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popress【Love & Sex】性、恋愛の問題をまじめに考える
 

セクハラ 心身蝕む 深い”闇”

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 セクシュアル・ハラスメント、略して「セクハラ」。誰しも一度は耳にしたことがある言葉だろう。社会問題視されるようになって久しいが、被害は一向に後を絶たない。どこの職場や学校でも起こり得る問題を、被害者の体験談や専門家の話を交えながら考えた。(メーン担当・永井響太、サブ担当・奥野斐)

富山の麻子さんのケース 

 「セクハラのことは少しは分かっていたつもりだった。被害に遭っても自分は大丈夫だと思っていた」。富山市に住む麻子さん(39)=仮名=は、初めてセクハラを受けた当時を振り返る。今から7年前、32歳の時だった。

仕事相手断れず…

 仕事で付き合いのある30代後半の男性と夕食後、「喫茶店で打ち合わせをしよう」と言われ、男性の車に乗り込んだ。向かった先は喫茶店ではなく山の中。外は土砂降りの雨。一緒に歩くよう誘われて最初は断ったが、「(仕事相手の)彼の機嫌を損ねるかもしれない」とついていった。

 男性は夜景を見るふりをしながら、麻子さんの体を触った。帰る途中もたびたび車を止め、腕をなでたり抱きしめてきたりした。嫌で仕方なかったが、仕事のことを考えるとこばむこともできなかった。「触られているのは、自分の体ではないと思うしかなかった」

 その後、男性と仕事をする機会もあったが、あの日のことは思い出さないようにしていた。だが10日ぐらいたったころ、体に異変が現れた。動悸(どうき)や吐き気、じんましんに不眠…。職場の女性の先輩に打ち明けると「それってセクハラだよ。警察に行こう」と強く言われ、初めてセクハラ被害に遭ったことを自覚した。

「2次被害」追い打ち

 直接的な苦痛だけでなく、周囲の理解不足による「2次被害」にも苦しんだ。上司からは「君が魅力的だから」「なぜ断らなかったの」と言われた。職場も信用できなくなり、最後は仕事を辞めた。

 若者に同じような思いをしてほしくないと、麻子さんは現在、セクハラなどの相談を受け付ける仕事に就いている。「当時を思い出すと今でも体が震えます。男性はきっと何とも思っていないのでしょう。女性との意識差があることを考えてほしい」と訴える。

潜在的な被害未知数

 セクハラは1970年代に米国で使われ始めた言葉で、「性的嫌がらせ」と訳される。国内では、セクハラを問題にした初めての裁判が89年に福岡で提訴されて以降、全国で訴訟が本格化。同年には「セクシュアル・ハラスメント」が新語・流行語大賞の金賞になり、社会問題としてとらえられるようになった。

 それに伴って法整備も進み、国は99年の男女雇用機会均等法改正で初めて対策を盛り込んだ。セクハラの定義を明文化し、事業主に相談窓口の設置や従業員への周知などを要求。大学などの教育機関も、法に準じて相談窓口や規則、調査委員会を設けて対応するようになった。

 ただ、これらの取り組みで状況が劇的に改善されたわけではない。厚生労働省によると、同法にかかわる2010年度中の相談2万3496件のうち、セクハラは1万1749件を占める。ここ数年で件数はやや減っているというが、依然として全相談の過半数。心と体を蝕(むしば)む性的被害は人に話しにくい面もあり、潜在的な被害はさらに多いと考えられる。

激励の肩たたき▼ グレーゾーン自覚を ▼服装を注意する

労働局に相談窓口

 「セクハラは悪」というのは、多くの人が当たり前に思っている共通認識だろう。でも、どんな行為がセクハラに当たるのか、単純に線引きできないのも事実。セクハラ問題に詳しい石川県の女性弁護士は「グレーゾーンの行為や言動でも、状況次第でセクハラになる」という。

 例えば「激励で部下の肩をたたく」行為。軽いスキンシップのつもりでも、繰り返せば十分セクハラになる。「服装を注意する」のも、言い方を誤ると問題になりかねないという。女性弁護士は「体への接触をしないのが一番の安全策。言葉選びも慎重にすべきだ」と忠告する。

 一方、被害者側でしばしば問題になるのが、泣き寝入りしてしまうことだ。「性被害を人に言うのは、ものすごく屈辱的」(女性弁護士)なだけでなく仕事上の立場を気にして打ち明けられないケースも少なくない。

 被害に遭ったらどうすればいいのか。学校や会社に相談窓口がなければ、各都道府県にある労働局で相談できる。労働局は、加害者と被害者双方に事情を聴いた上で指導する「援助」と、弁護士や専門家らの仲介で話し合う「調停会議」の制度を設けている。いずれも費用は無料だ。

 「見ず知らずの人には話しにくい…」という人は、家族や友人に話してみるのも一つの方法。石川労働局雇用均等室の渡辺安子室長は「相談を受けた人は相手を否定せず、親身になって聞いてあげて」と話す。また、被害を受けた日時や状況を記録しておくと、相談の際に役立ち、訴訟で重要な証拠になる。

 

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