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ハラル食からイスラム知る 豚、アルコールNG…戒律守り処理

ハラル料理の店を開いたムハマド・アシュファさん(左)と妻の進藤昌代さん=金沢市間明町で

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 最近よく話題に上る「ハラル」。アラビア語で許されたものを意味する。豚肉の使用や飲酒などを禁じるイスラム教の戒律に従ったハラル食品が注目され、日本でも扱う店が増えてきた。イスラム教徒(ムスリム)は歓迎する一方、過剰なビジネス化を懸念する声も聞かれる。食を通し、多文化共生を考えた。(担当・押川恵理子)

 「豚肉を使っていますか」とレストランで確認し、「いいえ」と言われて安心して注文したら、出てきた皿の上にはベーコンやハム…。

 金沢市に暮らすインドネシア出身のヒクマさん(38)は振り返る。母国で出会った日本人男性と結婚し、来日。日本語はインドネシアの大学で学んで堪能だが、外食や食品の購入に戸惑った。

 ムスリムは豚肉だけでなく、ラードやコラーゲンといった豚の脂や皮を原料とする加工品なども口にしてはならない。みりんなどアルコールを含む調味料もだめ。「外食する時は気を使う」と話す。食材は東京の専門店でまとめて購入することが多い。

世界人口の4分の1

 ムスリムの人口は世界の4分の1を占める約16億人。国民の9割がムスリムのインドネシアではハラルの中華やイタリア料理の店も多いという。2020年東京五輪を控える日本でも中東や東南アジアからの観光客の増加を見込み、ハラル食品を提供する店や大学の食堂が増えてきた。

時計回りで上から、ナン、チキンカレー、タンドリー料理の盛り合わせ、野菜や豆など3種類のカレーとサラダ、自家製ヨーグルト、スープなどが味わえるディナーセット

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 金沢市にも昨年11月、インド・パキスタン料理の店「アザーン」がオープン。両国にまたがるパンジャーブ地方の料理を出している。開店に向けてヒクマさんも助言した。

 インドや日本の店で腕を磨いたシェフがインド製の土釜で焼くタンドリー料理は自慢の一品。本場の香辛料や自家製ヨーグルトに漬け込んだチキンやマトンは柔らかく、味わい深い。酸味と辛味を利かせた特製ソースをつけると、さらに食欲が刺激される。

 オーナーは金沢市で中古車販売業を営むパキスタン人のムハマド・アシュファさん(44)と、妻の進藤昌代さん(42)。石川県内で外食に苦労する仲間が多く、数年前から開業を目指してきた。

認証へ高いハードル

 ハラルと認められるには、食肉処理をアラーの名を唱えて行ったり、仕入れから提供までハラルでない食品と完全に分けたりしなければならないなど、さまざまな決まりがある。

 東南アジアなどの市場をにらみ「ハラルの認証を取りたいという意向を示す会員企業は数社ある」と同県食品協会の森山直喜専務理事は話す。ただ製造業は設備や費用面でハードルが高く、商品開発に二の足を踏む企業が多い。

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 インドネシアやマレーシア、シンガポールなどの国はハラルの認証を制度化しているが、日本は複数の任意団体がそれぞれ実施。認証機関の“乱立”ともいえる日本の状況に「ハラルはビジネスの話ではない。なぜハラルの食品を選ぶのかというイスラム教の基本があまり伝えられていない」と、ヒクマさんは残念がる。

 ハラルに対して「ハラム」は避けるべき食べ物や行動を指す。その区別や基準は国によって異なり、判断は難しい。イスラム教の聖典クルアーン(コーラン)によると、ハラルかハラムかを知るのはアラーのみ。ムスリムはその教えに従っている。「制限ではなく、自分で信仰して選んでいる」とヒクマさん。自分の行動は自ら責任を取るという考え方があるため、個人差も大きい。

相手理解して平和に

 「イスラム教は誤解されている部分が多い。理解不足によってトラブルが起きるかもしれない。お店から情報を発信していきたい」と進藤さん。食事を通した交流の場を目指し、店ではイスラム教やパキスタンなどに関する本を紹介し、現地の水たばこなども体験できる。今後は各国の料理や語学の教室などイベントも計画中。「無関心が最も良くない。友だちとなる機会を提供できたらうれしい。人を理解することが平和にもつながる」と信じる。

岸田由美・金沢大准教授「異文化に触れるチャンス」

増える留学生 学食でも提供

 ムスリムの留学生も増えており「世界に出なくても異なる文化を知れるチャンス」と、金沢大の岸田由美准教授(比較国際教育学)は話す。

 2007、08年に国内143大学を対象にムスリム学生の宗教的ニーズや大学側の対応を調べた。

 礼拝は1日5回、金曜正午すぎは集団で行う。日本の国立大は特定の宗教に便宜を図ることが法律的に難しいためムスリムの礼拝施設はなく、留学生は場所や時間の確保に苦労している。

 約100人のムスリム学生がいる金沢大では空き教室の利用を認め、礼拝前に体を洗い清められるよう理系棟のトイレ1カ所を改修。文系の棟には礼拝用のスペースもあるが、1、2人でいっぱいとなる狭さだ。

 食事の際は帰宅したり、弁当を持参したりする学生が多かったため、金沢大生協は10年秋から、ハラルの魚や鶏肉の料理、野菜カレーなどを自然科学研究棟の食堂で提供。現在は3品目ほどが日替わりで味わえ、学外の人も利用できる。

 世界的に宗教面の対応が進むのはオーストラリアの大学。キリスト教徒の多い国だが、ムスリムの人口も日本に比べて多く、イスラム教に限らず他宗教の学生も使える礼拝施設を整備している。宗教に関する相談窓口もあるという。

 北陸新幹線開業が迫り、外国人観光客の増加も見込まれる中、岸田准教授は「自分たちと違う宗教や文化を理解することが大切。知らないと、見当違いのおもてなしをしてしまう。ハラルは個人差があり、紋切り型の対応ではなく、『何が食べられますか』と聞くなどコミュニケーションを取ってほしい」と助言する。

 ムスリム 国別の人口ではインドネシアが2億1900万人と最も多く、イスラム教が国教のパキスタンが1億7500万人、インドが1億6000万人と続く。地域別にみると、アジアが6割を超え、中東は約2割。日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人旅行者は推計1341万3600人と過去最高を記録した。観光ビザの緩和などに伴い、東南アジアからも増加。インドネシアは前年比16%増の15万8700人、マレーシアは同41%増の24万9500人、シンガポールは同20%増の22万7900人に上った。

 アザーン ランチは11:30〜15:00、ディナーは17:30〜22:00、いずれもラストオーダーは30分前。カレーは希望に応じて本場の辛さや味に調整できる。金沢市間明町1の237(電)076(220)6838

 

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