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popresspopress【特集】
 

痛板(いたいた) 白銀にキター!!

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 アニメも雪山も大好きだあああああ。そんな情熱があふれ出し、愛するキャラクターでスノーボードやスキーの板を飾る「痛板(いたいた)」でゲレンデを彩る若者たちが増えている。はた目には痛くも見えるボードに乗って、堂々とシュプールを描く。だって痛板はかわいいと思うから。そう。かわいいは正義だ。

ボードに萌えアニメ

 見渡す限り、すべてのスノーボードは萌(も)えるアニメ絵で彩られていた。水着姿やメード服の女性キャラがウインクし、イケメンキャラは流し目を送る。そんな板の間を行き交うのは、髪を蛍光グリーンやオレンジ、ピンクに染めたコスプレ姿の人たち。一般のスキー客に交じって、ミニスカートの魔法少女風のおじさんが滑り、美男子のアニメキャラになりきった女性たちが雪遊びを楽しむ。

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 1月、長野県白馬村のスキー場には、2次元の薫り漂う世界が広がっていた。日本痛板協会が毎年行うゲレンデジャック。3日間で延べ500人が全国各地から集結した。

ネット発 女性も満喫

 始まったのは2011年1月。インターネットの交流サイト「mixi」の痛板のコミュニティーの呼び掛けで、愛好者30人が集まって意気投合し、痛板協会を結成した。ジャックの映像はネットで配信。好きなキャラのステッカーを板に貼るだけで自作できる手軽さや、見た目の面白さが反響を呼び、20〜30代を中心に愛好者は増えた。

 mixiに06年に開設された痛板コミュニティーのメンバーは2000人以上。ジャックの参加者も年々増えて、内容も充実し、今年は初めて声優のトークショーを開いた。

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 参加者には、女性も目立った。名古屋市から初参加した女性2人組は「すっごい楽しい」と大興奮。新選組を題材にした女性向け恋愛ゲーム「薄桜鬼(はくおうき)」の痛板を持ち込んだ。

 痛板に乗れば、愛するキャラと一体化した気分になれる。紗友里さん(24)は「何でもできる気がする」と満面の笑み。知沙季さん(25)は「同じ趣味の人がこんなに集まることなんてない。どんどん話し掛けちゃいます」と声を弾ませた。

北陸もブームじわり

 北陸でも、ブームはじわりと広がる。日本痛板協会北陸支部長のZiM(ジム)さん(25)=富山市=によれば、北陸3県の痛板乗りは20人以上いるという。

 しかし、人の目は気にならないのか。ZiMさんは「恥ずかしさは今もあるんです」とはにかんだ。

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 素顔は切れ長の目のイケメンだが、地元で滑るときはフェースマスクを外さない。「スキー場では、顔をさらさなくてもいい。ハードルは低いですよ」

 デビューは5年前。ネットの動画で痛板を目にし、「なんだこれは」とくぎ付けになった。ちょうどアニメにはまり始めていたころ。スキーも子どものころからたしなんでいた。「痛車はむりでも、これならできそう」と制作を決めた。

 ショートスキーに人気アニメ「けいおん!」のキャラクター澪(みお)のステッカーを貼った。板全体をスプレーで黒く塗装し、エメラルドグリーンのラインも描いた力作だ。友人たちには「何作ってんだよ」と笑われたが、こだわりの板に乗るのは楽しかった。

 3年前には長野県小谷村で開かれた1泊2日の痛板の集まりに1人で初参加。「もともとはコミュニケーションは苦手」というZiMさん。最初はおどおどしていたが、周りの誰もがウインタースポーツもアニメも好きで、話し始めれば止まらなかった。「気の合う人が本当に多い。スキーだけより2倍も3倍も楽しい」。スキー場に足を運ぶ回数も増え、昨シーズンは12月半ば〜5月初旬に25回。5年前の5倍になった。

成田童夢さん(中)と記念写真を撮る女性参加者=長野県白馬村のHakuba47で

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 ゲレンデジャックの夜、特設レールを何度も何度も滑る痛板乗りがいた。こだわり気質だからか、滑走技術を高める努力をする人は多い。展示専用の板を作る人も。スキー場での楽しみ方の幅は広がっている。

 日本痛板協会の名誉会長で、スノーボードの元五輪代表成田童夢さん(29)は「アウトドアに触れてこなかったオタクもスキー場に来てくれる。うれしい限り」と喜ぶ。さらなる普及のために海外のイベントにも痛板を持参し、PR。「日本でこれだけ盛り上がってきた。次は世界です」と夢を語った。

著作権、マナー 十分な配慮を

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 痛板へのキャラクターの転用は、著作権の配慮が不可欠だ。日本痛板協会のメンバー、あべやすさんは「アニメファン個人の楽しみにとどめ、販売は禁止。キャラを使う時は制作会社にできるだけ許可を取るように促しています」と語る。

 スキー場でのマナーにも気を使う。ゲレンデジャックで、リフト近くに大量のスノーボードが並んだ時は、協会スタッフが別の場所に片付けた。「痛板乗りは目立つから、批判もされやすい。当たり前のルールを徹底しています」とあべやすさん。初心者には講習も開いて、ゲレンデでの注意点を伝える。

 昨年11月に白馬村を襲った長野北部地震のチャリティーも行い、38万6000円を村に寄付した。会場となったスキー場「Hakuba47」の松中亮さん(38)は「イベントが他のお客さんの迷惑にならないように、すごく考えてくれる。スキーやスノーボードが注目を浴びる機会にもなると思う」と期待していた。

痛車が並んだこまつオータムフェスティバル=2013年10月、JR小松駅前で

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痛車こちらも盛ん

 アニメキャラで車を飾る「痛車」は2000年ごろからアニメファンらの間で自然発生したといわれ、痛板より古くから普及。地域のイベントに生かす動きも出てきた。

 石川県小松市のJR小松駅前では、3年前から毎年10月、こまつオータムフェスティバルのイベントで、痛車が集合する。収容台数の都合で30台限定だが、関東、関西からの参加も増加。「痛バイク」や自転車版の「痛チャリ」も並ぶ。

 開催を提案した小松市の雪風さん(27)は「痛車のイベントが地元になく、開きたかった。同じ趣味の人と交流が深まるし、一般の人に見てもらえるのもうれしい」と語る。100〜150人だったフェスへのコスプレーヤーの参加数も、痛車ミーティングが始まってからは300人以上に増え、活気作りに一役買っている。

 フェスの担当者は「痛車がずらりと並ぶと、独特の世界が生まれて面白い。これまでにない人を誘客していると思う」と話した。

 担当・福岡範行

 

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