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popress【Love & Sex】性、恋愛の問題をまじめに考える
 

止まらぬ衝動 愛されたくて 「性依存症」を考える

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承認欲求 満たすため

 四六時中、セックスのことを考えたり、好きじゃない複数の相手と関係を持ったりしてしまう「性依存症」。性は人間の根源に関わり、必要な営みでもある。どこからが「病気」なのか線引きが難しく、「ふしだらなだけ」など誤解も多い。専門家の指摘や当事者の告白から、依存につながる背景と回復に向けた道筋を探った。(担当・押川恵理子)

専門家の指摘

迫り続ける女性

 「いわゆる美人が多く、知的な職業に就き、コミュニケーション能力も高い傾向がある」。長年、性の悩みに耳を傾けてきた金沢市のカウンセラーで助産師、あねざきしょうこさん(62)は話す。

 ある30代の未婚女性はセックスのことが仕事中も頭から離れず、不倫相手に頻繁に電話やメール。連絡がとれないと家に押し掛け、「奥さんに告げる」と脅すなど男性を追い込む行為を繰り返す。

 結婚や人格的な愛情を求めているのではなく「自分の承認欲求を満たし、エクスタシーに近いものを得ている」と、あねざきさん。

 金沢市の「ひろメンタルクリニック」では性依存症と疑われるケースが5、6年前から増加。複数との性交渉は30〜40代の女性に多く、痴漢行為や盗撮などの犯罪行為は男性に目立つ。

 精神保健指定医の奥田宏院長は「愛されたい、必要とされたいという欲求は誰にでもある。性依存症はその出方が一面的で過剰。寂しさや悲しさを一時的に覆い隠し、生きづらさを埋め合わせようともがくのは、他の依存症と同じ」と話す。

 しゅうとめとの不仲を理由に長年通院していた女性は「男性から好きだと言われると断れない」と漏らした。この女性のように性依存症は自覚していない人が多く、うつ状態で訪れ、話を聞くうちに分かる場合がほとんどという。

 そううつの既婚女性は、そう状態の時に両手で数え切れないぐらいの男性と性交渉。「夫が威圧的。逃げたくて一人前の女性として扱われたくて…」。新婚の男性を狙って不倫を繰り返し、「女としての価値の高さ」を確認する女性もいた。

数年に及ぶ治療

 育ってきた環境の影響が色濃い。幼いころから優秀であるよう過剰に求められたり、親の愛情を実感できなかったり。性的虐待やDV(配偶者らからの暴力)の被害者もいる。

 治療は、寂しく満たされなかった過去を思い出し、受け入れることから始め、どうやって悪循環を抜け出し、「普通の生活」を送れるかを話し合う。回復に数年かかる場合も多い。

当事者の告白

性的関係に逃避

 都内在住の自営業男性(37) 女子高生と性行為がしたくなるんです。その日の相手をテレクラや雑誌で探し、膨大な人数と会いました。7年前、児童買春・ポルノ禁止法違反で逮捕され、うつ病で精神科に通い、依存症と診断されました。

 衝動が起きるのは不安や怒りで感情がぐらついたり、急に予定が空いたときです。仕事の問題からも逃げました。性的な関係を持つ人がいる瞬間だけは安心できるから。正直やめたくない気持ちと、社会的に破綻するとの思いが混じっていました。

 性犯罪の刑罰を受けても、依存症を治療しないと繰り返す恐れがある。回復しなければ当事者にとっても、社会にとっても不幸です。

一生向き合う病

 神奈川県在住の男性(33) 数年前、電車内の痴漢行為で逮捕されました。妻と離婚。自暴自棄になって派遣先の自動車工場を無断欠勤し、大酒を飲みました。3年前に再び逮捕され、依存症専門の病院へ。

 「かわいい」と思うと抑えられなくなり、「少しだけなら」と自己中心的な考えに流されてしまった。被害者は一生、不快な思いをするし、周りの人も傷つけた。依存症は完治しない死ぬまで向き合う病気。それを忘れず、問題を起こさないよう1日1日を過ごしています。

      ◆     ◆

 性依存症からの回復を目指し、自助グループに通う2人が問題の背景に挙げたのが、孤立感と自己評価の低さ。ともに小中学校でいじめを受け、母親の過干渉や両親の不仲など家族の問題にも触れた。

 匿名で体験を話し、分かち合うミーティングに通い続けるうち、孤立感が薄れたという。衝動が起きそうな危険なときは仲間に電話し、とどまる。歯止めとなる自助グループは、回復の大きな支えとなっている。

 性依存症 強迫的な性行動を抑えられず、社会生活や周囲の人間関係に支障をきたしている状態。不特定多数との性交渉や過度の自慰行為、風俗店通いのほか、痴漢や盗撮、買春、児童ポルノ、ストーカー、レイプなど条例や法に違反する行為も含まれる。性依存症の概念や分類は統一された見解が示されていない。

 ※次回は4日付Human Recipe。挫折や絶望から再生する少女の情念を描く小説家の紅玉いづきさんが登場します。

 

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