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おじさんから若者へ 元祖 進化

 ひと昔前にカプセルホテルといえば終電に乗り遅れた中年の会社員らが集まる「疲れた人の巣窟」といったイメージがあり、一時期は人気が低迷したこともあった。しかし、近年では、若者たちが手軽に泊まることのできたビジネスホテルなどの宿泊料が高騰。外国人客が泊まり始めると、若者にも旅の「安価で清潔な宿」として知られるようになった。この二つの要因が両輪となり、再び脚光を浴びている。1979年、世界で初めてカプセルホテルをオープンした「カプセル・イン大阪」と、金沢市に昨年誕生した「金沢カプセルホテル武蔵町」に泊まり、二つのカプセルホテルの「今」を調べた。(草野大貴)

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世界初から39年 終電後の楽園

カプセル・イン大阪

 大阪・梅田に店を構える「カプセル・イン大阪」。1979年に男性専用のカプセルホテルとして世界で初めて開業した。24時間使える大浴場、サウナ。マッサージなどのサービスも完備する。「カプセルホテル」の原型はここにある。アメニティーの数も多い。

【上】サウナや大浴場も完備されている【下】カプセル内部。左手前にある出っ張りにはテレビが内蔵されている=いずれも大阪市北区堂山町のカプセル・イン大阪で

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 今年で開業39年。客足が遠のいた時期もあったが、同店を運営するニュージャパン観光の渡邉大(わたなべまさる)さん(46)は「10年ほど前から客足が戻ってきた。若者や外国人が増えている」と話す。

 渡邉さんは続けて「『おじさんの行くところ』といった先入観のない外国人と、影響を受けた若者も使いだした。ただメインの利用は出張客や終電を逃した人だ」と明かした。

 開店当初に導入されたカプセルは現役。設計には世界的な建築家黒川紀章氏が携わっている。「実用性、耐久性のどちらも優れる。建築好きの人がカプセル目的に来ることもある」と渡邉さん。

 開業当時のチラシは、カプセルホテルを「2100年のビジネスホテル」と紹介する。渡邉さんは「2100年まで82年。それまではカプセルホテルを続けたい」と笑った。

 カプセル・イン大阪 大阪市北区堂山町9の5、梅田ニュージャパンビル。価格帯は2600〜5100円。カプセルは415床。(問)06(6314)2100

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レジャー目的で外国人らが使用

金沢カプセルホテル武蔵町

 宿泊にお金をかけたくない観光客らに人気を集めているのが2017年7月に誕生した「金沢カプセルホテル武蔵町」だ。大浴場などの設備はなく、シャワーユニットとカプセルがメインのシンプルな造りだ。

【上】洗面台とシャワーブースが並ぶ。奥にはロッカールームがある【下】横から入るタイプのカプセル=いずれも金沢市武蔵町の金沢カプセルホテル武蔵町で

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 支配人の山田正雄さん(64)は「抑えるところを抑え、格安で快適な宿を目指している」と話す。館内着、タオル、歯ブラシなどの宿泊に必要な物は取りそろえている。

 同店の特色は、女性客の利用が可能な点。全体の客のうち約20%は女性が利用する。山田支配人は「女性客の宿泊率の方が高いときもある。先入観もないようだ」と説明する。

 そのため女性フロアと男性フロアは完全に分かれている。カプセルが置かれている部屋に入るにはICチップ入りのリストバンドをかざさなければならず、セキュリティー面を強化している。

 観光地のホテルならではの取り組みも始めていく予定だ。山田支配人は「観光地を巡るガイドツアーを企画したり、着物レンタルの返却をホテルでできるようにしたりして、細かいニーズに応えていく」と語った。

 金沢カプセルホテル武蔵町 金沢市武蔵町1の17。価格帯は2700〜4200円(2月までの冬季料金)。カプセルは120床。(問)076(208)5100

まるで宇宙船 寝るには十分

草野記者が泊まってみた

 寝る直前まで繁華街にいたい飲んべえの記者にとって、宿とは「風呂と寝るための場所」。豪華なおもてなしは求めていない。二つのカプセルに記者が実際に泊まり、改めてその魅力を肌で感じてきた。

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 まずはカプセル・イン大阪に宿泊した。ガウン風の館内着に着替えて、カプセルルームへ向かう。一つのカプセルの大きさは縦横約1メートル、奥行きが2メートルだ。形は流線形。カプセル内部はほとんどが1979年当時のもの。中の器具の一つ一つは丸みを帯びている。枕元には調光のための器具、テレビのスイッチなどが集中する。デザインと相まって、宇宙船内部に入ったようだ。広くはないが、1人で寝るには十分だ。

 カプセルルームの前はラウンジになっていて、ソファなどが並ぶ。テレビや新聞などもあり、ゆったりと過ごすことができる。

 金沢との最大の違いが大浴場の存在だ。エレベーターに乗り、大浴場へ向かう。大きな浴槽にサウナ、なんとプールまである。浴槽に身を沈めていると、同僚とおぼしき2人がやってきた。終電を逃したよう。「いやまあ、たまにはね」などと語り合い、やがて会社の愚痴になった。寝食をともにするカプセルホテルは同僚との絆を強めるのにもいいのかもしれない。

 利用者に声を掛けてみた。沖縄県与那原町の会社員の男性(31)は「出張で来た。この辺りはビジネスホテルだと8000円はして高い。値段を抑えたいし、カプセルで寝る感じも好きなので、ここをよく使っている」と話した。

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 次は「金沢カプセルホテル武蔵町」に泊まった。

 四角く、大きい−。大きさ自体は大阪のものとさほど変わらないらしいが、そう感じた。今回泊まったカプセルは、入り口から入って、横向きに眠るタイプ。カプセルの配置の都合だというが、普通のものは頭から奥に入って寝るので、少し驚いた。旧来のものと大きくは変わらないのだろうが、中も広く感じる。あおむけになって、手を伸ばしても天井まではずいぶんと余裕があった。枕元にはコンセントが設置されている。スマートフォンが生活必需品になった今、手元のコンセントはありがたい。

 男性用ロッカールームとシャワールームがある階に行く。歩いていると足触りが良いことに気づく。目を下にやると、畳敷きになっていた。日本人はもとより外国人にも喜ばれそうだ。

 ロッカーの中には、タオルや館内着、歯ブラシなど宿泊に必要な物が入っていた。甚平風の館内着に着替えた。男性用のシャワーブースは8室。一つ一つのブースは大きくないが、清潔に保たれていた。

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 翌朝、チェックアウトのためフロントに向かうと女性客がいた。新潟県長岡市の介護士、高橋理瑠(みちる)さん(22)。高橋さんはライブを見るために金沢に訪れたという。「ニュースでも女性がカプセルホテルに泊まるのを見たので、抵抗感はなかった。きれいだし、寝るには十分だ」と笑った。

 

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