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耳をすませば…脳がとろける ASMR

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 イヤホンから「ざわざわ」「ごりごり」と音が流れると、まるで頭の中で音が鳴っているようで、首筋がゾクッとする不思議な感覚−。今、動画投稿サイトで「ASMR」動画が話題になっている。音の正体は、マイクの前でさわさわと綿棒を動かしたり、ひたすらせっけんを削ったりするだけ。でも、その音で「脳がとろけて癒やされる」らしい。マニアックな世界と思いきや、動画の中には数千万回も再生されるほど人気だ。ASMRって、一体何なの? その魅力に迫るとともに、記者も動画作りに挑戦した。 (堀井聡子)

 

はとむぎさん ASMR動画を投稿するアーティスト。動画はYouTubeで数百万回再生されている。

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動画を制作 はとむぎさんを直撃!

特殊マイクで音に臨場感

 どうすれば脳がとろけるような動画を作れるのか。ASMR動画を専門に制作する「ASMRtist(エーエスエムアーティスト)」の中でも有名な日本人女性「はとむぎ」さん(活動名)を直撃した。投稿を始めた2015年当時は大学3年生という以外、職業、年齢、出身地全て非公開、顔出しNG。9月に初の音声CD「おとあつめ」を発売するということで、特別に取材の許可を得た。

 「マイクが左右に分かれたバイノーラルマイクを使うと、その場に自分がいるような音が録れます」。動画の中では耳をくすぐるようなささやき声だが、取材ではハキハキと話してくれた。当初は、左右のイヤホンジャックにマイクをはんだ付けして、自作マイクで録音していたという。

 経験上「低い音の方が聴いていて落ち着く」そうだ。「例えばサイズが違うペットボトルを見るとつい『大きい方が低い音が出そう』と考えてしまいます」と笑う。日常生活の中でいつも音探しをしているからこそ、多くの人の「脳」に響く音が作れるのだろう。

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CD「おとあつめ」来月発売

 はとむぎさんの音声CDアルバム「おとあつめ」が、9月19日、ポニーキャニオンから発売される。耳かき、泡、ブラシなど全28音源をCD用に録り下ろした。税込み1944円。

 

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お菓子と新聞で実際に作ってみた

 はとむぎさんは「誰でも簡単に動画を作れますよ」。ならばわたし、編集長・堀井聡子記者(28)も「ポプレス版ASMR動画」を作ろうではありませんか!

 アイテムは金沢の石川屋本舗の銘菓「かいちん」と、新聞紙を用意した。かいちんは金沢弁でおはじきのことで、砂糖と寒天で作られた色とりどりの干菓子。金沢土産に人気だ。試しに、はとむぎさんに音を出してもらった。

 かいちん同士をカチカチとぶつけてみたり、こすり合わせてみたり。「いい音の塊ですね。物を食べる動画も人気ですよ」と勧めてくれた。

 

 次に新聞紙。「新聞は無限の可能性を秘めています」とにやり。表面をなでたり、めくったりした。「紙を横方向に裂くと、音が左右に移動しているように聞こえる」。次々アイデアが出てくる。これなら初心者の編集長でも作れるかも。

 早速、制作に取り掛かった。動画が撮れるカメラを借り、会社の一室にこもる。おじさまの写真記者に撮られると照れるので、飲み仲間で写真担当の篠原麻希記者(33)に協力をお願いした。

 「録画ボタンってどこ」という編集長の戸惑いから始まり、スマホで収録風景を撮ってくれた押川恵理子記者(39)は、ひそひそしゃべる声を吹き込む様子を見て「なんでささやき声なの」と困惑していた。どうにか収録が終わり、動画編集ソフトを使って、5分程度の動画2本が完成した。

 

音フェチ 首筋ゾクッ

ASMRって何? 先端大助教 木谷さんに聞く

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 ASMRとは「Autonomous Sensory Meridian Response」の略。直訳は「自律感覚絶頂反応」と言い、何かを見たり聞いたりして心地良さを感じたり、ゾクゾクしたりする感覚を指す。専門用語のようだが、2010年に米国の一般女性が名付け、インターネットで広めた。

 この反応を面白がった人たちがネットで動画を投稿し、世界中に広まった。日本では2年ほど前から知られるようになり「音フェチ」とも表現されている。

 動画は、耳かきやはさみといった日用品、ささやき声など身近な物で音を立てるのが特徴。聴き続けると、川のせせらぎ音を聴いているように、妙に癒やされる。特にイヤホンやヘッドホンで聴くと、頭の中で音が鳴っているようで首筋がゾクッとする。

 なぜ反応が起きるのか。聴覚心理に詳しい北陸先端科学技術大学院大助教の木谷俊介さん(35)に聞くと「わからない。昔から反応自体はあったが、名前が付いたのは最近でほとんど研究されていない。なぜ首筋がゾクッとするかも不明」と言う。

 ただ「イヤホンやヘッドホンで聴くと反応が起きやすい」。耳全体のうち外に出ている部分は「耳介(じかい)」と呼ばれ、「音が頭の外で鳴っている」と知覚する役割があるとされている。しかしイヤホンなどを使うと音が耳の中に直接入るため、頭の中で鳴っているように聞こえるのだ。

 木谷さんは「音が頭の中で響いていると感じることで、音に包まれている感覚になりリラックスできるのではないか」と推測した。

ほりいの深ぼり

 今月からポプレスの編集長に就任しました、堀井です! 女性誌の街頭インタビューで「はまっている」という人の声を読み、ASMRを知りました。

 「スマホでも撮れますよ」と言ってくれたはとむぎさん。とはいえご自身は動画のために、実家の自室に数十万円かけて防音室を作ったそう…さすがです。

 

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