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見るだけじゃない 使って楽しい♪ 工芸ピクニックを♪

中村卓夫さん(左端)が呼び掛けたチームに参加。側面などにモミジをあしらった器(手前)などを使ってピクニックを楽しんだ=いずれも金沢21世紀美術館で

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 工芸をもっと楽しく、身近に! 自分のお気に入りの工芸品を持ち寄って外で食事を楽しむ東京発の「工芸ピクニック」の動きが広がっている。金沢21世紀工芸祭などで盛り上がる金沢で今月初めて開かれ、金沢大の学生が体験した。手作業で生み出される工芸品は、本来使うもの。工芸をあまり知らない若者だからこそ、その使い方は可能性に満ちている。芸術の秋、工芸品を使ってみませんか? (督あかり)

中村さんのチームに参加した学生は、工芸品を手に満面の笑み

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 秋晴れの昼下がり。九谷焼や山中漆器、蒔絵(まきえ)など、お気に入りの工芸品を持ち寄った8チーム約80人が、金沢21世紀美術館前の芝生でピクニックをした。金沢大地域創造学類で観光やまちづくりを学ぶ学生8人は、金沢市尾張町の梅山(ばいざん)窯の陶芸家中村卓夫さん(72)が率いるチームに参加した。

 3代目中村梅山としてニューヨークのメトロポリタン美術館などに作品が収蔵され、国際的に評価される陶芸家。この日のために作り、ふたや側面にモミジの絵をあしらった横長の焼き物や菊坊主を題材にした2代目梅山の升形の器を準備した。知人デザイナーが加賀レンコンや甘エビの甘露煮、イノシシ肉のソース焼きなどを盛り付けた。

金沢の有志チームは、400年前の蒔絵の重箱を使用。ブドウが描かれた重箱に合わせてワインを飲みながらフランス風に

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 学生たちは工芸品に触れたことがなく、緊張気味。中村さんは柔和な笑顔で「固定概念なく好みの器を探して。さぁ楽しんで交流しましょう」と呼び掛けた。

 「工芸は美術館でガラス越しに『ありがたく』鑑賞するイメージだったけど、使って良いんですね」と話したのは、新潟県出身の石田和晋(かずあき)さん(20)。「今日でぐっと距離が縮まった」

石川県の工芸作家でつくる「世襲じゃない工芸作家集団IKON」は作家がお気に入りの器を持参し、庭先の花も飾った

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 徳島県出身の北岡佳香(よしか)さん(20)は「一人暮らしで、安い食器を使っている。良い器で食べると、こんなに楽しいんだと分かった。暮らしが豊かになりそう。私も欲しいな」と笑った。

 福井県出身の東(あずま)朋宏さん(21)は「料理がよりおいしそうに見えた。若者の間で見栄えが良い物を写真に撮り、SNSに投稿するのがはやっている。写真を撮るために工芸ピクニックをやりたい人がたくさんいそう」と推測した。

英国のピクニックセットを持参した東京ピクニッククラブのチーム。左上のセットは約100年前に作られた。日本の重箱を参考にしたとか

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 富山県出身の刑部(ぎょうぶ)美里さん(20)は器を通じて交流を楽しんだ。「薬品研究から器作家に転向した人などの話を聞いて、いろんな人生や価値観を知れて楽しかった」

 学生たちをにこにこと見守った中村さんは、つぶやいた。「最初はこちらも緊張したけれど、楽しんでくれてうれしい。金沢では作り手だけでなく、使い手も対等な立場でバランス良く工芸が発展してきた。若い人たちも『工芸っておもしろい。かっこいいじゃん』って思ってくれたかな」

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お気に入りといざ外へ

21世紀鷹峯フォーラム

 金沢を中心に開かれている工芸の祭典「21世紀鷹峯(たかがみね)フォーラム」を主催する「ザ・クリエイション・オブ・ジャパン」が、東京のクリエーターなどでつくる「東京ピクニッククラブ」と協力して、今年から提唱し始めた。

 2015年に京都であった21世紀鷹峯フォーラムで出た「現代生活と工芸をいかにつなぐか」という課題の解決策として生まれた「工芸ピクニック」。ずばり、その意義とは?

 岩関禎子事務局長(45)は「日本には、野山に出て食事を楽しむ『野弁当』の文化があった。展覧会で見るより、もっと楽しい工芸との付き合い方を知ってほしい」と語る。「紙コップや紙皿の代わりに、とびっきりお気に入りの『マイ工芸』を持って外へ出る。だまされたと思ってやってみて」と、ちゃめっ気たっぷりに呼び掛ける。

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初心者へアドバイス

世襲じゃない工芸作家集団IKON代表

 工芸品は欲しくても、若者にとっては手が届きにくいイメージ。石川県の作家10人でつくる「世襲じゃない工芸作家集団IKON(アイコン)」の稲積佳谷(かこく)代表(46)に、工芸初心者へのアドバイスを聞いた。

 工芸品を買ったことがない人に、どんな物がおすすめですか。

 友だちにお誕生日プレゼントをあげる気分で買えば良いのよ。日本には贈り物の文化がある。丁寧に作られた箸やマグカップ、豆皿などは使いやすくて人気。お土産屋さんやギャラリーなどで手に届きやすい価格の工芸品も売っている。

 工芸を買う魅力は。

 工芸品を選ぶのは、自分を知るスタートになる。若い人は自分が生まれ育った文化的な背景に興味があると思う。気に入ったものを一つでも良いから買ってみては。作り手の呼吸感を感じられ、愛着が生まれるでしょう。日本人には、そんな独特の感性があると思う。ギャラリーで、作家の話を聞きながら選ぶのもおすすめ。

 工芸ピクニックをする際に気をつける点は。

 陶器は割れやすいので、ガチャガチャと動かないように緩衝材などを入れて、隙間がないように箱に入れて持ち運びして。輪島塗や会津塗など、塗り物は軽くて使い勝手が良く、割れにくい。肌なじみも良いですよ。

工芸って?

 工芸品 美的価値を備えた実用品。主に金工や漆工、陶磁、染織などの伝統的な工芸技法で制作されたものを指す。

 

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