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popress【Human Recipe】あの人はどうやって「今」にたどり着いたか
 

こびと ほら、そこに イラストレーター なばたとしたか

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 草むらで、あるいは家具の隙間で何かの気配がしたら、それは「こびと」かもしれません−。不思議な設定の絵本がシリーズ4作で約80万部を売り上げているイラストレーター・なばたとしたか(34)=金沢市出身。子どもから大人まで幅広く人気を集める「キモかわいい」キャラクターは、どのように生まれたのか。なかなか脚光を浴びない時期を経て29歳で絵本デビューし、成功を収めるまでの道のりに迫る。(担当・福田真悟)

怖かったこと 形に

 −変わった作風の源泉

 昔から怖がりだったんですよ。父の実家の輪島市に小さいころ夏休みのたびに行っていたんですけど、すごい怖くて。前が海で後ろが山みたいな。

 物音にも敏感で、天井のネズミのタタタタっていう音や冷蔵庫のブイーンっていう音も怖かった。気を紛らわすため、変な生き物がその音を出してたら面白いなってずっと思っていて、それを形にしたのがこびとです。

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始めはグレムリン

 −絵を描き始めたのはいつごろから

 小学1年生のころに初めて見た映画「グレムリン」にすごく衝撃を受けて、これをいつか上手に描きたいな、というのが始まり。ジャンプの漫画や、三国志の武将の模写もしていましたね。

 ただ中学ぐらいになると絵を描くよりもスポーツしてた方が好きになり、全く描かなくなりました。中高はテニス部でした。高校卒業の間近「そういえば昔、絵好きだったな」と思い出しデザイン学校へ。その時は別にデザインに興味が無く、課題もろくにやらず絵ばかり描いていた。「やればできるのになぜやらないんだ」とよく怒られていました。

 −卒業から絵本出版までの時間

 18、19歳のころに卒業した後、額縁屋でバイトしながら絵を描いていた。そこに画廊もあって、作品を置かせてもらっていました。昔から変な自信だけはあり、「いつか声がかかるだろう」と思ってたけれど、全然声もかからず。「あれ、おかしいな」って気付いたらもう26歳だった。

 これはまずいと思い、東京のアートイベントに作品を出し始めました。そんな時に毎日新聞の人が声をかけてくれて。半年間、一こま漫画みたいなのを(毎日新聞の)「weeklyくりくり新聞」で連載した。初めてお金をもらった仕事。それで変な自信に拍車がかかり、調子に乗ってバイトをやめてしまいました。そうしたら地獄の始まりですよ。

「こびと大百科」(2008年10月)長崎出版、1500円+税

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「いーとんの大冒険」(2007年12月)長崎出版、1400円+税

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「こびとづかん」(2006年5月)長崎出版、1500円+税

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3年間ニート状態

 −地獄の日々と、その終わり

 29歳までの3年間、家で絵を描いているだけでほぼニート状態。時々ウエディングボードとか作ってましたけど年収18万円ぐらい。親戚や友達に「いつまでやっているんだ」みたいなことをけっこう言われていました。

 そんな時、書店・雑貨店のヴィレッジヴァンガードで変な本を見つけて。「こんな本を出す出版社なら自分のも出してくれるのでは」と電話をし、出会ったのが、今も一緒にこびとを作っている編集者さん。

 自分で作ったこびとの小冊子を渡したんですけど、編集者さんも最初どうしていいのか分からなかったようで。娘さんが気に入り、学校に持って行ったらみんな喜んだということで、出版を決めてくれたみたいです。

自分の絵が大好き

 −絵を続けた理由

 何なんでしょうね…。実は絵を描くこと自体はそんなに好きじゃないんですよ。でも自分の絵は大好き。きっと一番のファンです。なばたとしたかの作品をたくさん見たいから、僕にしか描けないから続けるしかない。

 あと周りの雑音に負けて就職したら、後悔するじゃないですか。やめなければ負けじゃないなって。一番よかったのが、親が何も言わなかったんですね。家から追い出さなかったのがすごいな、って。僕がもし親だったら、家にずっといて訳の分からない絵を描いていたら不安ですよ。「またそんな似たような絵ばっかり描いて」とかぐだぐだ言うけど、結果的には応援しているのが分かったんで。感謝してます。

想像力駆り立てる

 −作品に込める思い

 僕らが子どものころって、いかがわしいUMA(未確認生物)とかUFOの本とかあったじゃないですか。雪男が木陰からのぞいている写真とか、すごいドラマを感じる。

 今の小学生は、そういう想像力を働かせるものってないんじゃないかと。僕は、そんな本をぼろぼろになるまで読んでいたんですが、今サイン会をやると、ぼろぼろになった「こびと大百科」を子どもたちが持ってくるんですよ。やっぱり世の中の子どもって想像力を駆り立てるものに熱中するのは昔と変わらないんだな、と思う。こびと自体は何の役にも立たないけど、そこから動物とか植物とか、いろんなものに興味を持つきっかけになればいいなと思います。

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 1977年、金沢市に生まれる。小2のころ石川県鶴来町(現白山市)に引っ越す。金沢の専門学校でグラフィックデザインを学ぶ。2006年に絵本「こびとづかん」でデビュー。初版は3000部だったが、口コミで売り上げを徐々に伸ばし、ロングセラーに。「こびと」シリーズ4作で累計約80万部(1日現在)を売り上げ、グッズ、DVDなど関連商品も数多くリリースされている。東京都在住。

 

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