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popress【Love & Sex】性、恋愛の問題をまじめに考える
 

主夫という選択

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 夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ−。この考えに賛成する人の割合が、最新の内閣府調査で20年前から初めて増加に転じ、再び半数を超えたという。中でも20代の急増ぶりが目立つが、「専業主夫」や積極的に育児に関わる「イクメン」なんて言葉もあるご時世、男性が家庭を守るのもアリなのでは? というわけで、家事や子育てを主に担う2人の主夫に迫った。(担当・奥野斐)

長男誕生きっかけ

 「会社を辞めて、世界が広がったんです。子どもの成長を日々見られるのがうれしい」

 東京都内に住む“兼業主夫”の堀込泰三さん(35)は実感を込めた。毎日朝食を作り、5歳と1歳半の息子たちに食べさせ、保育所へ送り出す。日中は翻訳の仕事をし、夕方子どもたちを迎えに行く。妻の実苗(みなえ)さん(36)はフルタイムで働く大学の研究職。堀込さんが掃除以外の家事と育児を担当している。

 きっかけは、約6年前の長男誕生にさかのぼる。実苗さんの職場では産前産後休暇として2カ月ほどしか休めなかった。「ならば、自分が育休を取ろう」。当時、大手自動車会社のエンジニアだった堀込さんは会社の制度を調べ、上司を説得して2年間の育児休業に踏み切った。

 仕事を休んでいた間に実苗さんの仕事で家族で米国へ。育休明けに一人だけ帰国し職場復帰したものの、「家族と一緒にいたい」との気持ちが強く4カ月で退職した。「ものづくりへの未練がないわけではなかった。でも、いずれできればと思えた」と振り返る。

 周囲の反対や戸惑いはなかったのだろうか。「彼の両親がどう思うか、それだけは心配でした」と実苗さんは明かす。両親は結局、家族にとって一番いい形ならと賛成。実苗さんは子どもと接する時間が短く、寂しさもあったが「息子たちがハッピーならば」と納得している。家計の収入も減った。「だけど、何かを我慢している感じはない」と2人は口をそろえる。

 主夫になった最初のころ、堀込さんが健診会場に子どもを連れて行くと「ママはどうしたの?」と聞かれ、父親は付き添い扱いだったという。「脳科学的に男性は子育てができない」と友人に言われた時は、憤りも感じた。「出産や授乳は無理だけど、男性の方が体力も腕力もあるし、向いてる部分もある」

周囲から冷たい目

 同じく主夫仲間で、都内在住の佐久間修一さん(46)は、15年前から“専業”で妻(38)を支えてきた。昨年、待望の長男が生まれ、今は家事と子育てに追われる毎日だ。

 15年ほど前、難病が発覚し退職した。フリーのグラフィックデザイナーとして働く妻の希望で主夫になったが、近所から「ヒモ」「ごくつぶし」と言われたこともあったという。

 自身も「男は外で働くべきだ」と考え、3年ほど仕事をすることを模索。「出掛ける時はスーツを着て、人がいない時間を狙って買い物に行って…。そんなことをしても、無意味だと思った」。周囲に何を言われても妻のバックアップに徹すると決め、その時から金髪にした。「経済的に楽ではないけど、家計をやりくりするのが僕の仕事」と胸を張る。

「2人が納得」大切

 2人は今、主夫としての生き方をブログや講演などを通して発信している。「みんなが主夫になれってことじゃなくて、こんな選択肢があってもいいのかなって」と堀込さん。佐久間さんは「僕は男だけど、妻より家事が得意。性別で分けるより、2人が納得するのが一番」と強調した。

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 ほりこみ・たいぞうさん=写真右から2人目

 1977年、千葉県生まれ。東大卒業後に自動車会社に就職。29歳の時に妻実苗さんと結婚した。長男誕生と同時に2年間の育休を取得。復帰後、退社し「兼業主夫」に。昨年10月、著書「子育て主夫青春物語『東大卒』より家族が大事」(言視舎)を出版。

 さくま・しゅういちさん=同右端

 1967年、東京都生まれ。24歳で大手コンピューター会社に就職。転職し、30歳の時に8歳下のフリーのグラフィックデザイナーの妻と結婚した。その後病気が判明し退職。「専業主夫」歴15年。昨年、長男が生まれた。

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若者の保守化進む?

国統計にみる 性別役割分業 

増える共働き世帯

 内閣府が数年ごとに実施している男女共同参画社会に関する世論調査。「夫は仕事、妻は家庭」との考え方に「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた人の割合は、1992年の初回調査で60.1%だったが、以来減少を続け2009年の前回は41.3%にとどまった。ところが昨年の調査では20代で賛成派が急増し、51.6%に達した=グラフ。

 若者は保守化しているのか。金沢大人間社会学域の杉田真衣准教授(ジェンダー論)は「たしかに、若い世代で性別役割分業を肯定する意識が強まっている面はある」と話す。「ただ、男女とも非正規雇用者が増え、正社員の労働条件も悪化している。生活が不安定になっているからこそ、専業主婦になりたいという願望が高まっているのでは」と指摘する。

 実際、共働き世帯は増加傾向だ。総務省の調査では、かつて多かった「男性雇用者と専業主婦」世帯が減り、90年代に共働き世帯数と逆転。2011年は前者が773万世帯に対し、後者が987万世帯に上った。

 杉田准教授は「雇用環境が不安定な中で、現代は家族をつくることが難しくなっている。このような現実の中では性別役割分業の意識も変化を迫られるだろう」と話している。

 ※次回は6日付HumanRecipe。政治学が専門の拓殖大准教授丹羽文生さんが登場します。

 

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