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popress【Human Recipe】あの人はどうやって「今」にたどり着いたか
 

イケてる陶芸 狙うは天下 陶芸家 青木良太

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 陶器とは思えないような金属風の光沢。薄く、真っ白な器は繊細でいて、確かな存在感がある。岐阜県土岐市に工房を構える陶芸家の青木良太(33)=富山市出身=は釉薬(ゆうやく)を土に混ぜる独自の手法で、斬新な作品を次々と送り出してきた。国内外で名前が知られるようになった今も、「陶芸と心中する」覚悟で土と向き合っている。(担当・奥野斐)

遊び一切やめ「土と心中」

−独創的な作品

 大学卒業後、美濃焼の産地として知られる岐阜県多治見市の陶磁器意匠研究所で陶芸の基礎を学びました。熱中したのが、釉薬の研究。普通は陶器を作る時に成形した土の表面に掛けるものですが、材料の土に混ぜてみたらどうなるかなって。0.01グラム単位の薬の調合と焼き具合で微妙に色合いが変わるんです。意外な色が出る面白さにはまりました。

 もともと、一般的な陶器に見られるピカッとした光沢が嫌いで。でも、釉薬を掛けないと表面がざらついてしまう。僕は金や銀が好きなので、金属みたいな色合いとか、陶器っぽくない質感の作品を作りたかった。自分が欲しいものを形にしたくて、試行錯誤しながら何万種類もの薬を試しました。

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−陶芸との出合い

 20歳の時、「将来はどうしよう」と真剣に考えた。大学では経営戦略の勉強をしていましたが、仕事にするなら好きなことをやりたいと、手当たり次第、興味のあることに挑戦した。服やアクセサリー作り、レゲエバーや美容室のアルバイト…。でも、何か違った。

 そんな時、近所の雑貨店で偶然、渋い湯飲みを見つけたんです。ごく普通の白い陶器だったけど「渋いじゃん」って、すごくひかれて。陶芸教室に通い、初めて土に触った瞬間「これしかない」という衝撃がありました。

 陶芸の土が一番心地よく、しっくりきたんですね。「陶芸家になりたい」。調べると、当時住んでいた愛知県でも瀬戸、常滑など各地の窯業地には陶芸の基礎を学べる研修所がある。数カ月間デッサンから猛勉強し、受験すると、多治見を含め3カ所に受かりました。

−「心中する」覚悟

 ところが、喜びもつかの間、すぐに力の差を見せつけられた。周りは大学で陶芸を勉強してきた人ばかりで、専門用語だらけの会話についていけない。「陶芸と心中するつもりじゃないとダメだ」。その時決心し、遊びは一切やめました。

 親の支援もなく、生活も大変だった。富山にいる親からは「もう知らんちゃ。勝手にしられ!」って放り出された。2年間の研究生時代は、夜はアルバイトをしながら、寝る間も惜しんで陶芸に夢中になっていました。最後は東京での個展も決まり、卒業後、多治見の隣の土岐市に工房を構えて独立しました。

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−若手のつながり

 僕は「陶芸の日本代表になる」と目標を立て、作業場の壁に日の丸を掲げています。髪の毛が邪魔だからターバンを巻き、ヒップホップを「爆音」で聞きながら作業する。「陶芸家っぽくない」と言われますね。

 若手で、面白い作家もいっぱいいるんですよ。彼らの作品を多くの人に知ってもらいたいし、陶芸家同士もっと友達になって、切磋琢磨(せっさたくま)した方がいい。2008年から始めた若手陶芸家の交流イベント「イケヤン☆」も、そんな思いがきっかけです。

 毎夏に全国の同世代の陶芸家がマイカップを持ち寄り、語り合う。昨年からは選抜メンバー20人による「イケヤン☆展」も開けるようになりました。先月、北陸で初めて金沢で開催できて、うれしかったですね。

−これからの夢

 僕の頭の中には、作りたいものがたくさんあるんです。今までに誰も見たことがない、きれいなものを生み出したい。「陶芸にもこんなにおしゃれな作品があるんだよ」と、世界中の人に伝えたいから。そして「あの平成の時代に、青木良太という陶芸家がいた」と言われるぐらいの作家になりたいですね。(敬称略)

青木さんの作品を見たい人は

◆11月12〜27日 富山市山室の「CARGO(カーゴ)」で個展を開催。初日の12日は午後6時からオープニングパーティーもある。

◆11月23〜28日 ナゴヤドーム(名古屋市)で開催される「ドームやきものワールド」ではイケヤン☆展のブースが設けられ、作品が展示される。

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人生のSpice

【ヒップホップ】 作業中にも聞いている。中でもZeebra(ジブラ)の「Street Dreams」は、スターになるまでの歩みをつづった歌詞に共感できる部分が多い。いつも大音量で流しているから、作業場から出てきた僕を見た下校中の小学生が「出た〜!」って驚いて尻もちをついたことも。

あおき・りょうた 1978年、富山市生まれ。愛知県の大学を卒業後、岐阜県の多治見市陶磁器意匠研究所を経て2002年、同県土岐市に工房を構える。主な受賞歴は、工芸都市高岡クラフトコンペティショングランプリ(05年)、台湾国際陶芸ビエンナーレ優選(08年)など。08年から全国の若手陶芸家による交流イベント「イケヤン☆」を主催。名前は「イケイケヤング陶芸家」の略で、「どんなに今かっこいい名前を付けても、100年後はダサくなるから」。

 

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