トップ > 北陸中日新聞から > popress > 特集 > 記事

ここから本文

popresspopress【特集】
 

咲いた咲いた ハッピーの花 「打ち上げ」家業次ぐ

花火大会に向け、準備を進める大橋智子さん

写真

 夜空を彩る一瞬の芸術、花火は大勢の人々の手で打ち上げられる。富山市の大橋智子さん(37)もその一人。2004年、家業の花火業者「マツダ」に後継者として戻った。花火玉は製造しない打ち上げ専門の業者で、現場の作業は体力勝負。男性の活躍が際立つ仕事場で、自分も貢献するために試行錯誤を重ねている。

*子ども時代から花火は好きでしたか?

 大好きだったわけじゃないんです。親について行ったこともありますが、打ち上げているときのドーンと響く音が怖くて、車の中で待っていた。きれいだなと眺めていたイメージは、あまりありません。

 近所の大人から「お父さんが打ち上げているんだよ」と教えてもらいましたが、変わった仕事だということもよく分かっていませんでした。大学時代に親の仕事を意識するようになり、2人姉妹の姉も嫁いだので、漠然と私が継ぐことになるのかなと思い始めました。

 大学卒業後は、名古屋市の英会話学校の会社で営業などをしていたのですが、入社2年目の冬、富山城で父親の打ち上げたカウントダウン花火を見たときに、この仕事をしようと気持ちを固めました。多くの観客が音楽に合わせた花火に歓声を上げるのを真横で見て、新年の喜び、感動が広がる感じがしました。会社は3年で退職し、家に戻りました。

大橋智子さんらが打ち上げを担った四方花火大会(多重露光)=いずれも19日、富山市の四方漁港で

写真

筒、玉 重いけど

*仕事の内容は?

 うちでは花火玉は作っていなくて、打ち上げが仕事です。花火大会の会場に合わせた構成を考え、当日は打ち上げ用の筒などを設営します。コンピューターで点火する装置もあり、音楽と連動したエンターテイメント性の高いプログラムにも力を入れています。事前に導火線を取り付けるといった地味な作業も多く、同じ細工を何千個も作ることがあります。富山で最大級の神通川の花火大会の準備は冬から他の仕事の合間に進めます。

 父は、「現場で学べ」という考えだったので、04年の夏から花火の打ち上げ準備を手伝いました。大きな大会では25人ほどで作業しますが、女性は母と私だけ。打ち上げ用の筒や花火の玉を運ぶのは重くて、男女の違いを感じました。

 小さい筒だと10本ほどまとめて運びます。トラックの荷台は高いので、下ろすのがつらくて。私が一つ運ぶ間に男性は二つ、三つと運ぶ。限られた時間での準備ですから、男性の力を借りないとスムーズに進まない。力仕事が不得意な分、別の所でカバーしたいと思っています。

見る人の目線 大切に

*どう努力している?

 最近、大きな大会では観客席に近い本部席で花火を見ます。打ち上げ現場から見る花火はすごく迫力がありますが、お客さんからの見え方とは違う。自分が考えた打ち上げ方がどう見えるのか確認すると、『もう少し、こうした方がよかった』と思うこともあります。実際に見ることで、もう一度集中して仕事ができます。

 どの花火大会も、その場所に住むみなさんが自分たちの大会にかける思いは強いと感じます。会場でお客さんの声を感じながら、地元の人と一緒に大会をつくりたい。音楽と組み合わせた花火で同じ曲を使うとしても、見せ方は変えていかないといけないと思う。空に昇る軌跡も花火の見せ方の一つ。たくさんの花火を同時に打ち上げたり、角度を細かく変えたり、アイデア次第でいろんなことができると感じます。

 プロポーズで花火を上げたいと依頼されることもあります。大きい花火は周囲の人がびっくりしてしまうので、使いません。その代わり、花火の彩りを工夫したり、何十連発で打ち上げたりすることで、空にぱーっと花火が広がるような華やかさは出ると思います。

写真

*後継者として思いは?

 打ち上げ現場で先頭を切ってきた父と同じようにはできません。性別の違いはあると思います。そう感じる分、みんなの協力への感謝は忘れてはいけないと思うし、忘れられない。

 夏場は花火大会がずっと続き、休む間はありません。体力的には厳しいけれど、それ以上に面白いって感じています。まずは自分が「うまくいってよかった」と喜びを持てる花火じゃないと、気持ちが入らない。自己満足だけでもいけない。自分もみなさんも喜べる、気持ちのこもった花火を打ち上げていきたいです。

写真

*女性と花火*

玉作りに昔から活躍

 男性仕事のイメージが強い花火業者の世界だが、花火玉作りでは、女性の力も必要とされてきた。

 日本煙火協会によると、花火の製造工場では、仕上げの「玉貼り」は女性が担うことが多いという。花火玉の表面にクラフト紙をのりで貼り、乾燥させる作業を何回もくり返す工程だ。河野晴行専務理事(65)は「女性は、この作業を根気強く、こつこつ続ける」とたたえる。

 10年ほど前からは、玉の製造から打ち上げまでこなす女性の花火師も目立ち、女性だけで花火の出来栄えを競い合う大会もある。女性の繊細な感覚が、花火の芸術性の向上に役立っているという。

 打ち上げ現場で作業に従事する人たち向けには、協会が保安講習を実施し、「煙火消費保安手帳」を発行。全国で約1万5000人が所持し、そのうち女性は1000人ほどだと推計されている。

  担当・福岡範行

 

この記事を印刷する

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索