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popress【Interactive】若い読者モニターの声を受けたニュース解説
 

バク・トゥ・ザ・ティーチャー 政治編 地方議会 もっと物申せ

石川県志賀町、ジュン(仮名)/年齢:31歳/職業:福祉施設職員/趣味:海外ドラマを見ること/よく聴く音楽:R&Bとか緩い感じの洋楽/一言:これまで選挙は欠かさずに行っている。ただ、選挙時の公約が途中で変わったりと、結局は見えないところで世の中は動いているような気がする。

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 災害の恐ろしさ、原発依存の電力事情のもろさを浮き彫りにした東日本大震災。政治や行政の果たすべき役目が一層強まる中、私たちの声は届くのだろうか。石川、富山に住む若者の政治への関心を高めようと始めた「バク・トゥ・ザ・ティーチャー政治編」は、統一地方選さなかの今回、住民にとって身近な政治の場「地方議会」について考える。

働かぬ「チェック」

 ばく先生:今回は、石川県志賀町に住むジュン。福島県の福島第1原発が危機的な状況で、同じく原発を抱える町民ということもあり、選挙への関心は高い?

 ジュン:そうですね。災害対策はとても気になる。あと、これからほしいと思っている子どものことを考え、子育ての政策も判断基準に入れたい。

 ジュンの場合は石川県議と志賀町議選が関係あるね。票を投じた議員に思いを託したいところだが、議会がそうなっているか、疑問視せざるをえない現状がある。

 どういうこと?

 地方自治体は首長と議会議員の「二元代表制」(※<1>)になっている。だけれど、全国の多くの議会をみると、必ずしもこれがうまく機能していないケースが多い。

 議会を構成している議員たちは、条例の提出や、首長側の提案を議会で修正することで、民意を伝えたり、首長の独走を防ぐ「チェック機能」を果たしたりすることができる。その働きぶりを測る目安となるのは「首長側(当局)提案の否決」と「政策的条例の提出」の頻度だが、いずれも低いのが現状(※<2>)だ。

 議員たちが「物言わぬ」状態となれば、議会はただ首長の考えを追認する場でしかなくなる。議会を通じて民意を伝えられるのか疑問というのは、こういう状況からなんだ。

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なあなあが常態化

 なぜ「物言わぬ」議会になるの。

 愛知学院大の森正教授(政治学)によると、まずは制度上の問題がある。議会棟の管理権を握る首長の了承なしには議会を開けないなど、議会の独立性が低い。自治体の税金の使い道を決める「予算」も、提案、または修正する権限が首長にしかなく、議員たちにはない。これで十分なチェック機能を果たせというのは「両手足を縛られながら泳げというようなもの」(森教授)だ。

 この「力の不均衡」に加え、地方議員とそれを支持する有権者の意識も、議会の空洞化に拍車をかけている。森教授は「地方議員は『地域代表』のことが多く、地域にお金を落とすための『陳情のパイプ』としかみられていない」と指摘する。より多くの利益を誘導するには、予算をつくる権限を持つ首長とケンカしないほうがいい。結果として、議会は提案を否決する権限を持っているが、行使せずに「なあなあ」になりやすいという訳だ。

 じゃあ、議会っていらないの?

 そんなことはない。市民にとって民意を伝える手段は多い方がいいし、首長の権力チェックも大切な仕事だ。そもそも、地方自治法は大切なことは議会が決めると定めている。

住民投票も選択肢

 では、議会を活性化させるにはどうすればいいのか。

 まず、議会のチェック機能の強化が挙げられる。相模原市では、市民団体が議員を評価する「議員通信簿」を実施し、話題になった。是非はともかく、議会に緊張感をもたらす効果はあるだろう。大事な施策は住民が直接、決める「住民投票」を活用することも、選択肢の一つ。

 それと、予算の編成権を首長だけが持つといった今の制度の改革も考えられる。

 議会が活発化し、政策に関与する度合いが高まれば、住民が議員に思いを託す環境も整ってくる。住民としては、投票するだけではなく、議会がしっかりと政策を戦わせる場となっているか、チェックしていくことも大切だろう。

 ◆ ◆ ◆ 

 「利益誘導型の政治は結局、有力者ら限られた範囲での利益配分になる。『子育てに優しい』といった広範囲に及ぶ利益は後回しにされやすい」と森教授。ただ、日本は深刻な財政赤字になっており、誘導する利益がなくなりつつある。限られた予算の使い道を考える時、若者が存在感を示すには「まず投票」。そうばく先生は信じている。(「バク・トゥ・ザ・ティーチャー政治編」は、これで終了。次回からは新シリーズが始まります)

コール&レスポンス

回答者:popress編集委員 奥野

事故があっても原発は必要?

 【ジュン】本当に原発って必要なんですか?

 【回答】国内の電力事情から、少なくとも「今すぐすべて止める」のは難しいようだ。

 経済産業省資源エネルギー庁によると、全発電力量に原子力が占める割合は29%。石川、富山、福井に電気を供給している北陸電力も約3割が原子力(ともに2009年度の実績)だった。

 日本は、1970年代まで火力発電が70%程度を占めたが、その後、原子力発電を増やしてきた。なぜか。日本は石油をほとんど自給できない「資源貧国」。原子力は、石油よりも少ない量で発電できるし、燃料となるウランが分布する国も多く、安定した供給が見込めると同庁は説明する。

 ただ、それは「安全でクリーン」とのうたい文句が通用してこそ。「原発依存」の恩恵とその危険性を真剣に考える時期にきていると言える。

 【ジュン】計画停電もあったけど、電力を全国で融通し合えないの?

 【回答】それには大きな問題がある。日本は東が50ヘルツ、西が60ヘルツと周波数が異なり、そのまま融通できない。明治時代、関東の電力会社はドイツから、関西は米国から発電機を購入したのが理由だ。

 統一すれば?と思うかもしれないけど、産業用の精密機械が故障する恐れがあり、今さらは難しい。融通し合うための「周波数変換所」も、長野と静岡両県の計3カ所のみ。西日本から関東へは東京電力管内で必要な電力の約30分の1しか送れない状況だ。

 今回の東日本大震災を受けて、広範囲の電力がダメージを受ける大規模災害に対応できる態勢を整えるのか。それとも、今回のように節電を徹底し、時には計画停電を実施して乗り切るのか、注目される。

 ※<1> 地方自治体の「首長」と「議員」をともに住民が直接選び、互いにチェックしながら住民の意思を反映させる仕組み。「機能不全に陥っている」との指摘もある。名古屋市や鹿児島県阿久根市など、近年、議会と首長が対立すると、解散請求(リコール)につながり、選挙で住民の意思を一元化しようとする首長が目立っているからだ。

 ※<2> 昨年12月、本紙が石川県内の各議会にアンケートした結果によると、石川県議会は過去10年間で当局(首長側)提案の議案を否決したことはなかった。志賀町議会は2005年9月の合併後、1回だけ。ただし、この二つの議会が突出して少ないわけではなく、全国的に同じような傾向となっている。

 

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