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popress【Human Recipe】あの人はどうやって「今」にたどり着いたか
 

夢のピッチ 駆け抜けろ 女子サッカー選手 中川千尋

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 「なでしこジャパン」の活躍で人気が高まる女子サッカー。金沢市出身の中川千尋(25)は4年前から、岡山県美作(みまさか)市を本拠地とする日本女子サッカーリーグ(なでしこリーグ)の強豪、岡山湯郷Belle(ゆのごうベル)でプレーしている。身長150センチのチーム一小柄なMF。ボールを追うひたむきさ、相手を置き去りにするスピードを武器に、体格の不利をはねのけてきた。(聞き手・日下部弘太)

小さなMF なでしこLに挑む

 −今季はここまで10試合に出て4得点。優勝を目指すチームを支えています。

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 湯郷に来て、チームのために走ったり流れを変えるプレーが大事だと気付かされた。日本代表の宮間あや選手や福元美穂選手がいて、他にも実力のある選手が多く、最初はベンチにも入れなかった。それでも続けて、途中交代で使われたりするようになった。

 得意なのは裏への飛び出しと体を張ったプレー。自分がうまいと思ったことは一度もないんです。うまくなくても、良さを出せれば試合に出られる。私みたいに体が小さくても通用する。1年目はFWで、2年目くらいからサイドのMFです。今サッカーができていること自体が幸せで、トップレベルでやれているのも幸せなこと。

 −サッカー選手になるのは、子どものころから目標だった?

 小1のころ、通っていた学校のグラウンドで近所のお姉さんたちがサッカーをしているのを見て始めた。金沢市内のクラブチームです。サッカーに興味があったんじゃなくて、お姉さんと一緒に何かしたかったんだと思う。

 練習は週2回。でもほとんど毎日ボールを蹴っていた。負けず嫌いで、練習中に課題ができないと悔しくて。両足でリフティングできたり、インサイドやアウトサイド、頭を使えるようになるとボールを触るのが楽しくなった。中学生からは同じクラブの社会人チームで続けました。飛び抜けてうまくはなかったけど、コーチが「おまえのプレーは面白い」と自由にやらせてくれたのが大きかった。

 −高校は宮城県の強豪、常盤木(ときわぎ)学園に進みました。

 とりあえず強いところでやってみようと。常盤木はみんなうまくて、こんなとこじゃ出れねーなと思ったけど、サッカーは楽しかった。練習は週6回。日々必死で、こなすというか、気付いたら3年たっていた。日本代表の鮫島彩選手が同級生です。2年からレギュラーになり、3トップの右か左で出ていた。

 岡山湯郷Belle サッカーを通じた地域活性化を目的に、岡山県と旧美作町が2001年に設立した。03年になでしこリーグに加盟し、05年に1部昇格。昨季は4位。今季は13節を終えて首位と勝ち点差8の3位。

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 でも、高校の最後は「もうこんなに頑張らなくてもいいかな」と思う部分があった。中学生くらいから犬の美容師のトリマーになりたくて、高校を出たら金沢に戻るつもりだった。進路選択で顧問の先生に「地元に帰りたい」と言ったら、「せっかくここまで来たのに。もっと上を目指せ」と怒られた。

 結局、なでしこリーグの大原学園に入ってサッカーを続けた。その後も、当時の種田佳織監督(現湯郷Belle監督)に「やめたらもったいない」と言われて。湯郷に入ったのは、前の監督を知っていて大原学園の先輩もいたからです。

 −日中は働き、夕方から練習。苦労も多いのでは?

 最初の年はドラッグストアのアルバイト、2〜4年目は百貨店の事務、今年からは地元の新聞社でスポーツ記録を入力する仕事をしています。朝から夕方まで働いてそれから練習という生活ですが、慣れてしまえば苦痛はありません。人生の中でサッカーをできる期間は短い。職場ごとに学ぶことがあり、社会経験は今後も役立つと思う。

 −女子サッカー、盛り上がってますね。

 去年のW杯優勝から観客が多くなった。1試合で千人くらいだったのが、2〜3千人。幅広い年齢層の方が見に来てくれて、すごくありがたいですね。今の環境がどれだけ恵まれているか。地域や事務局、スタッフあってのチーム。だからこそ一生懸命な姿を見せて、ここでやらせてもらっている感謝を伝えたい。 (敬称略)

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言葉に込めた思い 

 「体が小さいので転ぶことが多いが、大きい相手でも何度も立ち向かっていく。小さくても意地を見せたい。何回こけても起き上がって、あきらめずにやる。サッカーでも人生でも、一緒だと思う」

 なかがわ・ちひろ 1987年、金沢市生まれ。小学1年のとき、市内のクラブチーム「FC・TON」(エフシー・トン)でサッカーを始める。高校は仙台市の名門、常盤木学園に進学。卒業後、当時なでしこリーグの2部に所属していた大原学園JaSRA女子サッカークラブ(現AC長野パルセイロ・レディース)へ。1部昇格の原動力となる。2008年、岡山湯郷Belleに入団。13日までのリーグ通算成績は112試合出場、20得点。身長150センチ、体重45キロ。

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人生のSpice

 【寄せ書きの入ったすね当て】 中学校を卒業して金沢を離れることになって、当時のチームメートが贈ってくれた。それからずっと公式戦のときにだけ着けて、今も使い続けています。書いてある言葉は「頑張れ」「声出しまくれ」とか。字は上からなぞったりもしたけど、だいぶ薄れてしまって。すね当てを贈ってくれたこと、みんなまだ覚えてるかな。

 

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