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ユビレジ 進化続く ベンチャー企業社長 木戸啓太さん(30)加賀市出身

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 タブレット型多機能端末「iPad」をレジに活用するアプリ「ユビレジ」。石川県加賀市出身の木戸啓太さん(30)=東京都渋谷区=が社長を務めるベンチャー企業が5年前、世界に先駆けたサービスとして発売した。発売当初はレシート発行もお釣りの計算もできない低機能だったが、利用者らの改善要望に向き合い、国内外で愛されるアプリへと成長した。(聞き手・福岡範行)

低機能から 改善、改善

 −機能が不十分なままで発売したのはなぜ。

 使い物にならないぐらいの完成度だったが、そうするしかなかった。大学院生時代に2人で起業したが、当時はベンチャー企業を育てる環境がまだ乏しくて、大企業みたいに開発に時間をかけるのは難しい。いろんなベンチャーの中で埋もれないためにも、ある程度目立たないとどうしようもなかった。

 最初は長野県松本市のたい焼き屋さんが導入してくれたけれど、結構早い段階で利用しなくなった。当時の機能は、会計総額が計算できて終わり。何もかもがだめだった。

 それでも、フランチャイズ展開するお菓子屋さんの幹部が「面白そうだ」と興味を持ってくれて、数カ月がかりで改善に付き合ってくれた。レシートの発行やお釣りの計算ができるようになって、年代や性別で客層の分析もできるようになって。別の企業の社長は、ユビレジがあまり売れていない時期に、他の仕事を回してくれた。そうした方々に引き上げていただいたと思っている。

 −ユビレジの仕組みは、どのように発想した。

 大学時代にバーテンダーのバイトをしたときの経験が、問題意識としてはあった。紙と電卓で売り上げを計算して、本部にファクスで報告。すごい非効率だった。その時は、面倒だけど仕方ないと思っていた。その後、別の仕事を経験し、引いた視点を持ったから新しい改善に気づけたと思う。

 学生のときは、30業種ぐらいバイトをした。高校生で起業家になりたいと思って、東京の大学に来たけれど、働くってことを分かっていないと気づいた。だから、いろんな経験をした。ビルの工事現場で荷上げをしたことも。すぐに力仕事は向いてないと思いましたけどね。

図書館の本 運命決めた

 −起業家を志したきっかけは。

 大学受験をするときに進路を考えていて、たまたま地元の図書館で起業家を紹介する本を見つけたこと。ビル・ゲイツさんとか松下幸之助さんとか何人かの本があって、ダイナミックで面白かった。加賀市の実家は米屋で、母親は養護教諭。子どものころは、自営業とか公務員とか、限られた職業しか思いつかなかった。そんな状況で知った起業家の生きざまは素晴らしいと感じた。東京に行けば、会社はつくれるだろうと短絡的に考えていた。

 −ユビレジを使う店舗は1万店舗以上に増え、売り上げも昨年比の2倍に伸びた。手応えは。

 正直、まだまだ。ヒットしたと言っていいとも思っていない。導入店舗数では、目標と比べたら、まだまだ少ないです。

 −競合商品も増えている。ユビレジの強みは。

 かゆいところに手が届く使い勝手、仕事が楽しくできるサービスを最初から心掛けてきた。今では、自動で売り上げの分析をしているから、ご飯を食べながらゲーム感覚で確認ができる。会員カードで集めた顧客情報と購入履歴を関連づけて、常連客の好みなどをデータで分析できる。「顧客ごとに会計の割引率を変えて、常連客を割安にしたい」といった、きめ細かな要望も寄せられます。

 最近、ユビレジを使っている店に行くと、思いも寄らないクリエーティブな使い方をしている。例えば、飲食店で注文伝票を会計しないままためておいて、付け払いに対応したり。意外な使い方をしてくれるのはうれしいし、他のお客さんに紹介もする。ユビレジで使うiPadにタイムカードのアプリを追加している店も。タブレット端末だから、自由度は高い。

客層 飲食店から幅広く

 ユビレジという名前だが、レジというより、実質は店舗をうまく運営するためのサービスだと考えている。余計な事務を減らせば、停滞する地方の経済も生産性が上がるはずです。

 今のお客さんの層は小規模な飲食店が多いけれど、機能を改善すれば、より広い企業規模、業種にも対応できる。海外に売り込むことも必要。会計ソフトやポイントサービスとの連携なども進めている。可能性としては、やれることはいっぱいあります。

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 きど・けいた 1985年、石川県加賀市生まれ。小松高校を卒業後、慶応大理工学部に進学。同大学院時代の2009年9月に株式会社「ホームサーチ」を設立。ユビレジを発売後の11年2月に社名もユビレジに変更した。

アプリ「ユビレジ」って? 

iPadをレジ化

店のレイアウトに合わせて伝票を配置できるユビレジの画面。奥はレシート印刷機などの周辺機器=東京都渋谷区で

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 iPadをレジ代わりに使い、売り上げの分析なども即時にできるアプリ。注文の入力では、画面上の一覧表から商品を選ぶだけで会計総額が計算でき、直観的に操作しやすい。会員カードなどの顧客情報を会計のデータと関連づけ、きめ細かな分析やサービスもできる。導入費用はiPad代を除き月額0〜5000円。スマートフォン決済サービスとの連携なども進めている。

ツエーゲンも導入

「ユビレジ」が活用されているツエーゲン金沢のグッズ売り場=金沢市の県西部緑地公園陸上競技場で

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 9月、金沢市の県西部緑地公園陸上競技場であったサッカーJ2ツエーゲン金沢のホーム戦。公式グッズ売り場の行列は試合開始が近づいても途切れなかった。売り上げは昨年の倍以上。今季、J2に昇格した効果が色濃く表れた。

 その急増に合わせ、4月にユビレジを導入した。グッズを販売する機会は年間数十回のホーム戦の会場がほとんどで、売り場は仮設テント。据え置き型のレジは置けず、これまでは手計算で対応していた。

 ユビレジ導入で、会計担当のアルバイトらが30種類近いグッズの値段を覚える必要はなくなった。売り上げの推移を即時に確認でき、混雑時には本部から担当者が様子を見に行くことも。雨の日にポンチョの販売を増やすなど、試合ごとの販売戦略の成果もグラフで把握できる。

 今後は、ファンクラブ会員のデータを売り上げ分析に生かし、ファンが喜ぶ新商品開発を目指す。クラブ運営部の次長中山大輔さん(33)は「ゴール裏の応援団とは意見交換してきたが、別の場所でゆっくり観戦するファンの思いを知るのは難しかった。商品を通じて、コミュニケーションを取っていきたい」と語った。

 

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