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The Making 舞台裏魅せます ポプレス編集部×学生 コラボ新聞

もっと先へ 大手企業もニッチも関係ない

これまでのポプレス紙面を見ながら製作の方向性を考える学生たち=金沢市の中日新聞北陸本社で

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 ポプレス4周年を記念した前回の14日付紙面は、金沢学院大(金沢市)の学生団体「デザインチームアルス」と一緒に作った。学生が選んだ取材先は日本酒の王冠メーカー。失礼ながら、地味な存在。ポプレス編集部には思いも寄らないテーマだったが、学生にはそれを選ぶ理由があった。紙面製作の裏側を明かします。

7〜9月 HOP

 アルスとの連携は7月に始まった。ポプレス編集部の福岡範行記者(31)が取材先で出会ったアルスに地元企業の広告制作の実績があると知り、「一緒に紙面を作ろう」と誘った。

 記事は記者が書くが、取材の企画やレイアウトは学生が主導。編集部は後方支援に徹する。学生たちは9月中旬、中日新聞北陸本社で、新聞作りの考え方を学んだ。

丸田社長(中央)から王冠の製造過程を聞く学生たち=石川県羽咋市で

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10月 STEP

 学生がテーマに据えたのは「身近な商品を作っているのに、注目されないニッチ企業」。北陸で対象を探し、日本酒の王冠を製造する三伸樹脂工業(石川県羽咋市)を発掘した。10月初めに取材し、1カ月かけ紙面のレイアウトを練った。

水しぶきを撮影するアルスのメンバー=金沢市の金沢学院大で

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10月中旬〜 JUMP

 紙面デザインは3案が出され、王冠のきれいさが際立つ1案に決定。当初は酒瓶から水が噴き出すイラストを考えていたが、イラストより実写の方が主役の王冠を際だたせるのではと編集部と話し合い、水しぶきの実写に挑戦。高速シャッターを駆使し、印象的な紙面に仕上げた。

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リポート/Design Team ARS

まとめ 佐々木苗美

気になる就活でネタ

 ポスターや名刺、フライヤーなどの広告を主に作成してきたため、今回の新聞紙面作成という依頼はなかなかにハードルは高かった。そんな中でも7人ものメンバーが手を挙げて挑戦したのは、好奇心に尽きると思います。

 ネタを決めるのに1カ月は費やしました。

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 初めに挙がったのは、廃虚や宇宙、パラレルワールドなどといったバラバラのテーマ。「日常の裏側」をのぞけたら読み手も楽しめるかなと思い、「ニッチ企業」にたどり着いたのは、自分たちでもなかなか面白いと思っていました。

 大手企業に勤めることが頭の半分を占める就活生。おそらく自分もその1人になるだろうから(※1)、日が当たりにくい企業を知りたいとも思いました。

 では、どこを取り上げるか。全員が悩みました。読み手に身近な製品の方が興味は持たれそうだけど、それであまり知られていない北陸にある企業となると、なかなかヒットしないものでした。

※1 ネタ決めのとき「普段は何が一番興味あるの?」と聞いたら、「就活」と即答。予想以上にまじめな答えに、かなりびっくり。

社長に見た 少年の心

 ようやく三伸樹脂工業に決まり、訪れた取材では、小さな工場の中にたくさんの機械があり、「王冠一つにこれだけの工程があるのか」と驚きました。社長の丸田一幹さんは自分の仕事に誇りを持ち、好きなことがたまたま「ニッチ企業」に当てはまった(※2)、という感じでした。

 王冠作りをやめる企業もある中、生き抜くために、デザインにこだわったり、プラスチック成型に取り組んだりと、挑戦を続けていました。先に進もうという努力は、大手もニッチ企業も関係ない。何にでも挑戦する社長の姿勢にものづくりが好きな少年のような爛々(らんらん)とした熱い思いが見えました。

※2 丸田社長の舌は、驚くほど滑らか。学生の来訪がうれしいのか、質問が良いからか、記者だけのときは聞けなかったエピソードが出るわ、出るわ。笑顔の陰で、こっそりへこんだ。

アルスらしく遊ぼう

 レイアウトに関しては「新聞記事で広告を作りたい!」との思いがありました。強いビジュアルやキャッチコピーで目を引きたいけど、そのまま広告っぽいデザインにしては新聞記事と気づかれず、読み手はスルーしてしまうこともある(※3)と聞きました。

 こんなに文章が多いのは初めてで、どう置いたらいいのか。「ニッチはかっこいい」というメッセージをさらりと伝えるためにおしゃれな雰囲気にしようと決めたけど、最後の最後で「ニッチはおしゃれなのか」って悩んだり。「まじめより、面白み」とアルスらしい紙面を目指したのに、結局、「新聞はこうあるべきだ」というイメージから抜けられず…。そもそも、「アルスらしさって何」って話も出ました。

 何とか面白くしたくて、こだわったのが紙面の中央に置いた水しぶきの写真。飛び跳ねる感じの出し方をみんなで考えて、3回目の撮影で納得のいく物が撮れたと思います。会議が重々しかった分、いい気分転換にもなりました。

アルスが作った14日付紙面

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 出来栄えは50点。どっちかといえば悔しさが大きいです。正直、遊び足りないし、4カ月も時間をかけたのに、最後の話し合いは足りず、詰め切れなかった。

 でも、すごく楽しくて、たくさん学べました。編集部とやりとりして、ポプレスのデザインにいろんな意図があると知って。こだわれるポイントは、もっと増やせるんだって感じました。 (マーカーコメントはポプレス編集部)

※3 この悩みは、ポプレスもずっと考えてきたこと。第一は、記事の読みやすさ。その上で人の目を引く広告のようなデザイン性をどう生かすか。試行錯誤を続けている。

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「面白い」って?

ポプレス編集部から

 板挟み。ああ、板挟み。

 外の意見を取り入れれば斬新な紙面になるだろうと、気楽に始めた学生との連携企画。学生の発想を面白がって会社に持ち帰れば、デスクは「それは目新しいの?」「紙面で伝える意味は、どう考えているの?」と一刀両断。学生のやる気を生かし、かつ、紙面の質は厳しく求める。調整役を務めながら、先の見えない不安にも襲われた。

 取材先探しが難航したときも、紙面作りでも、突破口を開いたのは学生たちの熱意。「新しいことをしたいんです」とひた向きに語る姿は、ポプレス編集部にも響き、学生に応えようと、記事の書き方も工夫した。

 面白いって、何だろう。記者人生で一番、そう考えた4カ月だった。道は半ば。でも、ヒントは得た。「挑戦を楽しむ」。学生たちが見せてくれた姿です。 (福岡範行)

アルスの歩み 

おにぎりにデザイン制作の思いを詰めたアルスの新入生勧誘ポスター

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 デザインチームアルスは2011年5月、金沢学院大メディアデザイン学科の2年生3人が実践的な学習の機会を求めて、大学非公認サークルとして発足。商店街のPRチラシやCM動画の制作を受注して実績を積み、今年4月、学生の地域連携を打ち出す大学から公認を得た。

 現在のメンバーは1〜3年生11人。年間の受注は30件ほど。自主制作も合わせ40件の作品を生み出している。遠くからはおにぎりに見えるように文章を並べてデザインに懸ける思いを表現したポスターなど、工夫を凝らした力作ぞろいだ。

 活動の原動力はまず「楽しさ」。そして、卒業後を見据えた向上心だという。代表の松本大翔(ひろか)さん(20)は「自分たちの技術を社会に出たときの武器にできるように、実践的に学びたい」。自分たちで将来の道を切り開く覚悟を胸に秘めている。

 

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