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校閲ボーイ 金大生が挑戦 原稿のミス探せ!

法邑美知典校閲記者(中)から間違いを見つける極意を教わる加藤大輝さん(右)と増井拓良さん=いずれも中日新聞北陸本社で

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 みなさん、校閲って聞いたことありますか? 石原さとみさんが主演したドラマ「地味にスゴイ! 校閲ガール」(日本テレビ系)で初めて知った人もいるでしょう。校閲記者の仕事は紙面全体の「点検」。取材記者が書いてきた原稿を読み、誤字脱字をチェックし、見出しが記事に合っているか、記事に添えられたデータが正しいかなどを確認します。今回は、11月30日の夕刊を作っているまさにその時、学生2人に原稿を校閲してもらいました。さて、2人は間違いを見つけられたのでしょうか。(編集長・蓮野亜耶)

調べ物の山 迷い『こ』む→『込』

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 校閲を体験したのは、金沢大大学院博士課程2年の加藤大輝さん(26)と同大大学院修士課程1年の増井拓良(ひろよし)さん(23)。指導役は、校閲課の法邑(ほうむら)美知典記者(43)。

赤ペン走らせ

 午前10時、校閲開始。手渡された原稿を前に2人は「何を、どうやって調べたらいいんですか」と声をそろえました。

 念入りに調べなくてはいけないのは、固有名詞や数字。原稿に出てくる団体名や地名などに赤いペンで丸を付けながら確認。新聞で使う適切な用字用語が載っている「記者ハンドブック」、インターネット、辞書などを駆使して間違いがないか調べていきます。

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「終わらねえ」

 最初に校閲したのは、富山支局の記者が書いたイタイイタイ病の話。原稿に出てくる個人名、施設名、年号…。インターネットや辞書で調べていきます。

 その後も次々と届く原稿に赤いペンでチェックを入れていく2人。「USBって書いてあるけれど、正しくはUSBメモリーじゃないの」「人名なのに旧字が使えないのはどうして」。その都度、法邑記者に聞きながら調べていきます。

 しかし、一つの原稿に時間をかけすぎて、机に原稿がたまる2人。同時に大きなため息をついて「終わらねえ」。

漢字?かな?

 NHKのお昼のニュースを見ていた校閲記者がぽつり。「あ、テロップで流れた覚醒剤のせいの字が漢字になっている」。原稿をよく見ると、覚せい剤取締法違反とあります。実は、覚せい剤取締法違反と罪名を書く場合は、ひらがな表記。一方、「覚醒剤を使用」などと地の文で書くときには漢字で書くという中日新聞が加盟する共同通信社のルールがあります。法邑記者から説明を受けた2人は、「ややこしいなあ」。

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プロの『早』さ「すごい」→『速』

英語の原文を

 米国のオハイオ州立大で起きた過激派組織「イスラム国」による襲撃事件の原稿。インターネットで検索して発生した日付などを確認していた加藤さんは、「やっぱり、原文に当たらないとだめでしょう」と米国の新聞社のウェブサイトに掲載された記事で事実関係の確認をしようと試みました。

 英語で論文を書いた経験もある加藤さん。10分ほど辞書も使わず英文記事を読んでいましたが、「大量の原稿を読んで集中力が欠けている。英語が頭に入らなくて進まない」。たまっていく原稿が気になり、とうとう原文でのチェックを断念することになりました。

 午後1時。記事をレイアウトし、見出しがついた大刷りが到着。法邑記者たちは、リズムよく赤いペンを走らせ事実確認をしていきます。

日付 気づかず

 法邑記者は見つけたが、2人は見逃した重大なミスが一つありました。見つかったのは、この日開かれた裁判の原稿。「何が間違いだと思う」と2人に聞いてみました。何度、読み返しても2人からは正解が返ってきません。実は裁判の日付が違っていたんです。

 「マジかー」。見つけられなかった2人は、めちゃくちゃ悔しそう。

 もちろん、校閲記者がデスクに指摘したおかげで、紙面化前に間違いを防ぐことができました。そのほかに、法邑記者は原稿と写真説明で表現が統一されていないものや、「専門家会議」が「専門会会議」となっている見出しを発見しました。

 この日、法邑記者がチェックした原稿は22本。加藤さんは8本、増井さんは11本で時間切れ。2人は声をそろえて、「地味だけど校閲ってすごい! 尊敬です」。

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「無駄なこと」に誇り

 法邑記者の話 校閲はミスを見つけて当たり前なんです。自分が見た原稿で訂正が出たときは本当に落ち込みます。

 一生懸命調べても、結果的に誤りがないことも多いです。もちろん、間違いがないことはいいこと。そんな「無駄なこと」に誇りを持っています。

どんな間違いが多いの?

漢字変換ミス

 「再会」と「再開」、「教祖」と「教組」など。「糖の吸収」とすべきところを「東野九州」となっていたこともあったそう。

名前が変わる

 例えば、「吉井」さんが記事の途中で「吉田」さんに変わってしまっているケースがあります。原稿と写真説明で名前が違うこともあります。

似たカタカナ

 地方版の記事で吹奏楽部の演奏会で披露した曲が「アメリカンシンフォニー」ではなく、「アフリカンシンフォニー」だったことがありました。たまたま、法邑記者がアフリカンシンフォニーという曲もあると知っていて、念のために調べてみたら、間違いが分かったそうです。

日本語の誤用

 「げきを飛ばす」の本来の意味を知っていますか? 応援するといった意味で使われることが多いかもしれませんが、実は「広く知らせる」という意味なんです。このように、誤用の可能性がある場合は違う表現に変えてもらうように指摘することもあります。

あなたもレッツ校閲!

 校閲記者のすごさが分かったところで、みなさんも校閲してみませんか? 

 下の記事には、間違いが6カ所あります。場面は、夕刊の締め切り間際。デスクがイライラしている時間帯に取材記者から原稿が出され、すぐにチェックしなければいけません。みなさん、赤ペンを持って、ミスを見つけてください!

 金沢市の近江町市場で、カニやブリなど日本海の旬の食材を使った鍋の無料試食会があった。

 984年から毎年、同市場が主催している。市場内の広場に設けられたテントでブリのかす汁やカニ汁、豚肉と野菜を使った「めった汁」計5000色が来場者に無料で振る舞われた。

 北陸新幹線の開業以降、観光客でにぎわいを見せる市内を視察中の安部晋三主将も訪れた。安倍首相は熱々の汁に舌鼓を打ち、「おいしいですね」と市民に満面の笑顔で話し掛けていた。 

 この日の最低気温は、2度と3月上旬並みの暖かさとなったが、鍋を求め長蛇の列が並んでいた。

 神奈川県藤沢市から会社の同僚と観光に来た高木百合さん(29)は「カニ汁で体が温まった。カニのだしがしっかり出ていておいしい」と北陸の冬の味覚に感激した様子だった。

 次の三つの文章は、日本語が適切ではありません。どこがおかしいか分かりますか?

 (1)ぶらぶらと歩いていたら、行きつけのバーに行き当たった。

 (2)教室くらいの大きさの土地にブナの苗木10本をまんべんなく植えていった。

 (3)身長180センチながらすらりと伸びた脚を生かし、さっそうとトラックを駆け抜ける。

正解はこちら

 近江町市場で鍋を振る舞ったという原稿。間違いは見つかりましたか? それでは、答え合わせです。

 (1)984年…近江町市場の原形ができたのは1721年と言われています。単純な年号の間違いです。

 (2)計5000色…単位が違います。食べ物を数えるときは、「色」ではなく「食」が正しいですよね。

 (3)(4)安部晋三主将…安倍、阿部、安部…。あべさんにはたくさんの漢字表記があります。間違いやすいです。さらに、「首相」を「主将」と変換ミス。正解は、安倍晋三首相ですよね。

 (5)満面の笑顔…正しくは「満面の笑み」です。

 (6)長蛇の列が並んでいた…列に並ぶのであって、列が並んでいるのはおかしいですよね。「長蛇の列ができた」が正解です。

      ◇  ◇

 続いて、正しい日本語に直せましたか?

 (1)行きつけのバーなので、明確に場所が分かっているはず。ぶらぶらと歩いて偶然、行き当たるっておかしいですよね。

 (2)まんべんなくは、くまなくという意味。苗木10本だけではまんべんなく植えられません。等間隔で植えるというのが適切ですね。

 (3)身長が180センチもあれば、脚がすらりとしているはず。なので、内容の矛盾する二つの事柄をつなぐ「ながら」という言葉はふさわしくありません。

 

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