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popress【Human Recipe】あの人はどうやって「今」にたどり着いたか
 

同性愛 カメラで未来 写真家 森栄喜

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撮って楽しく人権運動

 金沢市出身の写真家、森栄喜(37)は、さわやかで軽やかな「活動家」だ。美しい男性たちの表情や裸、日常を撮ることは、同性愛を公言する彼にとって人権運動でもある。あくまで楽しく、作品を通して、いろんな人を巻き込んで、社会に訴えかける。レンズの向こうに希望の虹を求めて。

−写真との出合い。

 高校生のころ、父のカメラをもらって始めた。家族で遊びに行って撮るみたいな感じ。撮影って感じじゃなくてスナップ写真。

 ロバート・メイプルソープの写真が当時好きで、男の人を堂々と撮影していることに勇気づけられた。自分も作品をつくりたいと。

生涯一番の頑張り

−米国の大学へ。

 ひねくれていて、日本の美大は入試用の大変な勉強をしないと入れないのに、卒業しても尊敬できるアーティストが少ないから、行ってもしょうがないと思って。

 デザインが大好きで、最初はデザインの学科に入ったけど、素材を写真で撮るうちに、そっちが面白くなって。入学してすぐ写真に転向。授業は大変と聞いていたけど、日本の美大受験から逃げたみたいな感覚もあったし、絶対に卒業してやろうって。生涯で一番、朝から晩まで頑張った。ニューヨークはみんなハングリー。平日にすごい頑張って、週末は遊ぶ。そのノリが好きで楽しかった。

 −しんどい経験は?

 キリスト教で成り立ってきた社会に、英語をネーティブ並みに話せない、生ぬるい無宗教のアジア人が乗り込んで、予想以上にとけ込めなかった。あからさまにアジア人嫌いな先生もいた。マイノリティーの極み。でも、そう気づけて良かった。

 台湾や韓国、中国からの留学生と仲良くなって、学校で教えられたことが歴史だと思っていたけど、アジアで戦争の捉え方が違うと知った。ある人にとって正しいことが、他人にはそうじゃなく、無意味なこともある。

 −写真に夢中になった。

 デザインってクライアントがいるけど、作業は1人。僕はポートレートしかほぼ撮っていないので、写真=他者、共同でつくり上げるのが、圧倒的に違う。他者が入ると思い通りにコントロールできない。生真面目にコツコツやっていても、ぶっ壊される。現場のハプニングにどんどん夢中になった。

 −被写体は男性。

 若いころは元気で、性的に魅力的だから、裸も単純に撮りたくて撮っていたけど、自分を肯定させたいという思いも強かった。

 名もない写真家の僕に裸を撮らせてくれる。撮影のために時間をくれる。モデルのいろんな人と出会えて、肯定されている感じがした。同性愛と気付いたのは小学生の高学年。今のようにインターネットで友だちと出会えることもなくて、誰にも言わなかった。

 −前作の「tokyo boy alone」はセルフポートレートと説明する。

 「男子」「東京」「裸」という自分の要素を他人に重ねて撮ったから。私的な面はさらけ出さず、他人を借りた演劇に近い。目的は男の子だけの写真を流通させることで、「僕も頑張ります」みたいな手紙をもらって、手応えはあった。

 今度の「intimacy」は挑戦。自分も登場する何げない日常の中で撮った。被写体は恋人とごく親しい友人。立ち位置、ポーズはほとんど指示していない。一見、ゆるい構図もあって、「これだ」という写真の連続ではないけど、モザイク画みたく、全部見たら一つの大きな絵みたいになるよう目指した。

写真を通じて同性婚の実現を訴えかける「WeddingPolitics」=森さん撮影

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結婚の実現訴える

 −次のテーマは。

 同性婚。自分が撮りたくて、必要としていて、自分より下の世代も欲している。この夏から写真を通して訴える「Wedding Politics」というプロジェクトを始めた。

 同性婚とか認められれば、僕も子どもを育てられる。子育てするかしないかは選べた方がいい。結局、犬を飼うみたいなの寂しいから。

 でも、みんな、ぬるい。声を出していかないと、政治家って動かない。写真家だから、デモとかじゃなく、作品を通して、ビジュアルで広めていきたい。運動です。出来事を共有する。人を撮っているのも、他人と一緒に幸せになりたいから。 (敬称略)

  聞き手・押川恵理子

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 虹は希望や理想、はかなさを連想させる。ゲイにとって象徴的。希望をあきらめず、みんなで一緒に見られたらいいなって思いを込めました。

 もり・えいき 1976年金沢市生まれ。パーソンズ美術大写真学科を卒業。作品集は2009年に「Crows and Pearls」(edition.nord)、11年に「tokyo boy alone」(レボリューション・スター・パブリッシング)など。今年12月に最新作「intimacy」(ナナロク社)が刊行予定。「男」をテーマにした冊子「OSSU」も写真家や画家、ファッションデザイナーの仲間とつくり、発行している。東京都在住。

 ※次回は16日付Spot&Place。里山とガラスの魅力を発信する金沢市牧山町を巡ります。

 

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