の暮らしはどうやった?」と聞くように。

 晒  戦争中の生活に即した実体験から「私はこういう経験をしたから戦争はしてはいけないと思う」と聞くと、説得力があった。「戦争反対」と言葉だけ繰り返していては、僕ら戦争を知らない世代はよく理解できない。実家が銭湯だったというある女性は、戦時中は男手が全くなく、毎日力仕事を強いられた。娯楽もなく、勉学や勤労動員で「不自由だった」と。何げない日々が戦争で壊されたとの思いが強かった。

 ―戦争に無関心な若者は多い

浜 友人に戦争の話をしても「おまえ、何言ってるの」と驚かれるだろう。考える機会が少ない。

 晒  本当は無関心でいられないはず。第2次世界大戦自体は昔のことだけど、日米安保や沖縄問題、領土問題を考えると戦争は今に影響しているから。原発について「被爆体験のある日本で、自分たちが豊かになろうとした結果、原発のようなものを造ってしまった」と責任の一端を感じている人にも会ったことがある。僕らの世代にはない考え方だとギャップを感じた。

 河  歴史を学ぶ時は、教科書では分からない、個人の内面に迫ることが大事だと思う。あの時あの人はこう考えていた、とか。

 高  将来は、日本史の教師を目指している。歴史は暗記物だと思ってきたが、今いる体験者から話を聞くこともできる。自分で調べたり考えたりせずに「戦争は関係ない」と言うのは違う。教える立場になったら、与えられたものを無批判に覚えるだけでなく、自分で学ぶ意味を考えられるように歴史を伝えていきたい。

「平凡の非凡化」という言葉が印象的

 浜田恭幸さん はまだ・たかゆき 石川県加賀市出身。戦争系のゲームもよくやる。ただ、画面の中と現実は違うと心得ておきたい。

伝えたいというエネルギーに圧倒された

 河野茜さん こうの・あかね 岐阜県出身。祖母は軍国教育の影響を受けて育った。家族で歴史教育について話すことも。

考えず「関係ない」と言うのは違う

 高田雅士さん たかだ・まさし 茨城県出身。戦争はテレビの中の世界だった。今のうちに体験者の話を聞いておかないと、と思うように。

実体験を聞くと、説得力があった

 晒谷亮太朗さん さらしや・りょうたろう 富山県高岡市出身。「戦争中はいつも腹を空かせていた」と祖父母からよく聞かされた。

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9人分の証言 冊子に

 調査は、できるだけ多くの体験者の証言を集め、その思いを伝えようと能川准教授が始めた。九人分のインタビューの詳細を記した冊子「かたりべ」=写真=二冊を昨年発行。現在、第三弾の製作に取り掛かっている。石川県と金沢市、金沢大の図書館などで閲覧できる。

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富山出身の異色漫画家・沖田×華さん(33)に聞く

知ろうとする姿勢重要

 若い世代では、映画や漫画を通じて戦争に興味を持ったという人も多いだろう。本ページで2月にインタビューした富山県出身の漫画家沖田×華(ばっか)さん(33)もその一人。発達障害やいじめに悩み、看護師、風俗嬢という異色の経歴を持つ彼女の戦争観とは―。

 小学3年の時、実写版「はだしのゲン」を見て、ゲンの家族にすごく共感しました。戦時中の人間関係もよく分かる作品。ゲンの父親は反戦思想の持ち主で日本がもう負けると言ったことで、家族は周りからひどい仕打ちを受けるんです。大人数の方が正しく、異論を言うやつはつぶされる。そのころ、人と変わっていた私は先生から体罰、同級生には無視されるいじめを受けていて。だから、ゲンの強さに憧れました。

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 漫画家なので、物語に注目します。映画「プライベート・ライアン」が好きですが、死が美化されている部分もある。最近の作品は、戦争が無駄ではなかったという意味付けがほしいのだと、透けて見えますね。

 今も世界ではシリアの内戦とか、リアルタイムで戦争が起きています。自分たちと同じ世代が「明日から戦争だ」「僕は死ぬかもしれない」とか、ツイッターやフェイスブックでつぶやいている。

 少し手を伸ばせばネットで情報も見られる世の中で、もう少し積極的に知ろうとする姿勢が重要なんじゃないかな。

 おきた・ばっか 1979年、富山県魚津市生まれ。小中学生のころに学習障害、注意欠陥多動性障害、アスペルガー障害と診断される。2005年に漫画家デビュー。自伝的コミックが多く、作品に魚津での日々を描いた「蜃気楼(しんきろう)家族」(幻冬舎)など。最新刊に「毎日やらかしてます。」(ぶんか社)=写真=がある。

 担当・奥野斐 ※次回は18日付Attention!「金沢で音楽フェス開催」の話題です。

 

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