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popress【Human Recipe】あの人はどうやって「今」にたどり着いたか
 

生音 心癒す ギタリスト 石川征樹

 テクノロジー全盛の時代に、生音のギター一本で曲を奏でる。金沢市のライブハウスで毎月一回、完全即興ライブに臨んでいるギタリスト石川征樹(31)。美しいメロディーと、情熱的な演奏が生む音の世界は、その活動スタイルと同じく独特だ。若いころの「やりきれない思い」から自らを救うため、始めた音楽。その力は、震災がもたらす心の痛みを癒やしうると、信じている。(担当・福田真悟)

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アコギ1本 全部、即興

 −ギターを始めたきっかけ

 中三のころ、友達から教えられた尾崎豊ですね。「15の夜」とか、あの辺が好きだった。若い時はみんなそうだと思うけど、日々「何でこうなんや」っていうやりきれない気持ちがあった。親がいちいちうるさかったり、授業で教科書を読むだけの先生がいたり。

 買ったのは、一万円ぐらいのエレキギター。家の古いクラシックギターも弦を張り替えて、弾き語りした。

 高校時代にはニルヴァーナやソニックユースといったノイズのあるパンク系をよく聴いた。「社会への反抗」が共通点ですね。エレキの音を思いっきりひずませて弾いたりしていると、癒やされる感覚があり、ずっと弾いていた。それまでよかった成績はどんどん悪くなったけど。

 −高校時代からバンド活動

 家だと大きな音を出せないので、学校でやろうと思ったが、高校に軽音楽部がなくて。「作りたい」と持ちかけると、学校側は「署名で十人集まったら」という条件を持ち出してきた。同級生に無理やり書いてもらい、何とか集めました。

 同級生と組んだバンドでやっていた音楽は、ハードコア。リフ(ギターのフレーズ)を弾きながら、ひたすら叫ぶっていう。ライブハウスで初めてやったときは、緊張で手も足も震えて。でも、慣れてきたら、学校生活では感じられない気持ちよさがあった。

 卒業後、進んだ専門学校でも、ほとんど勉強せず。このころジャズとかボサノバ、エレクトロニカ(電子音楽)にも目覚めて。ジョン・コルトレーンの「アセンション」っていうアルバムは完全フリーの演奏で、すごく感動した。さまざまな音楽を聴き、今の土台となるいろいろな奏法を独学で吸収した。

 −働きながら、音楽活動を続ける

 最初は富山で運送の仕事をしていたが、その後、母親が勤める介護の職場で、たまたまギターを弾いたらすごい反応があった。面白いかもと思って介護士の資格を取り、福祉施設で働き始めました。

 認知症の方をお世話しているんですけど、家族のように一緒に生きている感じ。音楽にも影響を及ぼしていると思う。ギターも弾くんです。昔の曲、「ふるさと」とか。そういう曲をやると落ち着きますね。

ジャンベをたたく妻の藍さん

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 −クラシックギター一本というスタイル

 四、五年前にバンドが解散した後も、ギターを弾いていたい、というのは変わらずあって。ライブハウスで一人で弾いたり、いろいろなミュージシャンと共演したりしました。

 一時期はパソコンを使おうとした時期もあった。でも、なんか違う。混じりけなく自分の音楽を表現しようとしたら、ギター一本だけで成り立つ。自分のテクニックを超えるような、肉体的にできないものはいらないというか。アナログな考え方かもしれないけど。

 最初は、曲の中で何か表現しようとしていたけれど、だんだんとそれもなくなって。毎月一回、金沢でライブをやっているんですけど、全部、即興。「次はこう、次はこう」って頭の中に浮かんだメロディーをひたすら形にしていくのが、今は面白い。

 −東日本大震災のような理不尽な悲劇に、音楽は救いになるか

 確実になると思う。自分にとって、言葉にならない感情を救ってくれたのが音楽であり、ギターだった。ストレートな言葉とかはあんまり響かない。演奏する時は、聴く側に何か伝えようとするのではなく、ただ一押しできれば、という思い。そんな言葉を超えた感覚を大切にしている。  (敬称略)

 【妻の藍さん】4年前、バックバンドで一緒になり知り合った。ジャンベ(太鼓)の芯のある演奏が印象的で。考え方が共有できる部分が多い。住んでいる古民家をイベントができるように改装したのは彼女のアイデア。

 【本】クリシュナムルティというインドの哲学者の「瞑想(めいそう)」という本は、一時期ずっと持ち歩き、暗唱できるほど。彼の考え方は即興音楽に近いと思う。

 【ライブハウスのオーナー】「メロメロポッチ」オーナーの熊野盛夫さんには、参考となるアドバイスをもらった。全部即興で、アンプもつながないほうがいいとか。基本的には「何をやってもいい」としか言われないんですけど。

「即興演奏は、『時間』の感じ方で生まれる音楽は違う」と石川さん

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 いしかわ まさき 富山市生まれ。地元の小中高を卒業し、金沢市内の専門学校へ。6人組バンドの解散後、2009年に「地平線」、10年にはピアニスト佐野観さんとの即興演奏をおさめた「共鳴」と、2枚のアルバムをインディーズから発表。毎月第4火曜に、メロメロポッチ(金沢市)で完全即興ライブを実施。同市内の自宅で音楽イベントを開くことも。音源は、音楽サイト「マイスペース」で「石川征樹」と検索。

 

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