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手軽に買って、すぐ売る 所有ワンシーズン われら 消費新世代

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 服や本を売りたい、買いたい、と思えば、インターネットを介して瞬時に取引相手を見つけられるフリマアプリ。手軽に手ごろな価格で売買することを可能にしたこのアプリが一部若者の所有の価値観を変えつつある。「春に買った服は翌シーズン前に売り、売上金などでまた服を買う」。着るのはワンシーズン。「モノの所有は一時期でじゅうぶん」。消費離れが進む中、そんな若者がちらほら出始めている。 

フリマ 心得は「売る前提」

竹之内七海さん(23)=古着販売店員

 金沢市竪町の古着販売店員竹之内七海(ななみ)さん(23)はフリマアプリの達人だ。「今、着たい服は来年、再来年に着たい服じゃないので」。だから、ワンシーズンしか着ていなくてもアプリを使って売り、次の服を買う資金にする。

フリマアプリで購入したカメラ用品を並べ、活用法を語る竹之内七海さん=金沢市竪町で

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 買った時から売ることが前提になっているため、フリマ用ボックスが部屋にある。「もういらないな」と思った服をぽいっ。ネットのフリマサイトを使い始めたのが10年前。もともと主に買っていたが、今は売り時を心得ている。春物なら冬、夏物なら春。ただ、部屋の掃除をした時に冬物を春に手放すことも。

 暇な時にアプリで欲しい物が出品されていないかチェックし、月1回ほど古着や靴、趣味のカメラ用品などを買う。お気に入りのブランドはコム・デ・ギャルソン。「新品で買えば20万円。憧れのブランドのジャケットを2万円で手に入れられた」。アプリですぐ売るといっても、もともと手放すつもりで安く買った服が対象。お気に入りのブランド品は大切にしまってある。

 新品のブランド物で気になっているものもある。メゾン・マルジェラのパンプスだ。足袋のような独特のスタイルが人気で10万円ぐらいするというが、購入はまだお預け。「もう少し大人になってから、運命的な出合いがあれば買いたいかな」。それほど、新品を買うことは特別なのだ。 (督あかり)

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半信半疑 届いてみて満足

 金沢大法学類2年の山村知生(ともき)さん(20)は、昨年7月に、部活で使うバドミントンのラケットを買うために初めてフリマアプリを使った。「普段はあまり使ってませんが…」

 部活の友人から、アプリで定価の4割ほどの値で中古品のラケットを買ったと聞き、興味を持った。ちょうどその時、3本あるラケットの1本が練習中に折れたので、買い替えようと思ったところ。

 半信半疑で、アプリで好きなブランドのラケットを探すと「中古で8000円」という品を見つけた。店頭で買えば2万円ほど。出品者によると、品質は悪くない。実際に届いたラケットもフレームに目立った傷などはなく、今ではお気に入りの一本だ。

 それから大学の講義で使う教科書も半額で手に入れた。漫画30冊がセットで3000円で出品されているのを見て「欲しいな」と思ったことも。でも普段から無駄な金を使わない節約家。「失敗するのも嫌なのでアプリはほとんど眺めてるだけです」 (稲垣達成)

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参考書は「あり」服は「なし」

 金沢大法学類2年の石田愛佳さん(21)はフリマアプリで、行政書士試験の参考書11冊のシリーズを、定価の半額の約1万円で手に入れた。司法試験の合格を最終目標に、法律の勉強に励んでいる。

 アプリを初めて利用したのは、大学1年生。古本屋では欲しい参考書全冊がそろっていなかった。ネット通販ではまとめ買いができず、時間や配送料がかかってしまう。CMで見たアプリを使ってみた。

 届いた参考書は、最初のページだけ多く線が引かれており、途中で勉強を挫折してしまったことがうかがえる。主婦から届いた商品には子どもの落書きがあることも。ただ「使っていくうえで、気になるほどではない」と不満はない。

 「買い物がめちゃくちゃ好き」。バイト代のうち、月5、6万円を服や化粧品代に当てることも。ただ「他人の肌に触れた中古の服を買うことには抵抗がある。潔癖なところもあるので」として、服などは店頭で買う。 (柳昂介)

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不用品がお小遣いに変身

 社会人5年目の金沢市の銀行員小林香映子(かえこ)さん(27)はフリマアプリでの売買の経験を通じて、本当に欲しい物にお金を使うようになり、よく考えて買い物をするようになった。

 「これ、全部フリマアプリに出品するんです」。自分の部屋に口紅やハンドクリームがずらりと並ぶ。近所の雑貨屋で手に入れた物から海外旅行のお土産までさまざまだ。

 もともと浪費家。実家暮らしで、多いとは言えない給料でも欲しい物は買う。しかし20代半ばで、将来を見据え「そろそろ生活をちゃんとせんなん(しないと)」と、お金の使い道の見直しや物が散らばる部屋の掃除を始めた。

 メルカリを使って1年。最初は要領をつかめず利益が少なかったが、今では「写真や送付方法を工夫していいお小遣い稼ぎ」と話す。ざっと60点の出品で約7万円を売り上げた。売る物の多くは衝動買いの化粧品など。「必要な物とそうでない物がハッキリした」

 身の回りの不要な物がアプリを通してお金に替わる。今一番やりたいことは、国内外の旅行。次はどこへ行こうと計画を立てながら「心から求める物」にお金を使う。 (都沙羅)

「巨大クローゼット」共有感覚

「若者論」を研究する東京学芸大の浅野智彦教授(53)(社会学)

 若者の可処分所得が減り、お財布が小さくなった。10、20年前の学生は親が高度経済成長の恩恵を受けていたが、今は親も余裕がなく、消費が絞られるように。消費を通じたコミュニケーションも変化した。1980年代の若者はブランド物を持ち、ワンランク上に見られたい気持ちがあった。90年代には実際のフリーマーケットがはやり、中古でも良いという考えが広まった。今は連帯感や仲間意識が重視される。フリマアプリは「巨大なクローゼット」。みんなで共有し、必要な時にそこから取り出せるという考え方が広まっている。

 フリマアプリ スマートフォンのアプリ上で、フリーマーケットのように個人が手軽に物品を売買するサービス。出品者が価格を設定し、手軽に売買できる一方で、偽物や窃盗品、現金などの出品が問題となり、業界団体が自主規制を行っている。フリマアプリ大手「メルカリ」は2013年から配信開始。楽天が運営する「ラクマ」や、手作り品専門の「ミンネ」などアプリの種類はさまざま。

 

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