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副業が開く世界 夢の数は縛らない 成長を企業に還元

パソコンで作業をしながら、和やかな雰囲気で話すコネルのメンバー=いずれも東京都中央区の馬喰町FACTORYで

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 国が進める「働き方改革」では副業や兼業を促進しており、働く人が主体的にキャリアを築く時代が来ている。一生のうち、一つの企業で働くだけではもったいない?

 複数の仕事を掛け持って夢を実現させる人や、副業で新たなスキルを磨く若者を取材し、これからの仕事観を探った。 (督あかり)

CASE.1:スタートアップ企業

 東京、金沢、ベトナムに拠点を持つクリエーティブとテクノロジー分野の会社「Konel(コネル)」。新しいビジネスモデルで急成長する「スタートアップ企業」だ。二〇一一年の創業時から本業だけでなく兼業で働く人を受け入れており、グラフィックデザイナーやITエンジニアなど八カ国の二十五人が、正社員や業務委託、アルバイトなど希望する形で所属する。

 東京の下町情緒あふれる浅草橋近くに、三階建ての築五十年の事務所「馬喰町FACTORY」がある。「何かを生み出すための基地」として、シェアオフィスやミーティングルーム、屋上テラスがあり、時にアートギャラリーにもなる。

新しい働き方について話す川越麻未さん(左)と代表の出村光世さん

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 「僕自身、軸足がこんなにあるんです」。代表の出村光世さん(32)は、テーブルに自身の五枚の名刺をずらりと並べる。起業後すぐ大手広告代理店「東急エージェンシー」の社員としても働き始め、二年前から業務委託に切り替えた。国内外のIT企業のマーケティング責任者も務める。

 コネルではデジタルコンテンツの制作や製品デザイン、体験型イベントのプロデュースなど幅広く手掛け、プロジェクトごとにメンバーを編成する。最近はサッカーワールドカップを盛り上げる音声認識ロボット「AIカビラくん」(2018FIFAワールドカップフジテレビ系広報担当)を制作した。

 出村さんは「情報の感度を高めるためにも、やりたいことをやり、軸足はたくさんあった方がいい」と言い切る。川越麻未さん(27)は、兼業を認める大手外資系IT企業で社員として働きつつ、六月からコネルの仲間になった。

 川越さんは前職でウェブサイトを運営した時に「働き方改革」関連の取材をし「一つの会社に縛られず働く人たちに出会い、すてきな大人だと思った」。自分自身も「一つの会社で働くことが窮屈に感じ、もっといろんな環境や人の考えに触れたいと感じた」。

 本業ではデータを活用した企業向けの営業をしており、働く時間や場所は比較的柔軟だ。たまたまフェイスブックで見つけたコネルの自由な社風に共感し「やってみたいことを形にしたい」と、出村さんに直接メッセージを送った。

 川越さんのコネルでの肩書は「コミュニティデザイナー」。出村さんと相談して決めた。宮崎県出身で、父が地元の市議をしており、地方創生の話題には敏感だ。夢は「南国リゾートのような雰囲気の地元で、魅力的な空間のコミュニティーづくりをすること」。

 「今はまだやり方が分からないんですけど」と控えめに話す川越さんに、出村さんは前向きな言葉を掛けた。「まずは楽しんでもらいたいなって思うんです。何かをやりたくてしょうがない人を受け入れていて、労働力という観点はゼロなんで。コネルという会社を利用して、やれることを広げてほしい」

 川越さんも後押しされたように応えた。「私も労働時間と思っていません。わくわくできる時間が増えるので、とても楽しみ」

社内外で心理学「エニアグラム」の手法を使ったカウンセリングをする矢野瑞貴さん(左)=東京都内で

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CASE.2:大企業

 結婚や出産育児、学びなどの情報サービスを手掛ける「リクルートマーケティングパートナーズ」(東京都)は、二〇一五年から進める「働き方改革」の中で副業を認めており、社員自身のスキルアップにつながっている。

 入社五年目の矢野瑞貴さん(27)は、中古車情報「カーセンサー」の営業として、東京都と神奈川県の販売店を担当する。今年から、性格を分類する心理学「エニアグラム」を用いた自己分析のカウンセラーの顔も持つ。

 入社当初、矢野さん自身が社内でのコミュニケーションに課題を感じ、社外の勉強会でこの心理学を学び始めた。社内でアウトプットすると好評で、先輩から「外でもっとやってみたら」と後押しされた。

 カウンセリングは二カ月に一回、女性向けに約二時間のレッスン形式で行う。「さまざまなキャリアを歩む女性のお話を聞き、自分自身の視野が広がり、パワーをもらえる」と話し、職場で後輩への助言などに役立っているという。副業は「金銭的な意味合いではなく、自分の人生をより豊かにするもの」と捉えている。

 全社員千二百九十二人中、副業するのは起業も含めて七十五人。他の会社と雇用契約を結んで働くことや同業他社での副業などは禁止しており、コンサルタントやアプリ開発、セミナー講師などを個人事業主として副業する人が多い。

 人事企画グループの野村由美子さん(43)は「副業をしてもデメリットにならないように、社員自らが労働時間や場所を選び、一定の残業代を支給している」として「社員が社外でも成長することは、会社の魅力につながる」と語る。

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本業ぬかりなく/効率化を徹底

業務改善専門家 沢渡あまねさんに聞く

 「職場の問題かるた」や「働き方の問題地図」などのシリーズの著者で、業務改善の専門家沢渡あまねさん(42)に、副業を促進する社会背景や、副業を導入する際の企業や個人のポイントを聞いた。

 戦後から兼業農家など副業・兼業の考え方はあるが、近年「ホワイトカラーの副業を認める動き」が進んだ。まず「終身雇用の崩壊」を指摘する。「頑張れば昇進し、雇用する本人と家族の生活を保障し、退職金がもらえる時代ではなく、自分で確保してほしいという企業の考えがある」

 「働き方改革」により、「残業をしなくて良いという風潮から、余暇を活用しやすくなった」。また、インターネットの普及で誰もが情報を発信したり、作ったものを販売したりできるようになったのも大きい。

 副業のメリットとして、企業は「社員を一社に囲い込むのではなく外の世界に触れさせることで、組織自体が時代遅れにならず、企業のブランド力の向上につながる」と話す。個人は「自分のスキルを生かした副業をすることで成長し、収入だけでなく、メンタル面での安心感にもつながる」。

 一方で、企業が勤務時間外の行動を規制する法律はなく、働き過ぎには注意。副業で本業がおろそかになれば、自分の価値を下げてしまう。企業側も無駄な会議や資料作成を無くすなどより効率化し、成果主義に移行する必要がある。企業秘密を守るためには、やってはいけない事項を定めた方がいい。

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「ばく」のLINEスタンプ作り始動

アイデア、本社会議参加者募集

 2010年にポプレスとともに産声を上げた北陸中日新聞の公式キャラクター「ばく」にもっと親しんでもらおうと、ポプレス編集部は無料通信アプリ「LINE(ライン)」のスタンプ作成プロジェクトを始めます。そこで6月末まで皆さんのアイデアを募集します!

 インスタグラムでハッシュタグ「#ばくスタンプ」を付けて「こんなスタンプが欲しい」という絵や言葉のアイデアを投稿するか、下記のメールアドレスまで送ってください。金沢市駅西本町の中日新聞北陸本社での会議に参加したい方もお気軽にご連絡ください。30日まで日時を調整して数回開く予定です。ぜひ一緒に作りませんか?

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とくの裏トーク

 「労働時間を減らせ」と言われても仕事量が変わらなければ難しい。さらに副業するなんて夢のまた夢かも…。無駄な業務を減らす努力が鍵となる。企業が副業を認める場合「リクルートマーケティングパートナーズ」の事例は参考にしやすい。労働時間が長ければ副業を認めない場合があるという。また「会社に縛り付けるような働き方は時代にそぐわない」とも。

 今回取材した川越さんと矢野さんは私と同い年。「好き」と「苦手」に向き合った副業・兼業のきっかけは対照的だが、挑戦する姿はすがすがしい。 (督)

 

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