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やさしい革命 one step ahead 最終回 地方移住 北陸で工夫

 ポプレスは今年、シリーズ「やさしい革命」で身近な活動から共感を広げ、社会を変えようと動く若者らを追ってきました。最終回のテーマは地方移住。自然豊かな場所へ移住しやすい仕組みづくりに挑む石川県の若者2人を紹介します。(担当・福岡範行)

地域おこし協力隊 山本亮さん

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四季の生業 収入になる

 地方より都会を選ぶ理由で、よく挙がるのは地方の仕事の少なさだ。そこで、石川県輪島市三井町で町おこしに取り組む地域おこし協力隊山本亮さん(28)は新しい仕事作りの仕組み「生業(なりわい)カレンダー」を考えた。四季折々の里山の作物や農作業に合わせて仕事を変え、年間通して収入を得る手法だ。

 東京で育った山本さん。8年前から東京農業大の研究室の夏合宿などで三井町を訪ね、80代の男性の言葉に衝撃を受けた。「都会の人はお金がないと何もできないから大変だ。こっちには里山があるからお金がなくても人に優しくできる」。卒業後、都市計画のコンサルタントとして働きながら、輪島に通い、2014年3月に移住した。

 里山の仕事は豊富だ。晩秋はかやぶき屋根に使うカヤの刈り取り。冬のナンテンや初夏のササの葉も和食の飾りなどとして売り物に。みそをあぶるための能登ヒバの板「木っ端」は年中取れて、日当7000円は見込める。地方暮らしには十分な収入になる。

 今夏、職業研修に来た大学生の協力で、販売できそうな草花やキノコなどを地元の人に聞き取った。それぞれの家に多彩な山の幸の活用法があり、総数は実に59種類。その多さには、三井町に長年住む人も驚いた。

 「サラリーマンの仕事はなくても、収入を得る方法はいろいろある。三井の里山は宝の山だ」

 何げない生活の知恵を目に見える形にし、地域の魅力を住民に再発見してもらうことも、生業カレンダーの狙いの一つ。100の仕事で100の笑顔を生む百笑(ひゃくしょう)の町づくりを掲げると、地元の有志も協力してくれた。

 1年前は商品開発の資料や市役所に出す書類作りで一日中パソコンに張り付き、「こんな生き方をしたいわけじゃない」と悩んだ。今も多忙だが、迷いはない。同じ目標に向けて努力する仲間に支えられている。

 4年前の東日本大震災後、生き方を考え直し、地方移住する人は増えたと感じている。ここ1、2年の石川県七尾市以北への移住者でつくるグループだけでも20〜30代を中心に50人。生業カレンダーを実用化で収入面を助けられれば、移住をもっと促せるはずだ。

 生業カレンダーはまだ山の幸をリスト化しただけ。来年3月までには冊子の形に再整理。リストの商品の販路開拓も必要だ。協力隊の任期は再来年3月に切れるが、山本さんは「三井に残ります」ときっぱり。町づくりを担う法人「かぜとね」の起業も準備し、能登に根を下ろし始めている。

「試住」を提言 須貝友貴さん

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住む家 気軽に選べれば

 「住む場所を自由に選べる社会にしたい」。金沢市の中山間地、下谷町に暮らす須貝友貴さん(24)は力を込める。若者は、田舎は不便そうだと考えて街中を選びがち。勤め先の場所にも縛られる。住まいに不満が出ても、引っ越しは大ごとだ。

 須貝さんが実現を目指すのは「試住(しじゅう)」。引っ越し先の候補地域に短期間住んでみて、自分に合っているかどうかを確かめる。神奈川県鎌倉市などで実践されている取り組みだ。「賃貸や売買の契約をする前に試せれば、暮らし方の選択肢はもっと増えると思う」

 例えば、不便そうに見える中山間地も、住んでみたら印象は変わる。7月から下谷町に住み始めた須貝さん。コンビニもガソリンスタンドも近くにはないが、「ないなりに工夫するから、苦ではない」。寒さは厳しいけれど、車で5分で湯涌温泉に入りに行ける。雪かきも地域みんなで協力する温かな雰囲気がある。須貝さん宅は地区外の若者が下谷町に来る拠点になり、「ここでシェアハウスしたい」と語る人もいる。

 住んでみないと分からない。須貝さんは大学進学で金沢に来て、そう実感した。地元・新潟市にいたとき、須貝さんも友人も意識は関東に向き、金沢は場所さえよく知らなかった。高校中退後、教師になろうと一念発起し、選んだのがたまたま金沢の大学だった。

 学生時代、須貝さんは、生き方について説教してくれる飲食店の店長と出会った。市が発足した学生組織「金沢まちづくり学生会議」に入り、大学の新入生と市内を巡る企画を考え、実践できた。その実績を積み重ねるうちに、コンプレックスだった高校中退も気にならなくなった。「金沢は学生の背中を押してくれる街だと感じた」

 金沢での試住実現に協力的な不動産業者もいるが、まだ物件はない。試住以外の方法も模索している。ハードルは低くないが、大学進学のとき友人に贈られた言葉を胸に前を向く。「自分がやるんだと思えば、道は開ける。できる、できないじゃない。やるんさ」

過去7人 それぞれの挑戦

生きやすい社会 求め

 これまでやさしい革命で取り上げた人たちは7人。教育、農業、介護旅行…。富山の置き薬でアフリカの医療改善に挑む女性もいました。世の中にはもっともっと大勢の革命家たちがいます。代表例は、社会の課題を解決する事業を起こす社会起業家たち。彼らの活躍を見ていると、もっと生きやすい社会への道は無数にある気がします。

 全国各地の変革に挑む人を応援する仕組みも充実してきました。

 例えば、ソーシャルファンディング。インターネットで活動をPRし、共感した人から幅広く資金を集められます。

 2月27日に紹介した島根県津和野町の中学生鈴木智也君(13)。廃校危機の母校左鐙(さぶみ)小学校を救うため、子育て世帯の移住を受け入れる空き家の改修費700万円超を集めました。極小規模の学校の良さを訴える鈴木君の話を聞き、「存続希望は地域エゴではなかったのか」と考えを改めた校区外の大人もいたそうです。

 革命の芽は北陸にも。意欲的な挑戦を育む輪が広がることを願います。

  

 

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