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別世界へテークオフ 若者熱中 タンデム パラグライダー 記者が体験

山口隆文さん(右)とタンデムフライトを体験する浜崎陽介記者=いずれも石川県白山市で

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 石川県白山市のパラグライダーの名所「獅子吼(ししく)高原」で、2人乗りの飛行体験「タンデムフライト」の人気が急上昇している。利用者は10年前の4倍もの800人ほどに増え、その7割が20〜30代だ。好奇心の赴くままに、本紙記者(25)も早速テークオフ。そこには別世界が広がっていた−。(担当・浜崎陽介)

ドキドキ▼感動マックス

 「風が吹いてきたら行こう」。ドキドキしながらインストラクターの合図を待つ。ついに目当ての向かい風がやってきた。「さあ、走って」−。標高450メートル。木が1本もない急斜面を駆け下りると、背中側につないだ翼が開く。後ろにぐっと引っ張られる力を感じつつ、飛行中の椅子代わりになる「ハーネス」に座ると、高原の地面がみるみる遠ざかっていった。

 視界が一気に広がった。正面も真上も360度大空のパノラマに包まれる。雲が近く、手が届きそうだ。はるか下には、蛇のような手取川が見え、金沢平野に市街地が広がる。旋回すると、後方の山並みの稜線(りょうせん)や初夏の深い緑が目に飛び込んでくる。

 空を飛んでいる−。恐怖心は吹き飛び、興奮と感動は最高潮に。これが鳥たちの見ている世界なのか。

 晴れわたった日は15キロ先の日本海まで眺められる。上級者は上昇気流に乗り、上空1000メートル以上から白山はもちろん、立山や日本アルプスを望むという。

上昇気流をつかまえろ

見上げれば大きく広がった翼と一面の空

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 パラグライダーは長方形のパラシュート(キャノピー)で大空を飛ぶスポーツ。タンデムフライトは2人乗りのため、素人でもインストラクターと一緒に飛行できる。記者の体験は、石川県内唯一の「獅子吼高原パラグライダースクール」の3代目校長で、「タカさん」の愛称で親しまれる山口隆文さん(39)=金沢市=が担当してくれた。

 風を切る音が心地よく、体全体で涼しさを感じる。山口さんが「お、トンビがいる」と声を上げた。上昇気流を探すときの目印になる鳥だ。うまく体重を移動させて旋回し、気流をつかまえる。途端に揺れを感じた。「今、上昇しているよ」

 エンジンもプロペラもないパラグライダーは、上昇気流を活用することで長く飛べる。上昇気流は、雲がぶつかったり、日光で空気が暖まったりすると生まれるそうだ。普段とは比べものにならないほど雲の動きや風の向きを意識する。

 徐々に高度を下げ、最後は目標点の草地に着地。15分の大空の旅を堪能した。

フライト動画で人気に

次々と大空に向かってテークオフするフライヤー

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 スクールは開校31年目。山口さんらスタッフ3人で、タンデムや、低所から1人で飛ぶフライトの体験、ライセンス取得コースの指導をしている。

 タンデムの利用客が急増したのは、ここ5年だ。北陸3県や愛知県などの若者が、インターネットで見つけてやってくる。山口さんは「フライト中に撮った動画を流せるユーチューブをはじめ、ネットにはコンテンツが無数にある。それを見た若者が遊園地に行くノリで来る」と語る。

 山口さん自身もホームページなどでのPRを充実させてきた。10年も前から自撮り棒そっくりの道具を自作して、フライト中に撮影した写真をプレゼントしてきた。「ようやく流行が追いついてきた」と笑う。

 パラグライダーの魅力にも熱く語る。「雲の形も、風の強さも吹き方も、景色だって同じ日はない。読み切れない自然を相手に、自分の判断と感覚だけで操作し、可能性を引き出していく楽しさがある」

インストラクターは不足

飛行中の光景。眼下には金沢平野が広がる

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 近年のパラグライダーの性能・安全性の向上も追い風となり、全国的にみてもタンデムフライトの体験者は増えている。一方、タンデムのパイロットらを担うインストラクターは人手不足で、とくに若手の育成が課題になっている。

 公益社団法人「日本ハング・パラグライディング連盟」によると、国内のパラグライダー愛好者は約1万人。インストラクターは400人弱いるが、高齢化が進み、50代以上が半数を超えるという。

 若者は、1人で自由に飛行できるパイロットのライセンスを取得する人がそもそも少ない。

 獅子吼高原のライセンス取得コースには、約100人が在籍。うち20〜30代前半の若者は2割ほどで、全国的に多い方だが、それでもインストラクターを目指す人はいないという。学生時代にパラグライダーをやっていても社会人になると離れてしまう。

 パラグライダーが盛んな欧州では若いフライヤーが多い。「かっこいいというイメージが強いから」と山口さんは推測する。日本でも、若者に魅力をPRすることが第一歩。山口さんは「若い人たちにライセンスを取りにも来てもらい、そこから、いかに大事に育てるか。1人で飛ぶフライヤーをどんどん増やしていきたい」と目標を語った。

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 獅子吼高原パラグライダースクール ライセンス取得は入校料1万円、年間講習料4万円。4段階のライセンスがあり、最上級の「パイロット」を取得すると全国の飛行エリアで自由にフライトできる。

 体験はインストラクターと2人乗りで飛ぶタンデムフライトと、1人乗りのコースがある。体験料はいずれも1人1万円。タンデムは、ゴンドラ代650円も必要で、フライト中の写真データがもらえる。

 シーズンは3月中旬〜12月中旬。要予約(電)076(273)0658

 

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