トップ > 北陸中日新聞から > popress > 特集 > 記事

ここから本文

popresspopress【特集】
 

発想を形に 1・2・3D! デジタルものづくり「Fab」広がり

立体データをパソコンに取り込む3Dスキャナーに興味津々の子どもたち=いずれも金沢市の金沢湯涌創作の森で

写真

 3Dプリンターといったデジタル工作機械が身近になり、熟練の職人技が手軽に実現できるようになった。アイデアや技術をインターネットで共有すれば、地球の裏側で開発された製品だって、「どこでもドア」よろしく、こちらのプリンターから飛び出す。新たなものづくり「Fab(ファブ)」が国内外で広まっている。金沢市で開かれたイベントをのぞいた。(担当・押川恵理子)

気軽にプリント、スキャン

体験催し人気

金沢の若者 積極開催

透明なシートに投影された女の子のキャラクター

写真

 室内の真ん中に浮かび、体をくねらせて踊る萌(も)え系のキャラ。「すごいっすね。自分のフィギュアもほしいな」

 見入っていた富山市の会社員男性(35)はつぶやいた。透明なビニールシートに映像を投影する仕組みで、仮想アイドル「初音ミク」のライブなどに活用されている。

 最近は「アニメの聖地」としても知られる湯涌温泉に近い金沢湯涌創作の森(金沢市北袋町)で4〜19日に「3Dデジタル工房」が開かれた。

クリパリンク代表の竹田太志さん

写真

 企画したのは、金沢市の企業「C8LINK(クリパリンク)」代表の竹田太志さん(29)。デザインやゲーム製作の会社で働いてきたが、「石川県を世界一のものづくりの地域にしたい」と今春起業した。

 高温で溶かされた極細の樹脂を固め、パソコン上のデータを立体物に仕上げていく3Dプリンターなどを実演。来場者に魅力の一端を伝えた。立体物を描ける3Dペンを体験していた中学1年の男子(12)は「楽しかったけど、なかなか自分の思うようにいかなかった」と苦笑い。

 モデルの体をぐるり360度撮影し、立体データをパソコンに取り込む3Dスキャナー。子どもたちはパソコン画面に映し出される自分の姿に少し不思議そう。そのデータを3Dプリンターで出力すれば、自分のフィギュアが作れる。

立体物を造形する3Dプリンターの実演も行われた

写真

 会場ではスキャンの体験のみだったが、「上半身サイズなら2万円、全身は3万円から作れます。すべて手作業のフィギュアだと値段は一桁違う」。そう話す金沢市の会社員、磯田智彦さん(35)は「BUSH BEARD(ブッシュ・ビアード)」名義で活動。3Dスキャナーとプリンターを使い、10〜30センチ大のフィギュア製作を今年2月から始めた。

 写真店と提携し、成人式や結婚式など記念日向けのサービスも手掛ける。妊婦姿を記録する女性もいれば、コスプレしてアニメのキャラになりきる人も。「子どもの成長に合わせて作るのもお薦め」と話す。

 パソコン上に描いたイラストや文字を素材に刻印できるレーザーカッターもあり、ポプレスのキャラ「ばく」も作ってみた。

3Dプリンターでつくられた立体物

写真

 ファブには「アイデアも技術も経験も必要」と竹田さん。伝統工芸の職人やアーティスト、デジタル技術が得意な学生、いろんな経験を持つ高齢者らさまざまな市民が気軽に集え、産学官とも連携する拠点をつくる構想を描いている。

 クリパリンクは石川県でほぼ毎週末、出張イベントを展開。11月8、9日は県産業展示館、9日は金沢駅もてなしドーム地下広場であるイベントに出展する。(電)050(5889)1999

 Fab(ファブ) 英語のFabrication(ものづくり)とFabulous(わくわくする、素晴らしい)を組み合わせた造語。

多様な人参加が肝

ファブラボ

つながる世界の技術者

写真

 世界60カ国、300カ所以上に広がる「Fab Lab」(ファブラボ)。その強みは何か。神奈川県鎌倉市に自ら開設し、世界的ネットワークにも加わる慶応義塾大環境情報学部の田中浩也准教授(39)に聞いた。

−ネットワークに加わった理由を教えてください。

 単に3Dプリンターやレーザーカッターを設置した地域の市民工房をつくるだけでは、最初は楽しくても、すぐに行き詰まります。

 地域にサッカー場ができても、地域のサッカー好きが集まるだけでは「試合」が成り立たないのと同じです。サッカーには、各地のチームがホームとアウェーを行き来し、試合を通じて切磋琢磨(せっさたくま)し、親睦を深めながら高めう文化があります。

 ファブラボは世界的なネットワーク。国境を越えてクリエーターが行き来し、各地のラボを結びつけ、互いに高め合う仕組みが良好に機能しています。多様性への気づきも生まれます。

−伝統工芸や手仕事との関係性はどうですか。

 伝統工芸と先端技術のハイブリッドが実現されれば面白い。しかし中途半端ではだめ。かなり大胆に、伝統を創造的に破壊する必要があると思います。

 手仕事は絶対に必要です。デジタル技術の核となる電子工作は手作業。プリント基板に抵抗や部品、ICチップなどを接合する「はんだづけ」は手先の器用さが問われる重要な作業です。

−ラボで市民の意識や生活はどう変わりますか。

 最初は3Dプリンターを見てみたいとか、機械を目的に通い始めますが、すぐに気付きます。本当の価値は機械を使うことではなく、自分とは違う背景やスキル、能力を持つ人々との出会いやコミュニケーションだと。日本人は同質性を好み、異質な人との出会いを避ける傾向にあるといわれますが、ファブラボは電子工作が好きなマニア、アイドルや3Dフィギュアが好きなオタク、ミシンや手芸が好きな主婦、アナログなものづくりやラジオが好きな高齢者、プログラミングが好きなソフトウエア開発者らが共存します。

 異質な人同士がチームを組んでコラボレーションが始まると、「自分たちのまちの課題を解決したい」という目標設定がうまく機能します。「個」を超えて、一緒に何かやってみようというオープンな精神をどこまで持てるかが、最大の鍵になると思います。

 Fab Lab 2000年ごろ、米マサチューセッツ工科大(MIT)から生まれた実験的な市民工房。各国のラボはネットワークをつくり、日本では田中浩也慶応義塾大准教授が2011年に開設したFabLab Kamakuraはじめ関東や九州を中心に11カ所ある。ファブラボの名称を利用できるのは、3Dプリンターやレーザーカッター、木材を切削加工して家具などを作るCNCルーター、木材や樹脂、金属などを切削するミリングマシンなど共通の工作機械を備え、市民に週1回以上公開し、国際的なネットワークに加わるといった条件を満たした工房で、北陸にはまだない。世界的ネットワークに加わらず、ファブを気軽に楽しむカフェなども各地にできている。

 

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索