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popress【Human Recipe】あの人はどうやって「今」にたどり着いたか
 

ガテン系 全力疾走 作曲家 兼 ピアニスト 天平

集中力を高め、ピアノに思いをぶつける=2012年12月、金沢市の金沢21世紀美術館で

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世界、被災地「もっと先に」

 格闘家のような屈強な体。即興を織り交ぜたコンサートは、いつもTシャツにジーパンの自然体だ。高校中退、肉体労働の日々を経て、17歳で音楽の道に進んだ異色の作曲家兼ピアニスト、天平(32)。

 クラシックやジャズ、ロックなどジャンルを超えて生み出した曲を激しく美しく、時に驚くほど繊細に奏でる。「リスクを恐れず夢に突き進む」強さと自信で、日米を拠点に世界に活躍の場を広げている。(聞き手・小椋由紀子)

高校中退 16で自立

 −異色の経歴

 ピアノは兄や姉の影響で5歳から始めた。あくまで習い事の一つで、小学6年まで続けた。好きだったけど、普通よりうまく弾けるくらいだった。

 昔から型にはめられるのが嫌で、小中学校時代から周囲とぶつかってはケンカばかり。体を動かすのは好きだし、将来は格闘家か、肉体労働をして暮らそうと思っていた。高校は必要性を感じなくて半年でやめた。

 とび職、引っ越し屋、いろんなバイトを始めて16歳の時、家を出て解体業に就いた。自立してその日暮らしは楽しかったけど、この先ずっと同じことをやっていくのかと思うとなんか満たされなくて。これまでとは全く違うことにチャレンジして人生を変えてみたかった。

 僕が少しでも優れているのはピアノだと、音楽専門学校に入った。その後クラシックも学ぼうと猛特訓して芸大に進んだ。困難に挑戦するのが楽しかった。芸大はお嬢さまが多くて僕は正直浮いてたけど、1台で多彩な表現ができるピアノの奥深さを知った。ピアニストになろうと決意したのは大学3年のころ。

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12カ国回り修業の旅

 −独特の曲作り

 卒業後、ニューヨーク留学を経てCDデビューもした。ピアノの原点の地で自分がどう迎えられるのか、何を感じてどう曲にするのか興味があって3年前、ヨーロッパに音楽修業の一人旅に出た。

 40キロの荷物に電子ピアノを担いで、3カ月半で12カ国を回った。ルーブル美術館とかコロッセオとか、世界遺産の前でストリートパフォーマンスをしたり、コンサートに出演したり。ハードな旅だったけど、熱心に耳を傾けてくれる人や街との出会い、経験、すべてが曲作りにつながった。

 作曲は、音符をブロックのように積み上げていくイメージで骨組みから作る。楽譜は書かない。雰囲気を書き留めたり、複雑な曲は録音したりするけど、だいたいの曲は覚えている。1日で曲ができる時もあるし、数カ月かかるときもある。

 コンサートでは即興もする。昨年末に初めて金沢で公演した時は、クリスマスにちなんで「雪」という曲をその場で作った。

曲を作って寄付集め

 −被災地支援

 今、東日本大震災の被災地支援にも力を入れている。国内外でチャリティーコンサートをして、そのお金で岩手や宮城にピアノを贈るプロジェクト。僕自身、中学2年の時に自宅が阪神大震災で全壊した。当時は子どもで何もできなかったけど、今は遠くから何ができるかを考えたら、僕には音楽があった。「レクイエム」という曲を作ってネットにアップして寄付を集めたりも。少しでも笑顔になってほしいから。

 被災地ではコンサートも開いてきた。2011年秋に初めて演奏した時は泣いていた人が多かったのが、翌年の春には聞いてくれてる人の表情が違った。もちろんまだまだ大変だけど、前へ向かっている。どこまでいったら復興か、完全には区切れないけど、できることを続けたい。

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 −挑戦する年

 僕はこれまで、その時々でしたいものが見つかってかじを取ってきた。やりたいことはやりたいと明確に分かる人間。未来をつくることができる人って、課題を選んで、目標に向かうのがうまいんだと思う。今ある自分はこうで、最低限これが必要だって。

 最近は、米国から世界にどう自分を広めていこうかとシミュレーションしている。今年の抱負は「肉を切らせて骨を断つ」。大きな成果のためにはリスクを恐れず挑戦しようと。まだ「道半ば」よりずっと手前。もっともっと先に行きたい。 (敬称略)

 てんぺい 1980年、神戸市出身。本名・中村天平。大阪芸大演奏学科ピアノコース首席卒業。2006年からニューヨークに留学し、08年アルバム「TEMPEIZM」(EMI)でデビューした。09年、エッセー本「ピアニストになると思わなかった。」(ポプラ社)を出版。10年には米カーネギーホールでソロリサイタルを成功させた。同年より毎年ヨーロッパツアーを行い、東京やニューヨークを拠点に活動している。

 ※次回は23日付Spot&Place。「加賀温泉郷」の総湯を巡ります。

 

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