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「町」を作るシムシティよりガチ 課題に挑め 自治体運営ゲーム

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 人口減少、超高齢化社会、社会保障費の増大…。答えのない未来を切り開いていくのはいつの時代も若者です。若者にまちづくりを身近に感じ、考えるきっかけにしてもらおうと、石川県庁の林田直樹さん(25)ら有志10人が自治体運営ゲーム「SIMいしかわ2030」を作りました。限られた予算で事業を取捨選択し、市を発展させるゲーム。私も市の幹部役として参加。決めることの難しさを味わってきました。 (編集長・蓮野亜耶)

事業取捨 決められない…

真剣な話し合いに価値

I市の強みは?

 「わが市の強みを生かし、全体を見ながら行く末を考えてほしい」。市長からの訓示を受け、ゲームはスタート。

 ゲームでは、人口減少などによって使える予算が減っていく自治体の運営を体験します。初めに市が行う事業が書かれた計12枚のカードを局長に配布。必要な予算は各1億円です。5年ごとに緊急に予算が必要な事態が発生し、同時に社会保障費を捻出しなければいけません。そのためには借金をするか、事業を廃止して浮いた予算を社会保障費などに当てていきます。借金は3億円まで。

 つまり、借り入れ分を含めて最大15億円の予算規模から自治体の運営を開始。5年ごとに使える予算が最大4億円減る中で、課題などを解決するために必要な予算を確保していきます。

 限られた予算では「あれもこれも」と事業を始めることはできない。まずは判断の軸となるI市の強みを考えることにしました。

 歴史的な景観、豊かな自然、伝統工芸、食文化…。全国から人を呼び込める魅力がたくさんあることがI市の強みだと一致。「I市の魅力を発信し、高めることで市を盛り上げる」ことを軸に事業の廃止、提案することにしました。

活発な議論を繰り広げる参加者たち=いずれも金沢市香林坊の石川県NPO活動支援センターで

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大地震が発生

 一番、議論が盛り上がったのは2026年から30年の予算編成。私はまとめ役となる総務・財政局長に就任しました。

 就任直後、市街地を震源とする震度6強の地震が発生。復旧対応に全力を挙げなければいけないが、社会保障費は2億円必要。いくつかの事業を廃止しなければ捻出できません。

 しかし、「子ども医療費の助成」「各種健診助成」など市民生活を支える事業はやめることはできない。では「文化芸術振興事業」を削るか−。

 「被災した市民が地域への愛着や絆を強めるためにも文化事業は必要ではないか」と考えた私は、残すべきだと提案。しかし、「大災害が起きたときに、文化事業などやっている場合ではない」と反論があり、議論は紛糾しました。

参加者と議論を重ねる蓮野亜耶編集長。山積みの課題は解決できるのか?

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まさかの多数決

 「文化事業を行いたいのであれば、NPOなどの力を借りればいい」「これまで伝統文化を守るために手を尽くしてきた。もういいのでは」

 I市中心部出身の私は、文化事業を廃止することに大きな抵抗が…。反対意見に「だって、文化、歴史はI市の誇りじゃないですか…」と繰り返すばかり。

 結論が出せないまま時間が過ぎてしまい、結局、多数決をとることに。結果は復旧を果たすまで「文化芸術振興事業」を廃止し、社会保障費を確保することにしました。

生かせクルーズ船

 震災からの復旧も一段落し、市長から「I市をさらに発展させるため、新しい事業とキャッチコピーを決めてほしい」とお達しがありました。

 注目したのはクルーズ船。寄港後、中心部だけを巡るのではなく市内全域に足を運んでもらおうと、港近くに自動運転車を配備し、観光客に気軽に乗ってもらう事業を計画。クルーズ船でゆったりと過ごし、I市では歴史や豊かな食文化を味わえる。さらに自動運転車という先端技術を体験できると大盛り上がり。

 ゲームを通して残った事業カードを見ると、観光振興に関するものが多かったのが印象的。「I市の魅力を生かした街づくり」が私たちが目指したI市だと考え、キャッチコピーをI市をもじって「I市てる。Center of Japan」と決定しました。

 I市は、石川県がモデル。超高齢化、人口減少の時代を迎えるといっても、どこか人ごとでした。社会保障費の確保、若者の定住など考える問題は山盛り。答えはありません。だからこそ、話し合いを重ね、意見を出し合っていくことでしか未来をつくっていけないのだなとも感じました。

設定は歴史、文化を誇る架空都市

制作者の林田さん

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 日本海に面するI市が舞台。I市の中心部は日本三大名園のひとつである庭園や現代美術館、茶屋街など歴史的町並みが人気で多くの観光客が訪れる。南地区は漆器や陶器などの伝統工芸が盛んで、温泉にも恵まれている。北地区は日本海に突き出た半島に位置し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された祭りが有名。豊かな自然が残る。

 ゲームでは、参加者が市役所の六つの局(総務・財政、市民スポーツ、保健福祉、こども未来、環境・経済・農政、都市・建設)の局長となり、借金や事業の廃止をしながら社会保障費を確保。新規事業を立ち上げるため、5年単位で2030年まで計3回の予算の編成会議を重ねる。今回は、20〜40代の公務員、会社員、学生の26人が参加しました。

オリジナルは熊本

 SIM2030 架空都市を舞台に参加者が自治体の局長となり、自治体運営が学べるゲーム。2014年に熊本県庁の有志が制作した後、福岡、千葉県版など各地方版が誕生。全国で3000人以上が参加している。ネーミングはまちづくりを体験できるシミュレーションゲーム「シムシティ」をもじってつけられた。

 

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