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AIでこんな働き方 金沢工大アイデアソン 2030年未来予想

「マンダラート」という手法で、正方形の升目にAIから連想する言葉を書き出す学生=いずれも金沢工業大で

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 人工知能(AI)の進歩が著しく、2030年には事務や販売の仕事をする「ホワイトカラー」とともに、AIが働く時代が来ると言われている。AIやロボットなどについて研究する金沢工業大の中沢実研究室の学生が、30年の働き方を考えた。AIに労働が奪われるとの見方もあるが、むしろ歓迎する学生もいた。一緒に未来の働き方を考えてみませんか。 (督あかり)

 十五日に金沢工業大・チャレンジラボで、働くことを切り口に未来のAIのアイデアを生み出す企画「アイデアソン」を開いた。中沢研究室の協力で卒業を控える四年生八人が挑戦した。

 中沢教授の講義後、思い付く限りアイデアを書き出す発想法「マンダラート」で、AIから連想する言葉を一人三十〜八十一個書き出して発表した。

 「ロボット」や「有機的」と書いた高田裕也さん。「開発が進む炭素繊維を使ったロボットのことですか」と問われ、「今はアルミなど金属的なイメージだけど、より人体に近い素材になると思う」と答えた。

 キーワードを出し合いアイデアを膨らませた後、三〇年のAIについて考えた。伊藤拓夢さんは十二年前を振り返り「技術の進歩が速すぎて、小学五年生の時に今の世界なんて全く想像できなかった。十二年後、さらに生活が便利になってほしい」と期待した。

「VAIer」のアイデアを発表する学生たち

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 高田さんは「ヒト型ロボットのAI社長」を提案し「過去の業績や人事評価などのデータを基に企業運営の意思決定をする」と予想した。

 「皆さんはAI社長の下で働きたいですか」。記者の問い掛けに、三嶋秀宗さんは「感情的な上司の下で働くよりも合理的な判断ができるAIの方が良い」ときっぱり。伊藤さんは「AIの企業への導入が進み、『いいえ』と言えなくなるのでは」と推測。「人とAIの間に反発が生まれないように共存する道を考えたい」

 平田忠明さんは「AI自身が研究者となり、僕らの研究内容が狭まりそう」と危惧した。一方で、望月歩さんは問い掛けた。「そもそも人間って働く必要があるのか。AIにはない感性を生かして、AIができないことを補う仕事になるのでは」

 山下正人さんの提案もAI社長と同じ発想。「産業や医療福祉などさまざまな分野でAIの開発が進み、それぞれを取りまとめて指示を出すAIがいると思う」。ただ小島聖哉さんは「AIを過信してはいけない。不正アクセスなどリスクも考えて向き合った方が良い」と話した。

 学生は気に入ったアイデアに投票し、上位二人の案を基に未来のAIの考えをまとめた。荻原拓也さんは「最近は利益や利便性ばかり考えて研究をしていたけれど、十年先のビジョンを描くともっと面白い未来になりそう」と語った。

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◇参加した金沢工業大4年生の皆さん(1)出身地(2)趣味(3)研究内容や今後の進路

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VAIer(ブイエーアイアー)

お金稼ぎは任せた

 個人それぞれの人格を持つバーチャル上のAI「VAIer」は、三嶋さんのアイデアを基に考えた。「仕事が奪われるのではなく、人の代わりに投資などで稼ぐAI」として“1人1AI”の時代を予想した。

 形を持つロボット型ではなく、ネットワーク上に存在し、困り事をすぐに解決してもらえる。全ての人がスマートフォンやパソコンなどで自分の人格とよく似た専用のAIを持ち、「人生の相談役にもなってほしい」と願う。

 「AIが利益を得るため勝手に株価を操作するなど問題が起こりそう」と懸念を示しつつ「無理して働かなくてもよく、研究や遊びなど好きなことに没頭できるようになる」と三嶋さんは語った。

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Life with Work(ライフウィズワーク)

生活重視で仕事を

 それぞれのライフスタイルに合わせ、働き方をサポートする職場のAI「Life with Work」。「AIやロボットの役割が細分化し、それらを集中的に管理して、人に提案するAIができるのでは」という山下さんの予想から考えた。

 それぞれの家庭にあるAIが管理する個人のライフスタイルの情報を把握し、業績や仕事量などを考慮して、最適な働き方を提案するAI。個人の希望に合わせ、定時ではなく柔軟に働けるように。

 個人情報の流出の可能性を問題視する声も上がったが、「仕事のために生活を犠牲にするのではなく、生活を基本に考えて仕事を効率よくこなしたい」という学生の強い思いがある。

AIが進出する社会について解説する中沢実教授

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独創的な発想 磨いて

中沢教授から学生へ

 「これから起きる変革は二百五十年前の産業革命に匹敵するか、それ以上かもしれない」。中沢教授は「二〇三〇年には、人と機械が共存し、協調する社会が訪れる」と予測する。

 人工知能(AI)という言葉はすでに一九五六年に登場し、今は第三次のAIブームが起きているという。今のAIは「入力に対して人並み以上にうまく出力結果を推定できる機能を持つコンピューター」。今後は「脳科学の進歩でドラえもんのような汎用(はんよう)型のAIが生み出される」と語る。

 ロボット産業の市場予測にも触れ、二〇一五年に一・六兆円だった市場規模が、二〇年には二・九兆円となり、農業や医療など幅広い分野で普及が進むという。三五年には九・七兆円と予測され、製造業だけでなくサービス分野でも普及が考えられる。

 これから働く若者に伝えたいのは「人間はロボットやAIができない仕事をする方向へシフトする」という考え方。研究者やエンジニアなどを目指す学生には「急速な技術の発展に対応し、独創的な発想で、ロボットやAIを有効活用できる人になってほしい」と助言した。

とくの裏トーク

 「なぜAIがプロ棋士と対戦するかって? それはロマンですよ」。昨秋「AIは人間を超えるか」というテーマの講座で、登壇者の中沢教授に、素朴な疑問を投げかけると、返ってきた言葉に面食らった。

 悩める学生には、大胆に背中を押す。「参考書や旅費をたくさん使う『就活』は無駄。その時間を減らし、もっと誇れることを増やそうよ」と。私自身も学生時代「受験」に並ぶ一大イベントのような「就活」に違和感を抱いていた。未来を想像しつつ、どう働きたいか。AIの進歩は、自分と向き合うきっかけにもなる。 (督)

 

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