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それぞれの告白後 LGBT1万人撮影構想

OUTINJAPANで撮った写真を紹介する松中権さん=東京都新宿区で

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 重大な告白の意味合いで広く使われる「カミングアウト」。もともとは同性愛者らが性の指向を明かす言葉だ。生きづらさを抱える人の悩みを和らげるきっかけにもなるが、告白は自己満足だと捉える当事者もいる。カミングアウトの効果や難しさを考えた。(担当・福岡範行)

 初老の紳士は目に穏やかな光をたたえ、女性同士のカップルは赤ん坊に頬を寄せて笑う。モノクロの写真はどれも、モデルの人柄を伝える色にあふれていた。

応援できる社会に

 金沢市出身でゲイの松中権(ごん)さん(39)らが4月から取り組むプロジェクト「OUT IN JAPAN」。カミングアウトを選択する人を応援できる社会づくりを目指す。2020年までに同性愛や性同一性障害などの性的少数者(LGBT)1万人の写真を撮る試みで、写真家レスリー・キーさんが既に635人を撮影した。

子どもと一緒に笑う女性カップル

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 ホームページでは写真とともに、モデルたちのカミングアウトへの思いもつづっている。「自分らしく生きていく為のスタートラインを自らで引く事」「伝えようとする相手のことを信じること」…。捉え方は千差万別。中には「僕にとっては単なる自己満足。とにかく正直に生きたかった」と書く人もいた。

 性的少数者に対する社会の理解は徐々に広がり、カミングアウトする人は増えつつある。けれど、告白することを自分のエゴだと考え、選択しない人もいる。松中さんは「カミングアウトは相手にバトンを渡すことになる。自分は告白で楽になっても、相手に重荷を背負わせるかもしれない」と代弁する。

しない選択もある

穏やかな表情の4組の家族=いずれも(OUTINJAPAN提供、レスリー・キーさん撮影)

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 カミングアウトする相手は大抵、身近な誰かだ。親、友人、同僚。中には、突然の告白に戸惑う人もいる。親は告白を受け止めてくれても、今度は親が秘密を抱えることになり、親戚にも伝えるべきかなどの悩みが生まれたりもする。「カミングアウトをしない選択はあっていい。ただ、する選択を選びやすいものにしていきたい」

 11月に福岡県で開いた5回目の撮影会。性的少数者のいる家族4組9人を写した1枚は穏やかな笑顔で満ちていた。ステレオタイプの家族とは違うかもしれないが、みんな幸せそうだ。「家族はそれぞれ違っていい。家族でカミングアウトする姿も目に見えてくれば、人々が考えるきっかけになる」と松中さん。写真が伝えるポジティブな姿は社会の偏見を和らげ、次に続く人へのエールになる。

乗り越えた秘密の過去 ヨガ講師高岡さん

笑顔でレッスンを行うヨガ講師の高岡留美さん(中)=石川県野々市市で

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 石川県かほく市のヨガ講師高岡留美さん(38)は元夫や母親の借金返済のために家族に隠してデリバリーヘルスで働いていた過去をブログで赤裸々に明かす。秘密を抱え、悩む人らの後押しに自分の経験を生かせればと願いながら。

 風俗歴は一度の中断を挟み3年半ほど。借金がなくなってもやめられなかった。「今思えば不思議ですが、自分を傷つけないと、愛されないと思っていた」

 背景には親への負い目があった。中学時代、転校を拒んで車で送迎させた際、母親が事故でけがをした。元夫とはできちゃった結婚。結婚費用は親に頼った。元夫の借金は親に相談できなかった。父親に内緒で借金する母親にもいら立ちつつ、肩代わりしないといけないと思い詰めた。うつや摂食障害にも苦しんだ。

 友人に悩みを告白すると、ありのままを受け止め、ヨガ講師として独立することを勧めてくれた。風俗は卒業したが、罪悪感は消えなかった。友人の助言は「家族に打ち明けよう」

 今年2月、まず、信頼する高校生の息子2人に風俗経験を話すと、受け入れてくれた。両親の反応は不安だったが、告白に父親は「お母さんを守るのはわしの役目。おまえは苦しまなくていい」。親の愛情にようやく気づき、目が覚めた。

 高岡さんは2月から体験談や自分のコンプレックス、性の話題をブログでも公開し、生徒の体をほぐしながら悩みを聞く講座などを開始。30人が悩みを打ち明けに来た。その1人、山下聡子さん(27)は人間関係のストレスで過食になっていた。症状は高岡さんに話をするうちに落ち着いた。「留美さんがブログでカミングアウトしていたから、来ようと思った。人に言えないことを話せる気持ちにしてもらいました」

 

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