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popresspopress【特集】
 

折り紙 折って開く未来 

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 ときには遊びで、ときには願いを込めて作る折り紙。宇宙開発や建築、医療の分野でも国際的に研究されています。最先端の学術研究から見えてくるのは折り紙の奥深さ。ポプレス5周年を記念して、この紙面も折り紙にしました。折り紙に込めた思いは感謝です。

太陽パネル 仮設 最小の力で

宇宙建築

 棒の両端に圧力をかけたら、弓なりに曲がる。では、平らな紙に周囲から圧力をかけたらどうなるのだろう。1966〜67年に米航空宇宙局(NASA)で研究していた三浦公亮(こうりょう)さん(85)は「解けたら面白そうだ」と考えた。11年ほど後に「ミウラ折り」と呼ばれる原理を発見する出発点だ。

 円筒は、きれいにつぶすと表面に三角形の規則正しい凸凹ができる。ロケットの強度を考えるのに使われる原理だ。その応用をNASAで研究した三浦さん。好奇心は平面に向いた。

ミウラ折りの模型を手にする三浦公亮さん=東京都町田市で

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 帰国後、解明に本腰を入れたが、難航した。空中に浮いた真っ平らの紙でもないと理想的な実験はできないから。円筒の場合の規則性をヒントにミウラ折りを予測するまでにおよそ3年。東京大のスーパーコンピューターで実証するには、さらに8年ほどかかった。

 導き出されたのは、平行四辺形が互い違いに折り重なる形だ。三浦さんは「最小のエネルギーで変形したのがこの形。折り目だけ変形すればいいから」と解説する。

 出っ張りの頂点の交差は山折りと谷折りが三対一。くしゃっと丸めた紙のしわも、よく見れば同じ交差ばかり。三浦さんは「このしわを見ただけで原理に気づけなかったのは、まだまだだね」と笑った。

 ミウラ折りは折り畳みがしやすいから、太陽光発電衛星の巨大なソーラーパネルを宇宙で開くときなどでの活用が期待される。

ミウラ折りを発展させた筒を持つ舘知宏さん=東京都目黒区の東京大駒場キャンパスで

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 東京大大学院の舘知宏助教(33)はミウラ折りを立体に発展させ、仮設建築物に生かす可能性を見いだした。9月には、平行四辺形の面が互い違いに並ぶ筒を二つ組み合わせることで、一方向の伸び縮みは簡単だが、それ以外の方向には変形しにくい構造になったと発表した。

 筒の端に力をかければ、全体が均等に伸び縮みするのも特徴だ。伸縮の動力は少なくて済み、実用的。ぺたんこに折り畳めて、展開すればアーチ形の屋根になる構造物の模型も作った。「薄くコンパクトにできて、展開もしやすいことと、変形しにくいことを両立させ、折り紙の利点を最大限に生かせる形はできた」

 子ども時代から折り紙好きで、金属を立体的に折る展開図を描くソフトなども編み出した舘さん。国内外の研究者との共同研究も多く、「いろいろな分野と連携できるのが折り紙の面白さです」と語った。

細胞自ら 折り上がると 直感

再生医療

研究室の顕微鏡に座る繁富香織さん=札幌市の北海道大で

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 一辺50ミクロンの極小の四角いプレートがパタパタと折り畳まれ、立方体に組み上がった。別の五角形のプレートはボールのような立体になった。プレートを折るのは細胞の力だ。名付けて「細胞折り紙」。北海道大の繁富(しげとみ)香織学術研究員(41)が医療での活用に向けて研究している。

 繁富さんは英国・オックスフォード大に留学中、傷ついた血管の壁を補う器具「ステントグラフト」を研究した。棒状のまま患部に運んだ後、ワイヤを使って筒状のシートを開くのが一般的だが、ワイヤがシートを破るケースも。折り畳みを生かし、ワイヤが不要な仕組みを考え、印象的な「折り紙ステントグラフト」という名前を使い始めた。

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 実際に形状記憶合金で作ってみたが硬いため、血管を傷つけてしまう。もっと生体に近い材料がいい。その究極は細胞だ。細胞の収縮力に着目し、プレートの折り目に載せて自動的に折り畳む仕組みを開発した。

 その活用候補の一つが再生医療だ。細胞は平面上で培養するのが一般的だが、細胞折り紙を使えば、好きな形で立体的に培養しやすい。四面体で培養すると骨になりやすい細胞もあり、さまざまな体の組織を効率的に作れる可能性がある。繁富さんは「立体の方が生体に近い。いろんな利用法が考えられます」と期待する。

 欧米では近年、折り紙をテーマにした研究向けの補助費が設けられ、「Origami」をタイトルにした論文が増えたという。「折り紙の経験が多い日本人だからひらめくこともあるはず」と繁富さん。札幌市内のレストランのインテリア作りなどで折り紙作家と連携し、感性も磨いている。

7〜9日・金沢で研究会

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 7日から3日間、金沢市で折り紙を生かした学術研究の発表イベントが相次いで開かれる。

 一つは国内の研究者数十人が集う「折り紙の科学・数学・教育研究集会」。2006年12月の初開催から今年6月までの18回、会場はすべて東京だったが、7日に金沢市香林坊の石川県教育会館で開かれる。北陸新幹線金沢開業が初めての地方開催を後押しした。

 8日は北陸先端科学技術大学院大のシンポジウムが金沢市南町の北国新聞ビルであり、三浦さんや舘さんらが講演。同時開催の展示会「科学する折り紙」は9日までで、コンピューターソフトで展開図を導き出した金属の折り紙や折り目が曲線の作品などを展示する。

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 図に従って、この紙面を折ってみてください。箱の側面に言葉が浮かび上がります。箱の底はメッセージを書くスペースに。小物やお菓子を添えたりして、大切な誰かにプレゼントしてみませんか。感謝の輪が北陸に広がりますように。

 担当・福岡範行

 

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