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popress【Human Recipe】あの人はどうやって「今」にたどり着いたか
 

初音ミク 僕の楽器 アーティスト 椎名もた

根本曲げず音楽続けたい

 ネット上で歌って踊る、バーチャルアイドル「初音ミク」。この仮想世界の人気者が歌う楽曲は、誰もが利用できる動画投稿サイトで生み出されてきた。その中で、ファンの支持を集める“プロデューサー”の一人が、椎名もた(17)=石川県小松市出身。中学3年の時から投稿を始め、今年、アーティストとしてアルバムデビューも果たした。高校を辞め、10月に単身小松を離れた彼は「音楽で食っていきたい」とまっすぐ前を見つめる。(聞き手・井上真典)

IllustrationbyKEI(C)CryptonFutureMedia,Inc.www.piapro.net

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興味本位で挑戦

−曲作りを始めたきっかけは。

 14歳の時、ネットで(動画投稿サイトの)「ニコニコ動画」にあった初音ミクの曲をたまたま見つけて。これ何? へぇ〜機械が歌うんだって、衝撃を受けた。初音ミクはパソコンで音符と詞を打ち込めば、歌ってくれる音声合成ソフト。4歳からエレクトーンを習っていたし、小中学校で吹奏楽もやって音楽の基礎知識はあったから、できそうかなって思った。

 サイトへの投稿者はアマチュアが多いけど、いい歌詞、いい曲、いい音。ラヴリーP(という作曲者)の「VOiCE」を聞いて感動した。自分もやってみたい。単純に興味本位で。エレクトーンの発表会で、中学生の時から作曲し演奏する友人がいて、彼への対抗心もあった。

−初音ミクのどこが魅力?

 ミクは楽器。人を呼んで歌ってもらうのは手間がかかるけど、パソコン上で曲を作って、歌わせるまで一人で完結できるのがいい。

 世間ではキャラクターがかわいいってことでファンも多いけど、多くの人が初音ミクを使っていろんな曲を作っている。人には歌えないようなフレーズを高速で、高音域で歌っている曲もある。この作曲者の、この曲がいいって思ってもらえるところまで聴いてほしい。

初アルバム発売

−今春、初のアルバムを発表し、素人からアーティストへ。

 曲の投稿を繰り返して、ネットではちょっとは有名になったけど、でも自信が持てなかった。「14、15歳だから評価してもらえたけど、20歳、30歳で同じことしてたらどう思われるんだろう」とか考えて。そんな時、音楽レーベルからアルバムを出さないかと声をかけられ、前向きになれた。「先を見て、長く曲を作っていこう」という担当者の姿勢に意気投合した。

 3月に出したアルバム「夢のまにまに」は、中国の戦国時代の思想家荘子の「胡蝶(こちょう)の夢」をイメージした。夢の中で流れるままにって感じ。1曲1曲じゃなくてアルバムという一つの作品がいいと思われるようにまとめた。

刺激を求め上京

−そして高校を中退。10月には地元を離れた。

 音楽で食っていくしかないって思ったから。高校に入ってすぐのころ、いろいろあってうつ病になって、学校に行けなくなった。曲作りは続けていたけど、暗い曲が多くなって環境を変えたかった。教室の机で字を書いていると、息ができなくなって手が震えてやばい、っていう時も。進級もできないし学校行っても意味ないから、辞めようって決めた。

 親には最後まで反対されたけど「何を言っても行くんでしょう」と。小松には音楽文化もないし、刺激のある東京に行きたかった。

−将来は。

 最初は誰かが聞いて感動してくれたらうれしいなーという程度で、自己満足というか、楽しいから曲を作っていた。ツイッターやスカイプでつながる仲間から意見を聞いたり、独学でこの人の曲はどうなっているんだろうって考えたりして。これからは何を伝えるか、根本をしっかりしたいなって思う。10年後も20年後も、音楽を続けたいから。

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ネット上アイドル 誕生5年 

ライブや海外でも“活躍”

 身長158センチ、体重42キロの16歳−。そんなプロフィルを持つ初音ミクが誕生して5年。今やネットを飛び出し、現実のライブや舞台にまで登場。海外進出も果たした。ゲーム業界でも盛り上がりを見せている。

 もともとはクリプトン・フューチャー・メディア(札幌市)が、ヤマハの技術を採用して開発した音声合成ソフトのキャラクター。2007年の発売以来、国内外の利用者から多くの作品が生み出され、ネット上で発表されてきた。

 ライブでは、ステージ上にコンピューターグラフィックス(CG)を投影し、立体的に浮かび上がったミクがオリジナル曲を次々と歌い上げる。米国やシンガポール、香港、台湾でも開催され、今年3月に東京であった「ミクの日大感謝祭」(セガなど主催)には1万人が訪れ、中国などでも同時中継された。そのほか今月には山口県で初のオペラも上演され、話題になった。

 ゲーム業界でも、今夏にセガから発売されたソフトが、1カ月で23万本を売り上げる好調ぶり。人気は多方面に広がっている。

 ロックバンド「サカナクション」の山口一郎さんの言葉で、感銘を受けた。自分はマジョリティー(多数派)だと思いがちだけど、やってることは自分の存在を含めマイノリティー(少数派)なんだと思う。

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 しいな・もた 1995年、石川県小松市生まれ。中学3年の時に「ぽわぽわP」などの名前で動画投稿サイト「ニコニコ動画」に曲の投稿を始めた。10代の思いを率直につづった歌詞が同年代を中心に支持され、曲の再生数は計100万回を超える。今年3月にはデビューアルバム「夢のまにまに」=写真、ワンダーグラウンド・ミュージック提供=を発売。地元高校を中退し10月から単身、東京を拠点に活動する。川崎市在住。

※次回は19日付Love&Sex。クリスマス直前企画 第1弾「北陸のデートホテル」を特集します。

 

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