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popress【Human Recipe】あの人はどうやって「今」にたどり着いたか
 

茶髪棋士 常識に挑む 将棋プロ八段 橋本崇戴

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 茶髪に、胸には光るアクセサリー。将棋界で若手実力派と評されながら、奇抜ないでたちでも注目されるプロ棋士、橋本崇載(たかのり)(29)=石川県小松市出身。3年ほど前には、酒を飲みながら対局できる「SHOGI BAR」を東京にオープン、自ら接客にも立つ。厳しい勝負の世界に身を置く彼は、何を考え、どこを目指すのか。

●バー経営で良い刺激

−バーを始めてから本業も好調ですね。

 2009年末にバーをオープンさせた当初は忙しかったし、生活リズムが変わってきつかったけど、今は慣れて本業にもプラスの面しかないですね。ここで仲良くなったお客さんが山ほどいるんですよ。対局の時には、皆さんが店に集まってインターネット中継を見ながら応援してくれる。励みになっています。

 限られた時間しかないと思うと、集中して将棋の研究に取り組める。気持ち的な充実感もあります。対局したり将棋を教える以外の仕事を持つことで、視野が広がるし、刺激も受ける。自分には合っていると感じています。

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●世の中に出なければ

−そもそもなぜ、バーを始めたのでしょう。

 10代のころは高校にも進学せず、将棋ばかりやっていました。20代前半で順位戦のC級、B級とクラスを上げ、棋士としての地位もできました。でもこの世界だけで生きて、将棋しかできない30歳になるのは嫌だと。25歳の時、少しでも世の中に出なければと考えたんです。小さいことですけど、高卒認定(高等学校卒業程度認定試験)も取りました。

 飲食業はもともと興味があって。場所を借りて「さあやるぞ」という時に、棋士である武器を生かしたいと思ったんです。私も空いている時は店に出て、対局だけでなく、店番やトイレ掃除をすることもあります。

 バーは、お酒と将棋が好きという、共通の趣味を持った人が集まる異業種交流の場になっています。医師、税理士、IT関係の人も来るし、体力仕事の人も来る。昨日は富山から来た方が出張の合間に楽しそうに指していましたよ。こういう場って大事で、たとえ本業がうまくいかなくても、さまざまな世界に接すると、追い詰められないですよね。

●自分の感覚を大切に

−将棋界の反応はどうでしたか。

 バーを始めたことを周りは「よくやった」と言ってくれます。話題になることを自らつくる姿勢は、少なくとも批判されたことはありません。ここがないと私は、将棋界という狭い中で生きていくしかない。それを幸せと思う人もいますが、私はそうではない。

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−今後の目標を教えてください。

 将棋の目標は特にないですね(笑)。タイトルを取れるかどうかはやってみないと分かりませんし。今は将棋ほど打ち込めるものはないですが、これから成績が上に行こうが下に行こうが、30代に入ったら新しいことにいろいろと挑戦していきたい。

 棋士には珍しい茶髪で世間から注目されることもありますが、私に言わせれば、どうでもいいことですね。取り立てて騒ぐ方がおかしいと思っているぐらいで。私は世の中も、将棋界も、非常識なことが常識的な面を持っていると考えています。人に言われておかしいと思ったら素直に受け入れますが、世間に流されず、自分の感覚を大切にしていきたいですね。 (敬称略)

  聞き手・高橋貴仁

 はしもと・たかのり 1983年、石川県小松市生まれ。94年に棋士養成機関の奨励会に6級で入会。2001年に四段になり、プロ入りした。12年、名人戦の順位戦で最上位クラスであるA級に昇級し、現在八段。棋士活動の傍ら東京・池袋で「SHOGI BAR」を経営している。愛称は「ハッシー」。

焼酎のお湯割りを片手に、バーで対局する高橋記者=東京都内で

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酒片手に将棋談議も

記者がバーで一局

 人がせわしなく行き交う東京・池袋の繁華街。黒を基調としたシックな内装の店内には、心地よいジャズが流れていた。独学で将棋を勉強し、インターネットで時々指す程度の筆者、高橋貴仁(25)が「SHOGI BAR」を体験した。

 この日は橋本棋士は所用で時間がなく、店員でアマ有段者の中原良さん(28)が相手をしてくれた。基本的にカウンターに将棋盤を並べて対局。客が多ければ一度に何人とも指し、ハンディはつけないという。

 「えいっ」。焼酎のお湯割りをぐいっと飲み干し、初手を指してみた。対局の合間、中原さんと過去の将棋界を彩った名棋士、大山康晴15世名人や、升田幸三実力制第4代名人の伝説など、将棋ファンならではの話で盛り上がった。お酒が潤滑油になり、指し手や口が滑らかになる。

 序盤早々に凡ミスした筆者に手加減してくれたおかげか、快調な攻めが続いた。が、次第に劣勢になり、最後はにっちもさっちもいかない局面に悔しさが募った。勉強を積み、再び訪れてみたい。

※次回は4日付Spot&Place。節電の夏、涼を体感できるスポットを紹介します。

 

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