トップ > 北陸中日新聞から > popress > 特集 > 記事

ここから本文

popresspopress【特集】
 

金沢夜景 優しく さりげなく

街路灯が並び、しま模様が浮かび上がる金沢21世紀美術館南側の通路

写真

 街の木々に電飾がきらめく冬。まばゆい光景に目が行きがちだけれど、何げない街路灯にも、人の心をつかむ光がある。金沢を愛する映像クリエーター、モリ川ヒロトーさん(51)と街を歩き、さりげない明かりが優しく、美しい金沢の夜に浸った。

 午後6時ごろ。光のしま模様が細い道に浮かんでいた。模様を描きだしているのは、腰の高さで数メートルおきに並ぶ街路灯だ。ここは金沢21世紀美術館の南側の通路。「ね。いいでしょう」モリ川さんが柔らかくほほ笑んだ。

写真

 耳を澄ませば、近くを流れる用水のせせらぎ。午後10時まで入場できる「タレルの部屋」(作品名ブルー・プラネット・スカイ)で、吹き抜けの天井から夕焼けや月を見てからフラリと歩くのがお薦めという。

派手さはないが

 派手さはない。まぶしくもない。けれど、歩くのが怖いほど暗くはない。モリ川さんは、そのあんばいに金沢の優しさを見る。

 「金沢は、周りの木々に光が当たりすぎないようにしている照明が多いよ」

 金沢城の石垣のライトアップも木々にはほとんど届いていない。その南側に建つしいのき迎賓館の緑地も、散策路には膝丈ほどの街路灯が点在。天板で目に届く光は抑えられ、間接照明に似た穏やかな光の円が、道しるべのようにポツリポツリと広がっている。

光の円を作る街路灯が点在するしいのき緑地

写真

 モリ川さんが迎賓館を背に立ち止まり金沢城との間にある芝生を指さした。「この盛り土が車のヘッドライトを隠すんです」

 広場は、なだらかに傾斜している。まもなく向こうから背の高い車が走ってきた。傾斜の所に差しかかると、ヘッドライトがスッと見えなくなった。金沢城の夜景から煩雑な光を取り除き、非日常感の漂う“絵画”に仕上げていた。

喧噪隠す盛り土

 この傾斜は、偶然ではない。石川県が2007年3月にまとめた緑地などの整備の基本構想には「車の喧噪(けんそう)を感じさせない眺望を確保する」として、芝生広場を緩やかに盛り上げる考えが示されている。

 「金沢は道の形一つをとっても、昔の人が心地よさを意識して整備したことがわかる」

照明が道と鉄骨を照らし出す犀川大橋

写真

 そうした先人の意識が伝わってくるのが、国の登録有形文化財「犀川大橋」だという。繁華街の片町と野町を結ぶ橋の上流側の歩道を進み、左岸に近いベンチに座ると、わずかに曲がっている犀川を上流の方まで見通せた。水面に映るビルの光も蒔絵(まきえ)の風情を感じさせた。

 目を上げると、箱形の照明が橋の鉄骨を照らし、印象的な陰影をつくり出していた。行き交う人々は、飲食店のネオンがひしめく金沢市片町に吸い込まれた。

標識の照明で照らし出される横断歩道

写真

横断歩道照らす

 モリ川さんがお気に入りの照明がある。金沢城の黒門口そばなどに備え付けられた横断歩道専用の明かりだ。歩道上の標識の下部につけられた照明が真下に、だいだい色の光を落とし、道路を横断する人を浮かび上がらせる。運転者の見落としを防ぐ工夫に「この温かい色がいいんだよ」と語った。

写真

 よい景色の見つけ方は、「無意識で道を選ぶこと」。街中に用水が入り組み、繁華街の近くに緑も広がる金沢。水の流れから漂ってくる草木のにおいを感じながら用水沿いを歩き、坂道では周りの音や空気感の変化も楽しんでいるという。

 「夜は五感がさえる。金沢の街を曲水も木もある日本庭園だと思って、面で楽しんでみては」

案内人 モリ川ヒロトーさん

 モリ川ヒロトー 1963年、金沢市生まれ。多摩美術大(東京)を89年に卒業後、映像ディレクターや作曲家として国内外で活躍。2009年から金沢市観光協会のホームページで「金澤コンシェルジュ通信」を始めた。10年末からは金沢ナイトミュージアムなどで、金沢市旧市街の日常にある趣や美をつづった映像作品「金澤現在夢幻」の発表を続けている。いしかわ観光特使。

国際都市照明賞で日本初3位

市、電球色増やす方針

雪に覆われ、舞台のような風情を漂わせる梅ノ橋(C)モリ川ヒロトー

写真

 金沢市の夜景は2011年、優れた都市照明をたたえる国際的な賞「シティ・ピープル・ライト賞」で日本初の3位に輝いた。受賞の6年前に市が条例を制定し、魅力的な夜の景観づくりに努めたことが報われた。金沢らしい夜景を追求する機運はさらに高まり、金沢城周辺などの歴史的な街並みが残る地域で改良が進んでいる。

 市は今年3月にまとめた整備計画で、電球色で暖かみがあり、まぶしくない街路照明を増やす方針を掲げた。広坂通りの街灯は遮光板で余分な光を隠しながらも、歩行者の足元には明かりが広がるよう工夫。店舗から漏れる光も通りを明るくする照明として考え、生かした。長町武家屋敷跡では11月、街路灯を暖色に変える実験をし、地元に好評だった。

妖美な姿を浅野川に映す主計町の茶屋街(C)モリ川ヒロトー

写真

 市景観政策課の中村均課長は「住民に快適な明かりは、外から来た人にも魅力になる。夜に歩きたくなる景観はにぎわいにつながる」と観光効果も期待する。

 担当・福岡範行

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索