トップ > 北陸中日新聞から > popress > 特集 > 記事

ここから本文

popresspopress【特集】
 

歓迎!わが家は旅の宿 ネットで貸し借りサービス Air bnb(エアービーアンドビー)

宿泊しているマンションの一室でホストらと談笑する外国人旅行客=金沢市内で

写真

 自分の家や部屋を宿泊場所にして旅行者に貸し、対価を受け取れるインターネットのサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」。米国から始まって世界中に広がり、北陸でも増えてきた。貸し手にも借り手にも便利な半面、旅館業を脱法的に営む仕組みにも見える。旅の形を変える革新的なサービスか、はたまた安全に疑問のあるホテルもどきか−。金沢で取材した。(担当・日下部弘太)

ホスト×ゲスト交流魅力

外国人客に人気

 7月上旬、金沢市内でAirbnbの現場をのぞいた。何の変哲もないマンションの1室。日本を旅行中のオーストラリア人の女子学生3人が談笑していた。東京や大阪、広島を巡り、金沢にやってきた。

 Airbnbを使うのは今回の旅が初めてだが、「どこも清潔で、スペースも広い」とフィービー・トビン=ホワイトさん(20)は大満足の様子だ。

 ホスト(貸し手)がAirbnbのウェブサイトに自分の家や部屋を登録し、ゲスト(借り手)の旅行者に開放する仕組み。ゲストは旅先の町や周辺にある物件をサイトで探し、気に入った物件があったらホストに連絡。承諾が得られると宿泊できる。

 自宅に迎え入れるホームステイ形式もあれば、ネット上のやりとりだけで鍵を渡して泊める形も。米国サンフランシスコで始まり、世界に広がった。全世界で120万件を超えるといい、北陸も金沢、富山をはじめ各地に物件がある。

 海外には城やツリーハウス、風車、ほろ馬車といった宿泊先も。普通の旅行では味わえない体験が売りだ。信頼性を確保する方法として、ゲストは宿泊した感想をその物件のページに書き込むことができ、他の旅行者たちの参考になる。同じページにはホストの返答率や返答までの時間も載っている。

 オーストラリア人学生が泊まった物件は、金沢市内の女性会社員(32)が運営。今春に始めた。1泊数千円で、客の9割は外国人という。若者を中心に、50〜60代も。

 外国語のやりとりは当然出てくる。堪能である必要はないが、夜中に「無線LANが使えない」「お湯が出ない」と連絡が来て駆けつけることも。初めて来るゲストが迷わないよう、地図は丁寧に解説した。

安くて予約簡単

 これまで大きなトラブルはない。特に欧米人は「家を借りる」という意識だからか、多くは出る前に掃除をしてくれる。ただ、日本人は散らかしたまま去るケースもある。ホテルの延長というイメージらしい。また、「あれがない、これもない」と求める人も。女性は「紹介ページで部屋にある物は提示しているんですが…」と苦笑する。

 うれしいのは金銭的な利益だけでなく、ゲストと一緒に食事に行くなどして触れ合えること。ホストとゲストが交流できる物件は稼働率も高いという。

 ゲスト側にもメリットが多そうだ。フィービーさんは「安いし、英語で紹介されているから日本の他のホテルよりも予約がしやすい」と感想を語った。

 「観光立国」を目指す日本。新幹線が開業した北陸も、観光客の誘致に躍起だ。オーストラリア人学生に、この仕組みが広がれば観光客増につながるか聞いてみると「百パーセント」とテイラー・ミラーさん(20)は断言。キャサリン・ギリースさん(20)は「特に学生ら若者には効果的だと思う」と付け加えた。

現行法では営業許可が必要

でも法律古く実情と合わず

写真

 人を泊めてお金をもらう行為は、法律上は県や、保健所のある市に申請し、許可を受けることが必要だ。その法律は旅館業法。Airbnbで紹介されている物件には許可を取っていないものも多いとみられる。

 旅館業法では施設の広さなどが定められており、家の1部屋だけ貸したり、住居専用地域にあったりすると法に触れる恐れがある。ただ、この法律ができたのは60年以上前で、インターネットを介した家の貸し借りは想定していない。法による一方的な規制には利用者から疑問の声がある。

 国は規制緩和へ向けた検討を開始。6月30日の閣議決定では、使っていない期間の別荘の貸し出しを「地域の実情に応じて」認め、イベント開催時の民泊も「公共性が高い」として法の適用除外とする方針を示した。Airbnbは今後、実態把握や検討をし、来年にも結論を出すという。

 金沢市衛生指導課は、ホスト側に営業の許可を取るよう指導を始めた。物件は急速に増えており、建物の所有者と運営者が違うことも。実態は把握しきれていないという。担当者は無許可の物件を「直ちに警察に告発することは考えていない」と言うが、国の検討の方向性も見つつ、「現行法がある以上、その基準に合わせてもらわないといけない」という立場だ。

 東京出張時にAirbnbを使った石川県七尾市の会社役員森山明能さん(31)は「こちらもリスクを分かった上で利用している。早く法が追いつかないと」と指摘。Airbnbを「宿と人でなく、人と人とのマッチングサービスだ」と語り、地域に好影響を与える可能性を強調した。

旅行者守る 制度が必要

金沢星稜大・佐野講師

写真

 金沢星稜大の佐野浩祥(ひろよし)講師(観光学)は、Airbnbを「利用者の宿泊の選択肢が広がり、家に泊まることは地域を深く知る入り口にもなる。理念としては素晴らしい」と評価した上で、「何らかの制度づくりが必要だ」と指摘する。

 佐野さんによると、旅館業法の精神は、旅行者を守ることにある。安全面や衛生面の基準が法の施行令や県条例などで細かく定められている。こうした規定がない状態では、「盗難やわいせつ事件といった犯罪、火災など多くのリスクが考えられる。不法滞在者の拠点になる可能性もある」。

 東京では無許可営業の疑いで逮捕例も出ている。佐野さんは旅館業法に時代に合わない部分があることを認めた上で、「まだ大きな問題が起きていないだけ。法に準じた制度をつくるべきだ」と話した。

Airbnb https://www.airbnb.jp/

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索