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popress【Human Recipe】あの人はどうやって「今」にたどり着いたか
 

”山ガール”張り切る 「白山百膳」 旗振り役 安本知子

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 「山ガール」という言葉があるように、最近は自然や山が好きな若い女性も多い。だが、山間で暮らし、地域おこしにまで携わるとなると、その数はぐっと減る。地元の石川県白山ろくで、郷土料理の魅力を広める取り組み「白山百膳」の旗振り役を務める安本知子(32)は、そんな一人。時にはパンフレットのモデル、ある時は大都市でPR活動もこなしたりと、全力で働くその原動力は何なのか。(担当・福田真悟)

料理も寺も 地元のために

 −昔から地元に愛着があったんですか。

 山も地元も、もともとは大嫌いだったんですよ。高校を出てしばらく鶴来でカフェを経営してから、金沢に出て仕事をしていました。そのころは高いバッグを買ったり、キラキラしたものをほしがったりしていましたね。

 仕事は、イタリア料理、中華料理のお店で調理などを担当していたんですが、体を悪くしてしまって。長時間の立ち仕事ができなくなったので地元に戻り、旅館の手伝いをするようになりました。

 そのうち、昔は分からなかった山や自然の良さに気付き始めました。「山で商売やっていこう」との気持ちが芽生え、母の経営していた「ペンション中宮」を引き継ぎました。

 −なぜ、地域おこし?

 2007年12月から白山市の山ぎわの旧5村の商店主らでつくる「白山商工会」に加わりました。初めはペンションについて相談していたんですが、しばらくして商工会側が「若い人のアイデアを取り入れたい」と広報を任せてくれて。

白山百膳 ほんの一例

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 料理が好きだったこともあり、翌年、地元の料理を売り出す「白山百膳」の取り組みを始めました。これまで、みんな家族経営で手が回らず、うまく広報できていなかったと考え、PR方法を変えました。洗練された山の健康ご飯という特徴をはっきり打ち出そうと、パンフレットに載せる料理は、フードコーディネーターについてもらってきれいに盛りつけしたり、プロの写真家に撮ってもらったりしています。

 −周りに年配の方が多い中、苦労は。

 ここは、かつてあったスキー場も閉鎖され「何やってもだめ」とあきらめの声もよく聞きました。それに対し「何もやってないから来ないだけ」と反発すると「お前みたいな若いもんに何が分かる」って怒られたり。今まで通りでいいと考える人と、ぶつかることもありました。

 でも、私は昔からすごいがんこ。自分が正しいと思うところは譲らない。「伝統を守る」ということは、味を守るだけでなく、それを後世に伝え、残すことだと思っています。

 白山ろくは水がおいしく、山の幸を使った素晴らしい伝統料理もあるけど、それだけでは客は来てくれない。現代風のアレンジを施した料理で、今のお客さまを引きつけて、それから伝統的な料理を売り込むという方法でもよいのではないかと思います。

 −地元を良くしたいとの思いはどこから。

 おじいちゃんが地元で寺のお坊さんをしているんですが、小さいころからすごくかわいがってくれて。お仕置きで蔵の中に閉じこめられていたのを助けてくれたり。そのおじいちゃんが継いでほしがっていたし、寺は地元の人にとって大事な場所。継ぐことを決め、小松の「本光寺」で修行を始めました。

 しばらくして、蔵の中を掃除していた時のことです。おじいちゃんより上の会ったこともないじじ、ばばの衣類を整理していると、どこからか声が聞こえてきたんです。

 −声?

 「わしらのことを忘れんでくれ」って。本当に聞こえたんです。それで、考えました。先祖代々からのつながりをなくしていいのかと。日本の中宮という地に生まれた自分にしかできないことだし、「よしやってやろう」と、地元での活動に力を入れる決め手になりました。

 過疎が進み「そのうち猿の街になってしまうぞ」と言われることもありますが、「私、一人でも残ります」って返すんです。本当にこの場所を愛していますから。そういうと「早く結婚せい」ってしかられるんですけど。

 僧侶の仕事も、広報活動も、私にとってはつながっている。一人一人が、地域活性化に携わっていくという気持ちになれるよう、これからも頑張っていきたいです。 (敬称略)

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人生のSpice

【住職】 本光寺の多田真住職がかけてくれた「あなたはあなたのままでいい」という言葉。僧侶といえばきちっとしなくちゃというイメージがあり、最初は不安でしたが、この言葉でやっていけそうな気持ちになれました。

【生き方】 25歳のころ「自分はいったい何で生きなくてはならないんだろう」と疑問を感じる瞬間があった。そんな時、稲盛和夫さん(日本航空会長)の「生き方」という本に出会って。「感謝の気持ちを持って生きる」ということを教わり、救われました。

【自然】 どんなに疲れていても、きれいな月を見るだけで疲れが取れる気がする。自然は、私に元気を与えてくれます。

 やすもと・ともこ 1979年、石川県吉野谷村(現白山市)に生まれる。鶴来高校を卒業後、鶴来で喫茶店を営んだり、金沢市の料理店で働いたりしてから、2007年に地元に戻る。現在、白山市内で「ペンション中宮」のオーナーを務めつつ「白山麓賑(にぎ)わい創出事業」の広報担当として「白山百膳」のPRに力を入れる。

 

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