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popress【Special】−特別編−
 

迫れ 若者のリアル 北陸出身 表現者 飛躍の年  

 モヤモヤ、いらいら…。退屈な毎日にあがいてみても、何か満たされない。そんな若者のリアルな姿を描き、注目されている北陸出身の映画監督と作家がいる。エネルギーを持て余していた10代のころ、「映画を見まくった」経験が、今につながっているという2人。新年1回目の「ポプレス」は、今年活躍が期待される若手に迫った。

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10代のいらつき撮る

映画監督・脚本家 藤村享平さん(29)

−初の長編作品「バルーンリレー」が昨年、劇場公開された。

 僕はこの作品を含め、これまでコメディーを撮ってきた。いろんなところで見てもらえて、うれしかった。でも、これは若手の育成を目的にした企画で制作したので、自分の中ではまだメジャーデビューではないかな。

 主人公は特に大きな不満があるわけじゃないけど、常に周りにいらついている女子中学生。ここには僕の10代の経験も投影されている。満たされてるはずなのに、なんかストレスを感じていた。実家は金沢の街中で、観光客も多いけど、ここのどこがおもしろいんだろうって思ってた。

−その10代のころに監督を目指した?

 高3の秋に映画学校に行くと決めた。今思えば受験が嫌だったからかも。高校の途中で部活をやめて、毎日のようにビデオ店で借りた映画を家で見ていた。ミニシアターにもよく行った。米国のコーエン兄弟やハル・アシュビー監督、日本の木下恵介監督が好きで。あの時見た彼らの作品に少しでも近づきたい。

−描きたいテーマは。

 集団作業が嫌いで個人でできるから、学校は脚本家コースに進んだ。その後監督をすることがあって、最初全然ダメだったから悔しくて勉強した。そしたらおもしろくなって。

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 何が描きたいかというと実は特にない。でも、だから柔軟にできる部分もある。僕の作品は、登場人物がなんらかのコンプレックスや矛盾を抱えている。社会の不条理を、おもしろく描ければ。

−これからの目標を。

 これまで人に恵まれてきた。その時々で、いい方向に行けたと思っていて。「流れる」ってことが大切じゃないかと最近思う。流れに乗りながら、今後は脚本も書いたオリジナル作品を撮りたい。

 (聞き手・奥野斐)

 ふじむら・きょうへい  1983年、金沢市生まれ。県立金沢西高校、日本映画学校(現日本映画大学)を卒業。2010年、若手映画作家育成プロジェクトでの監督作「逆転のシンデレラ」が評価され、12年に「バルーンリレー」(65分)が劇場公開された。最近は、映画以外にも音楽映像など幅広く活動している。

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地方女子の本音書く

作家 山内マリコさん(32)

−昨年“地方ガール”をテーマにした初の小説を出版した。

 中高生のころから地方にいることにフラストレーションがあった。車がないからどこにも行けないし、娯楽もない。レンタルビデオ店で外国映画を借りまくったりしてた。

 小説は、地方に住む女の子を描いた短編連作。ツイッターで「私のことだ」と共感してくれる人も多い。マインドは東京にいる子たちと変わらないのに、疲弊していく地方都市に若者がいることのつらさ。私自身、富山出身ってことに向き合えるようになったから書けた作品でもある。

−小説家は夢だった?

 昔から物を書くのは得意で、ずっとあこがれはあったけど、どうしたら入れる世界なのか分からなかった。大学卒業後にライターをやったりして文章能力を発散してたけど、満足できなくて。上京し、手当たり次第にいろんな文学賞に送っていたら割と早く賞が取れた。でもその後の3年間は、本を出せずに苦しい状態が続いた。

 毎日起きて執筆して、たまに外出て映画見て仕送りもらって。いったらニートの生活。あぐらでたばこ吸って、耳に赤ペン差して、発表する当てもないものをひたすら書いていた。どうしても本にしたいと。形になった時はなんか信じられなかった。

−今後は。

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 例えば女の子たちが気付いていない男女格差とか、若者の働き方の問題。普段、本を読まない人にも手に取りやすく、かつテーマ性のあるものを書きたい。今は若い人が割を食う時代だし、30歳過ぎてフリーターとか人ごととは思えないから。

 小説って生き物みたい。書いているうちに変化するし、先のことを決めずに書く方が面白い。いつも、着地点は決めてないんです。

 (聞き手・小椋由紀子)

 やまうち・まりこ  1980年、富山市生まれ。富山第一高校、大阪芸術大映像学科卒業後、京都でのライター生活を経て上京。2008年「十六歳はセックスの齢(とし)」で新潮社主催「女による女のためのR−18文学賞」読者賞を受賞。12年、初の単行本「ここは退屈迎えに来て」(幻冬舎)=写真=を出版した。

 ※次回は9日付Work&Life。都会を離れ、地方で奮闘する若者の姿を紹介します。

 

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