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アニメ×工芸 無限の職人技 高岡の有志 グレンラガン兜を再現

(C)GAINAX・中島かずき/アニプレックス・KONAMI・テレビ東京・電通

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 アニメをモデルにした伝統工芸の作品作りが全国各地で広がっている。富山県高岡市の職人集団「高オタクラフト実行委員会」(高オタ)は2014年、人気アニメ「天元突破グレンラガン」の五月人形兜(かぶと)飾り制作を通じて職人同士の結束が高まり、予想以上の名品を生んだ。代表者は実感を込めて語る。「職人の技は無限だ」(担当・広田和也、福岡範行)

若手が結集 ファン感服

 高オタは、アニメが好きな高岡銅器や漆器の若手職人らで13年3月に発足した。代表を務める彫金職人和田瞬佑さん(32)=高岡市=は、「普段は接点の少ない職人たちも、アニメ好きという共通点で、集まりやすかった」と語る。

 高岡銅器の制作は分業制。鋳造や着色、彫金仕上げの工程は別々の工房で担当し、それぞれの技術力は高い。だが、制作全体の管理や職人との調整は問屋が担うので職人同士の日ごろの交流は限られている。

 高オタでは違った。高岡の伝統技術を結集しようと議論は白熱。グレンラガンの五月人形作りは、材料費を度外視し、普段あまり使わない高級な技術をふんだんに盛り込んだ。「好きなものを作るなら、半端なものは作れない」と、メンバーの思いは一致。本気で挑んだからこそ、試作品作りが優れた技術を見せ合う場になり、「こんなことできるんだ」と驚きあった。

 その分、値段は高くなった。高さ15.5センチ、重さ880グラムの兜にドリル飾りや背景板を付けた最高級セットで30万円を超え、あまり売れないと予想した。だが、14年7月に千葉市で開かれた展示会に出すと、多くのアニメファンに「良いもの見せてもらった」「感服です」と好評。受注も入った。

 思わぬ好反応に、和田さんは「とても、やりがいを感じました」と頬を緩める。伝統工芸に携わる若手職人は減少傾向にあるが、和田さんは高オタでの活動に希望を抱く。「互いの仕事を理解し、さまざまな仕事を紹介しあえるようになったのは心強い。密になった若手職人同士の関係を足掛かりにし、次は採算を考えた作品を作りたいですね」

好きだから集まった技術

和田瞬佑代表に聞く

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 アニメを通じ、伝統工芸を見直す機会をつくった高オタ。その出発点は、「アニメが好き」という純粋な思いだった。和田代表は「変にビジネスを意識せず、好きなものを作ろうとスタートました」と語った。

 −どうしてアニメと伝統工芸をコラボした?

 子どものころからアニメやゲームが好き。大学卒業後はゲーム会社でコンピューターグラフィックス制作をしました。11年8月に家業の彫金を継いでから、ゲーム会社の経験を生かしつつ、アニメに関わる仕事があれば楽しいなと、高オタ結成を呼び掛けました。

 −題材にグレンラガンの五月人形を選んだのは?

 みんなグレンラガンが好きだから。熱い男の成長が勢いのある作画とせりふで胸に響く名作なんです。それに、高岡の伝統工芸を集約させたかった。制作には彫金や鋳物、着色の職人など10人くらい関わった。こんな作品は、ほかにはないはずです。

 −和田さんの担当は?

 背景板のキャラクターを彫金で描きました。線の太さや彫りの深さを変え、筋肉の力の入り方も伝わるようにこだわりました。

 −完成品を見た感想は?

 「すごいの作っちゃったな」と(笑)。職人たちの高い技術を、今までにない組み合わせで盛り込んでいる。仕事の垣根を越えて連携すれば、どんなものでも作れると実感しました。

組立担当・金属加工業笹島幸治さん(40)

 傷が付かないように白い手袋を着けて作業。ドリル穴を目立たせず、仕上がりのバランスを意識した。

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鋳造担当・鋳造業道具志朗さん(40)

 砂型を使い、自然な光沢やくすみのある風合いを実現。金属らしい重厚感も重視。部品によって鋳造法を変え、質感を変化させた。

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木工品調達担当・銘木業能登宣行さん(28)

 イベント展示用に台座を提供。木目や質感、形が千差万別の一枚板の中から兜飾りが映える板を選んだ。

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ドリル原型担当・井波彫刻師西村宜繁さん(43)

 木彫りならではの荒々しさにこだわった。形をあえて均一にせず、のみで大胆に削った跡を残した。

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兜塗装担当・着色士川津良尚さん(34)

 鏡面磨きが施された部分は塗料をかけ過ぎずに輝きを生かした。鉄さびを混ぜた塗料で古びた雰囲気も出し、重厚感を持たせた。

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ドリル取っ手着色担当・着色士野阪和史さん(28)

 黒漆の上に、さびた鉄粉を混ぜた液を焼き付ける伝統技術「鉄漿(おはぐろ)着色」を重ね、つやと奥行きのある黒色を表現した。

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兜原型担当・会社員沢紘司さん(28)

 個人的に学んでいるろう型鋳造の技術で原型を作った。ろうを流したときのゆがみを装飾に生かし、手仕事ならではの味を出した。

 天元突破グレンラガン 2007年に放送されたアニメ。地下世界に暮らしていた少年が巨大ロボット「グレンラガン」とともに地上や宇宙で戦い成長する物語。08、09年に映画化された。

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人形、刀、九谷… 全国に広がるコラボ

 伝統工芸とアニメや特撮のコラボは全国各地で広がっている。博多人形の人形師らのグループ「HAKATA DO+」(北九州市)は昨年、「銀河鉄道999」などで知られる漫画家松本零士さんのキャラクターを博多人形で再現して、企画展を開き、大反響。別の商品企画も動き始め、事務局担当者は「チームを組んだことで、新しい提案の窓口になれた」と喜ぶ。

 全日本刀匠会事業部(岡山市)は、人気アニメ「エヴァンゲリオン」にちなむ日本刀を作り、国内外で企画展を開催。担当者は「刀身に女性キャラクターを彫るなど、新しい試みで、現代刀の美術性を押し広げる機会になった」と語る。

 石川県の能美市、小松市の絵付け問屋など11社のグループ「九谷焼彩匠(さいしょう)会」も4年前から特撮「ウルトラマン」とのコラボ商品に取り組む効果として、「期間限定でフィギュアの絵付けに挑戦したことで新たなデザインが生まれ、器の絵付けに生かされるケースもある」と表現の幅の拡大を挙げた。

 九谷焼ではスタジオジブリ作品「となりのトトロ」の世界観を表現した豆皿がグッズ企画販売会社「ムービック」で発売中。関連商品で信楽焼の箸置きや「ほんのり灯」もある。

 

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