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萌えって何? 科学しよっ!

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 アニメや漫画などのサブカルチャーは、海外に発信される日本文化の代表格。欠かせない要素の一つが「萌(も)え」だ。よく使われる言葉だけれど、そもそも萌えって何? 科学的に分析している研究者を訪ね、その正体を探った。

金沢工大・山田教授が分析

心の葛藤 楽しむこと

 金沢工業大感動デザイン工学研究所(石川県白山市)の山田真司教授は「萌えの科学」をテーマに研究し、「萌え」を感じさせる顔の描き方を検証した。

 さまざまな女性キャラクターの顔からどんな印象を受けるかを調べ、「萌え」と捉えられる顔は、目や輪郭のバランスが美しく整っているという傾向を確認。ただ「美しい顔」と言っても萌えを感じさせるものもあれば、いわゆる美人顔もある。その違いはどこにあるのか。

 プロが考える萌え顔や美人顔の女性キャラを一つずつ作ってもらい、そこから輪郭や目の大きさを少しずつ変えて、50パターンの顔を作成。学生32人に見せ、印象を尋ねた。調べたのは「大人びた−子どもっぽい」「力強い−弱々しい」「シャープな−丸みのある」など19の項目。どちらの印象に近いかを7段階で選んでもらい、最も萌えを感じさせる顔とその特徴を絞り込んだ。

 萌え顔が美人顔と違う決め手は、実験の結果、子どもっぽさだと分かった。さらに細かく分析し、理想的な萌え顔の“設計図”も探った。子どもっぽい顔の特徴は、目が大きくて、輪郭が丸いこと。そこに美しさを加えるには、輪郭と目の大きさのバランスが重要という。

 典型的な萌え顔は、まず目を大きく描く。目の大きさに合わせて輪郭を丸くし、全体のバランスを整えて仕上げる。

 実験では、目や輪郭の理想的な比率も割り出した。輪郭は、顔の縦幅が横幅の0.92〜1.03倍で、理想は0.98。実際に、アニメのキャラの顔を測ってみると、多くのキャラがこの比率に当てはまった。

    ◇    ◇

 山田教授らは、日本文学の学術誌「国文学」の2008年11月号に掲載された萌えをテーマにした論文14本も参考に、考察を深めた。

 萌えの正体とは、対象との間に何らかの障害があり、近づきたくても理性によって自らブレーキをかけてしまう心の葛藤を楽しむことという。

 アニメのキャラをどれだけかわいいと思っても、実際に手は出せない。憧れと現実のはざまで耐え忍ぶ思いが萌えを生むという。

 子どもっぽい顔に萌えを感じやすい理由は「自分より小さいものであると認識し、『守ってあげたい』『自分のものにしたい』という思いを抱くから」と山田教授は分析する。手を差し伸べたいのに、決して届かない。その葛藤がたまらなく萌えさせる。

アニメ 急ぎの現場なら

制作に役立つ?

 ついに解明した萌え顔の黄金比。アニメの制作に実際に役立つのだろうか。

 アニメ制作者らを育てる代々木アニメーション学院金沢校(金沢市)の常任講師中田翔子さんは「あまりガチガチに数値化すると、描くのが嫌になる学生も出そう…」と心配する。キャラクターの描き方を指導する基本は「描きたいものを描いてほしい」。トレンドの変化に対応するため、柔軟な感性を重視する。

 「企画立案で素早くキャラクターのイメージを作る必要があるときに、こうした指針があると作業がはかどりそうですね」とも語った。急ぎの現場では役立ちそう。

感動デザイン工学研究所

不可能への憧れから生まれた

山田真司教授の話

 多くの人がアニメなどのキャラクターに萌えを感じるようになった背景には、憧れるアイドルの変化もあると考えています。

 1980年代後半のアイドルは雲の上の存在でしたが、今や会いに行き、握手できるほど身近になりました。そこで「近づきたいけど現実には不可能」という思いが、アニメなどに向かったのではないでしょうか。画面の中という絶対に手の届かない存在への憧れが萌えの概念を生むきっかけになったのでは、と考えます。

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 今後は、「ツンデレ」が人気の理由を明らかにしたいです。最初は素っ気ない態度だったのに、ふとした時に心を許したり照れたりする性質。

 その鍵は、落語にあると思っています。落語家の桂枝雀さんによれば「笑いの本質は緊張の緩和にある」。緊張状態の人は安心を感じると、ほっとして自然と笑えます。最初の「ツン」が緊張、その後の「デレ」が安心だとすると、両者には共通するものがありそうです。

理想の萌え顔を探った手法で、学生たちは他の代表的なキャラクターも分析した

色づかいも影響大!

ポケモン研究 大学院システム設計工学専攻博士課程前期1年 柳田理宇(りう)さん

 大人気ゲーム「ポケットモンスター」に登場するモンスター236体を調べました。印象は、大きく分けると「親しみやすい」「迫力がある」「鋭い」という観点から決まるようです。体の大きさや、目や爪の鋭さだけでなく、色づかいも影響することが統計的に明らかになりました。親しみやすいモンスターは黄色やオレンジ色、迫力のあるものには赤が使われるなどの傾向がありました。

会いたさが人気の秘密

メディア情報学科4年 大沢志(しずか)さん

 キャラの人気を左右する要素を研究しました。過去のゆるキャラグランプリに出場したキャラから50体を選んで調べてみると、人気が高いキャラは「活発さ」や「親しみやすさ」「身軽さ」などの印象が強く出る傾向を見つけました。見る人に「会いたい」と思わせることがポイントのようです。最近は動きの大きいキャラが人気を集めやすいことも分かりました。

 担当・稲垣遥謹

 

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