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popress【Love & Sex】性、恋愛の問題をまじめに考える
 

同性カップル 里親 担い手に 「家族のカタチ」を考える〈後編〉 

8月、シアトルでデゲールさん(中)、リサさん(右)と話す藤さん。冷蔵庫には彼女たちが育てた里子の写真がたくさん貼られていた(藤さん提供)

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 同性婚への理解が進まない日本の現状を取り上げた前編(11月27日付)に続き、「家族のカタチ」を考える特集の後編は里親制度に焦点を当てる。欧米では実の親が育てられない子どもの5割以上が里親の家庭で生活しているものの、日本は1割にとどまる。里親の新たな担い手として同性カップルを推す声がある。その背景を探った。(担当・押川恵理子)

制度根付かぬ日本

 「何を食べたい?」と聞かれると戸惑ってしまう。施設での食事は決まっているから。虐待や親の事情で保護された子どもの9割が施設で育つと知った時、東京都の藤めぐみさん(39)は友人たちを思い浮かべた。

 子育てを希望し、社会のため役立ちたいと願うレズビアンやゲイのカップルだ。日本で里親は男女の夫婦にほぼ限られている。風穴を開けたいと、藤さんらは今年1月にLGBT=メモ参照=と、里親制度を考える団体Rainbow Foster Care(レインボー・フォスター・ケア)を設立した。

欧米は活躍広がる

 欧米では同性カップルが里親として活躍している国がある。その一つ、ワシントン州シアトルを藤さんは今夏視察した。レズビアンのデゲールさんとリサさんはベテランの里親。別の地で結婚したが、法律の変更で解消され、同州で再び結婚予定という。

 シアトルには複数の里親家庭が支え合う独自の仕組みがある。孤立や問題を抱え込むことを防ぐためだ。経験豊富な2人は他の家庭に助言し、子ども全員を見守る中核の家庭「ハブホーム」を任されている。

 当初、偏見はあった。2人は保護者会や地域の行事に出掛け、いろんな人と話すことで、理解と信頼を得てきた。

 LGBTの里親を支援する団体もある。Families Like Ours(ファミリーズ・ライク・アワーズ、FLO)代表のデイビッドさんもゲイの里親。実績を買われ、同性カップルや自治体から多くの相談を受けている。

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 同性カップルならではの受け入れも。例えば、性犯罪の被害者で男性を恐れる女子はレズビアンの家庭に、女性に暴力的な言動を取る男子はゲイの家庭に優先的に委託される。

 LGBTを理由に、子どもが家庭から追い出される事態も相次ぐ。問題視したニューヨーク市は今夏、受け皿として同性カップルの里親を緊急募集。ワシントン州では若いホームレスの4割がLGBTという統計もある。

 ゲイの子どもはゲイが育てた方が良いか。その問いにデイビッドさんは「ノー」と否定的。偏見を強める恐れがあるからだ。全ての親が子どもの多様性を理解することが大切。FLOではLGBTと、そうでない人が一緒に研修を受ける。里親になる割合は77%で、州の実績3%を上回る。

 「多様な子どもがいて、多様な親がいる」。その理解が里親制度の充実につながる。視察後、藤さんはその思いを強くした。

LGBTの子に理解が足りない

 全国里親会副会長の木ノ内博道さん(64)は「特定の大人から愛情を受けて育つことが大切」と話し、施設養護中心の現状を憂う。愛着を感じる関係から子どもの自尊心や自立心は育ち、将来の家族像も描きやすい。

 国連の勧告を受け、厚生労働省も施設の小規模化、里親の増加を目標に掲げる。さまざまな人的資源の活用が必要だが「里親に同性カップルを認めるかどうかの議論はまだ進んでいない」と木ノ内さん。「LGBTの子どもに対する理解も足りないのでは。マイノリティーが生きやすい環境を」と話している。

特集を終えて 

多様なきずな 認める社会を

 多様な家族のあり方を考えた特集。「独身でも、好きな人たちとつながり、生きていける仕組みがあれば」との意見もあった。

 性的少数者の交流団体「レインボー金沢」の女性スタッフ(34)は4、5年交際する女性と一緒に生きたいと願う半面、結婚や出産に対し、世間的なプレッシャーも強く感じる。「一緒に暮らす人=家族」と、柔軟な捉え方を社会に求める。

 多様な生き方の理解には、カミングアウト(告白)が必要と考える。ただ、人間関係や仕事への影響は正直怖い。「学校の授業でLGBTを教えてほしい。子どもを通じて大人も学べる」と訴えている。

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メモ 

 〈里親制度〉 児童福祉法に基づき、実の親が育てられない子どもが別の家庭で生活する機会をつくる。親元に戻れない場合は原則18歳まで。里親は研修を受け、都道府県や政令指定都市の審査を経て認定、登録される。児童虐待の増加などで保護が必要な子どもたちは増えている。制度は国によって異なる。

 〈LGBT〉 Lはレズビアン、Gはゲイ(女性、男性の同性愛者)、Bはバイセクシュアル(両性愛者)、Tはトランスジェンダー(性同一性障害などの人々)の頭文字。2012年に電通総研が全国約7万人を対象に行った調査では人口の約5.2%と推計された。

 ※次回は18日付Human Recipe。金箔(きんぱく)などを細やかに施す技術「截金」(きりかね)とガラスで独特の美を表現する山本茜さんを紹介します。

 

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