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popress【Human Recipe】あの人はどうやって「今」にたどり着いたか
 

動物が彩る 家族愛の風景 画家 西野健太郎

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 キャンバスに描かれた動物たちは写実的でありながら、親子で寄り添う姿はぬくもりに満ちている。画面ごしに伝わってくる濃密な息遣い、温かなまなざし。金沢市在住の画家、西野健太郎(31)は絵を通して、家族の絆、命の尊さを訴える。「描くことで人の役に立ちたい」。3月の震災以降、作品に込める思いはさらに強まっている。

震災、絆…祈り込め描く

−動物たちの優しい表情が印象的です。

 オオカミもフクロウもウサギも僕が描く動物たちは皆、家族のために懸命に生きている。親は子を命懸けで守る。厳しい世界で生きるすべを教える。そんな営みを表現することで人間にも通じる家族愛を感じ取ってもらえたらと思います。

「祈り」木炭、パステルペーパー、神代杉 (C)Kentaro Nishino

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 絵を買ってくれた人の中には、家族の人数分の動物が描かれた品を選び、1匹ずつ名前を付けてくれている人もいるんですよ。そんなふうに周りの人を大切に思う気持ちや自然保護への関心が、絵をきっかけに生まれたらうれしい。2年半前に結婚し、僕自身、家族の存在を意識するようになったこともあるかもしれません。好きな絵を描けるのも妻の支えが大きいですから。

−動物を描くことにこだわる理由は?

「木漏れ日」アクリル、キャンバス、桐の木 (C)Kentaro Nishino

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 現代社会は、虐待とか孤独死のニュースが絶えないことでも分かるように、親子や家族間の思いやり、愛が薄れてきているように感じます。3月に震災があって、あらためて人と人との絆とか結び付きを考えた人もいると思いますが、愛情深い動物の姿から学べることも多いんじゃないかな。

−作品はどのように描くのでしょう。

 エアブラシを使って、水で薄く溶かしたアクリル絵の具をキャンバスに塗り重ねていきます。車の塗装などに用いる道具ですが、立体感が出て写実的になる。ただ、一度描き始めたらやり直しがきかないし、吸い込まないようにマスクを着けなきゃならない。画家で使う人は少ないですね。

 動物の形や背景の植物は、自分で作った型紙を当てて上から色を重ねる。大作だと、この型紙を40〜50枚作るだけで1週間。毛並みは絵筆で描きますが、1本の毛につき5〜6回はなぞって柔らかい印象を出す。完成に数カ月かかります。

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 日本の四季を意識して、並べた時に季節感が出るように1枚の絵に使う色数は抑えています。動物の個性も表現しようと、最後に目に光を入れる瞬間は、命を吹き込むようで一番緊張しますね。

−画家になるきっかけは。

 高校卒業後、芸術を病気の治療などに役立てる心理療法の「アートセラピー」に興味があり、ハワイに留学しました。この時、エアブラシでハワイの風景を描いた作品を見て、独特の色使いに感動して。「絵で人を元気づけられるかもしれない」と思ったんです。

「もうすぐ春」アクリル、キャンバス、栃の木 (C)Kentaro Nishino

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 それで、米国サンフランシスコの美大へ。卒業後も向こうに残りたかったけれど、絵も売れず、ビザが切れてしまった。24歳で日本に戻った当時は「就職しなくては。でも、留学までしたのに…」と焦る気持ちが募りましたね。翌年の2005年、留学時代から描いていた絵で賞をもらうことができて道が開けました。

−最近は間伐材を使った作品も。

 白山(石川県)で林業の厳しい現状を聞き、間伐材を使うことで見た人が自然に興味を持ってもらえたら、という気持ちもあり、始めました。木を選び、年輪に沿ってドリルや電動のこぎりで削ってフレームを作る。絵は、木が何十年もわたって見てきた動物の姿に思いをはせ、イメージを膨らませています。

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 震災後、間伐材の活用やチャリティーなど画家としてできることはないか、より考えるようになりました。子どもたちの前で木炭を使って即興で描く「ライブアート」もそんな気持ちから。人や動物を大切に思う心や自然保護への関心が広がればいいなと思いますね。 (敬称略)

 担当・奥野斐

人生のSpice

【国際児童画展の入賞メダル】 小学生の時から絵を描くのが好きで、数々の国際児童画展に応募した。メダルは、中2の時に「インド・シャンカール国際児童画展」で最高賞に次ぐネール賞を受賞した時の記念品。この時は世界約100カ国の10万点余りから入賞作に選ばれ、その後の自信につながった。

にしの・けんたろう 1980年、金沢市生まれ。石川県立金沢二水高卒業後、ハワイ大留学を経て、2003年に米サンフランシスコのアカデミー・オブ・アート大を卒業。帰国後の05年、若手アーティストの発掘や育成を目的に創設された「第2回日本アートアカデミー賞」で準グランプリ受賞。原画を手掛けたパズルなどの関連商品は、国内だけでなく、北米や欧州、ロシアなど世界数十カ国で発売されている。

 

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