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かがやき増す北陸のパフォーマーたち 魅せる一期一芸

2月15日、宇多須神社での「皇神」のパフォーマンス

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 鮮やかな芸で出会った人の心を即座につかむ。その技を日々、磨くパフォーマーたち。北陸新幹線で訪れる観光客を一期一会の「おもてなし」で笑顔にすれば、リピーターは増えるかも。全国的にも珍しい大道芸人専門の事務所もある北陸。地元に根差す若手パフォーマーを訪ねた。

店で コンテストで

 新潟県や大阪府、遠くは山口県からも。金沢市の繁華街、片町にある「ジガーバー・セントルイス」には石川県外の客が家族の誕生日などにやってくる。20代のスタッフらがボトルやシェイカーのジャグリングで華を添えてくれるからだ。

 ショーを始めたのは、15年ほど前。国内ではまだ珍しい技をスタッフは韓国まで見学に行った。送別会シーズンの3月は毎日のように客から依頼がある。店全体で盛り上がり、出張や旅行で偶然立ち寄った県外客がまた来てくれるきっかけにもなっている。

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 マネジャーの安田武史さん(43)は「お客さまに喜んでもらうために地酒や加賀野菜をそろえたり、英語メニューを用意したりしていますが、パフォーマンスもその一つです」。アルバイトも含めたスタッフ全員が練習を積んでいる。

 JR金沢駅前のレストラン「オリーブオイルキッチン」のスタッフ横越幹規さん(36)=写真=は「サプライズのパフォーマンスは、旅先の思い出になると思うんです」と力を込める。ジャグリングなどパフォーマンスを見せるバーも市内で開いていた経験を生かし、透明な球を宙に浮かせたように見せる技を昨秋から店内で披露。新幹線開業に合わせて炎を口の中で消す技も始める予定で、食事の場を意外な演出で彩っていく。

 60年前から富山市で続く全日本チンドンコンクールは毎年、全国のプロやアマチュアのちんどん屋が200人以上集結。パレードも含めた3日間で延べ10万人超の観衆でにぎわう。

2012年4月、全日本チンドンコンクールに出場したチームUMAMI=富山市で(味の素提供)

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 食品メーカー「味の素」の社員有志でつくる「チームUMAMI」は6年ほど前からほぼ毎年出場。北陸ゆかりの社員を中心に東京や大阪からもメンバーが集まる。北陸支店の小寺悠太さん(27)は「ちんどんが面白くて、遠くから何度も来るメンバーもいる。新幹線開業で東京から参加しやすくなるし、台本のネタにもしようと思います」と4月初めの本番に向けて、意欲を燃やしている。

炎とダンスの融合

 炎を自在に操り、ダンスなどを繰り広げるファイアパフォーマンス。北陸3県には10チームほどあり、地方では盛んな方だという。

 リードするチームの一つが「皇神(すめがみ)」。能面も使った和風の演出が持ち味だ。2月、薄闇に包まれた金沢市東山の宇多須神社で、紫色に照らされた拝殿を背に、みこ風の衣装の女性があでやかに舞い、男性陣が巨大な火柱をつくる。代表のTomo=本名・木戸智義(とものり)=さん(31)は「日本人ならではのテイストを出したい」と語った。

 皇神は2008年に設立。30歳前後を中心に石川、福井両県の男女9人が所属する。金沢の工芸や芸能などを紹介する昨年8月のイベント「かなざわ燈涼会(とうりょうえ)」では宇多須神社で演技を披露。金沢の学生イベントにも出演を続けている。

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 演出を重視し、青や赤の舞台用照明を導入。燃料には気化しにくい灯油を関東から取り寄せ、安全にも配慮する。

 異分野との交流にも積極的で、Tomoさんは石川県内のアパレルセレクトショップのグループが毎年開くファッションショーにも参加。屋内プールなどを舞台にしたショーで演出に携わり、モデルやデザイナーらと意見交換し、感性を磨く。「新しい分野とどんどんリンクして、表現力を高めたい」。壁などに動画を映すプロジェクションマッピングとファイアパフォーマンスの融合にも挑もうと考えている。

 「ショーを見た人が気に入ってくれれば、北陸に足を運んでくれる」。新幹線開業を機に東京のパフォーマーとの連携を増やし、地道にファンを呼び込むつもりだ。

プロが育つ土地柄

 富山県には大道芸人専門の事務所が二つある。全国的に珍しく芸人を直接雇っており、プロを育てる土壌になっている。

 そこから巣立った1人が富山市のハルキ=本名・清水春樹=さん(36)。マジックにジャグリング、ピエロにファイアパフォーマンスまでもこなす。

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 2月、同県小矢部市の道の駅メルヘンおやべで、おもむろにホイッスルをピピーッと吹き、客の足を次々と止めた。四つ、五つとお手玉の数を増やし=上写真、「次は七つ。富山でできるのは僕くらい」と、ちょっと大げさに胸を張る。ボールが投げられると、観客席に笑いが広がった。ボールは接着剤でまとめられていた。

 皿回しでは観客の子どもを舞台に上げて体験させる=左写真。かと思えば、口にくわえたナイフの切っ先に別のナイフを載せ、その上で皿を回す離れ業も。取材に人懐っこい笑顔で打ち明けた。「失敗もわざと。僕のショーはコメディーです」

 11年前、手伝っていた知り合いのバーでマジックを始めた。海外放浪中、2カ月ほど滞在したタイでは国内外のパフォーマーが集まる公園で大道芸の腕を磨いた。帰国後は一時、富山の事務所に所属して演出を学び、3年前に独立した。

 パフォーマー一本で生計を立てている。幼稚園の誕生会や忘年会に口コミで呼ばれることも増えた。ボランティアに頼む感覚での出演依頼もあるが、「『お金を払ってもプロの方がいい』と思われるように、日々芸を進化させたい」と、自宅の鏡張りの部屋で今日も練習を重ねている。

 先輩たちの背中を追って、同県立山町の大道芸人の事務所「オープンテック」にはパフォーマー志望の20代が2人所属。イベント運営の手伝いや営業もしながら芸を鍛える。

 田辺桂也(かつなり)社長(54)は「大道芸は、おもてなし。子どもからお年寄りまで、通り掛かった人全員を楽しませようと腕を磨いています」。地元に根差す芸人の多さは、地域の魅力になるはずと、売り込みに知恵を絞っている。

 担当・福岡範行

 

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